階段を上るたびに胸が締め付けられる、朝方にふと胸が痛くなる——そんな経験がある40〜50代男性は少なくないはずです。「疲れかな」「加齢のせい」と見過ごしてしまいがちですが、それが狭心症のサインである可能性があります。

狭心症は心臓に血液を送る「冠動脈」が一時的に狭くなることで起きる病気です。心筋梗塞と同じ血管の病気ですが、根本的な違いがあります。その違いを知っておくことが、命に関わる場面で正しい判断をする助けになります。

この記事では、狭心症の典型的な症状から種類別の特徴、セルフチェックリスト、日常生活の注意点まで、保健師の立場からわかりやすく解説します。

【判定表】何分続くか、どんなときに起きるか

胸の症状を絞り込むとき、医師が最初に確認するのはこの2つです。どちらも自分で答えられます。

いつ起きるか どのくらい続くか 考えられるもの
歩く・階段・坂・重い物を持ったとき 休むと数分(5〜10分)で消える 労作性狭心症詳細
安静時・夜間から明け方 数分〜15分ほどで治まる 冠攣縮性狭心症。日本人に多いタイプです(詳細
以前より軽い動作で起きるようになった/回数が増えた だんだん長くなっている 不安定狭心症——急ぎます詳細
安静にしても消えない 20分以上続く 心筋梗塞の可能性。救急(119)
体をひねる・押すと痛みが再現する 姿勢で変わる 胸の壁(筋肉・肋骨)のことがあります
ストレスや緊張の場面で、深呼吸すると楽になる 数十分〜数時間 自律神経の関与を考えます
この2つがそろったら、その場で119番してください20分以上続く胸の痛み・圧迫感で、安静にしても消えない
冷や汗/吐き気/あご・首・左肩・左腕・背中への広がり/息苦しさ

「我慢できる程度だから」は判断材料になりません。特に糖尿病がある方は痛みを感じにくいことがあり、症状が軽く出ます(糖尿病の神経障害)。

胸の症状全般の切り分けは胸が痛いときの見方に、心筋梗塞の前兆については心筋梗塞の前兆にまとめてあります。

「軽い症状」で見逃されるパターン

狭心症というと「胸を強く締め付けられる」というイメージがありますが、実際には、はっきりした痛みとして出ないことのほうが多くあります。ここが見逃しの最大の原因です。

痛みではない表現で出ます

  • 胸が重い、詰まる、押される——「痛い」ではないので相談しにくい
  • 胸が焼ける——胸やけと間違えられます(逆流性食道炎と紛らわしい)
  • なんとなく気持ち悪い、みぞおちのあたりが不快みぞおちが痛いとき
  • 息が上がる、階段で息切れする——胸の症状がまったくないことも
  • あご・歯・左肩・左腕だけが痛む——胸は何ともない
  • 疲れやすい、なんとなくだるい
見分けるのは「症状の強さ」ではなく「出るタイミング」です 上のどれであっても、「動いたときに出て、休むと消える」という再現性があれば、狭心症を考えます。
逆に、強い痛みでも姿勢や呼吸で変わるなら、心臓以外の可能性が高くなります。強さで判断しないでください。

40〜50代で特に見逃されやすい理由

「歳のせい」「運動不足」「疲れ」で説明がついてしまうからです。階段で息が切れるのを、体力の低下だと考える。実際にはそれが最初のサインだった、ということが起こります。

判断材料は「以前と比べて変わったか」です。

  • 去年は上れた階段が、今年は途中で止まる
  • 同僚と歩いていて遅れるようになった
  • 駅までの道で、以前はなかった休憩が入る

この変化が数か月のうちに起きているなら、体力低下では説明がつきません。

「狭心症かどうか確かめる」方法はあるか

検索で多い質問なので、正直に答えます。自宅で確定させる方法はありません。ただし、受診時に役立つ記録は取れます。

やってはいけない確かめ方 「わざと運動して、症状が出るか試す」ことは絶対にしないでください。狭心症が疑われる状態で負荷をかけるのは危険です。
運動による確認(負荷心電図)は、医療機関の監視下で行うから安全なのです。

代わりに、記録を取ってください

症状が出たときに、次の5つだけメモしてください。これは医師が診断に使う情報そのものです。

  • 何をしていたとき(歩行中・階段・安静時・睡眠中・食後)
  • 何分続いたか(1分・5分・20分以上)
  • どうしたら治まったか(休んだら/自然に/治まらなかった)
  • どこが、どんなふうに(締め付け・重い・焼ける/広がりの有無)
  • 伴った症状(冷や汗・息切れ・吐き気)

1〜2回分の記録があるだけで、診察の中身が変わります。特に「休んだら数分で治まった」という情報は、労作性狭心症を強く示唆するため、その場で検査の順番が決まることがあります。

40〜50代男性が、自分のリスクを見積もる

症状がはっきりしないとき、「自分はどのくらい心配すべき立場なのか」が判断の助けになります。健診結果を出してきてください。

項目 該当したら
喫煙している 単独で最大級のリスク。冠攣縮性狭心症の誘因にもなります(禁煙の方法
血圧が高い(130/80以上を指摘) 血管への負担が続いています(高血圧
LDLコレステロールが高い 動脈硬化の直接の材料です(LDLを下げる方法
血糖値・HbA1cを指摘された 痛みを感じにくくなるぶん、発見が遅れます糖尿病の初期症状
血縁者に心筋梗塞・狭心症の方がいる 特に若くして発症した家族歴は重視されます
腹囲が大きい・脂肪肝を指摘された 背景の代謝異常を共有します
2つ以上当てはまる方へ 症状がはっきりしなくても、「気のせいかもしれない胸の違和感」を放置しないでください。リスク要因が重なっている方では、同じ症状でも意味が変わります。
逆に、リスク要因がまったくなく、症状が姿勢や押すことで変わるなら、心臓以外の可能性が高くなります。

受診すると、何をされるのか

「大がかりな検査になるのでは」と身構える必要はありません。初回は、ほとんどが問診と簡単な検査です。

検査 何が分かるか 負担
問診 実はここが最も重要です。「いつ・何分・何をしていたか」で診断の方向がほぼ決まります
安静時の心電図 数分で終わります。ただし発作が起きていないときは正常なことが多い 痛みなし
血液検査 心筋のダメージ、脂質、血糖、腎機能 採血のみ
心エコー 心臓の動きと弁の状態 痛みなし・15分程度
運動負荷心電図 労作性狭心症を捉えるための検査。歩行や自転車で負荷をかけながら測ります 医師の監視下で行います
ホルター心電図 24時間つけて記録。夜間・早朝の発作(冠攣縮性)を捉えるのに向きます 装着したまま帰宅
冠動脈CT 血管の狭さを画像で確認。造影剤を使います 数十分
心臓カテーテル検査 確定診断。そのまま治療に移れることもあります 入院を伴うことが多い
「心電図が正常だったから大丈夫」ではありません 安静時の心電図は、発作が起きていないときに撮れば正常に見えます。狭心症は発作時にだけ変化が出るものだからです。
症状の記録がある場合は、心電図が正常でも次の検査に進むのが普通です。「異常なしと言われたが、やはり症状が出る」という方は、そのまま伝えてください。症状の経過は、検査結果と同じくらい重い情報です。

何科に行くか

循環器内科です。近くになければ内科でも構いません。症状が出ている最中であれば、迷わず救急を受診してください——発作中の心電図が撮れると、診断が一気に進みます。

不安定狭心症——ここだけは急いでください

狭心症のなかで、心筋梗塞の直前段階にあたるものです。名前は「狭心症」ですが、扱いはまったく違います。

次のいずれかがあれば、その日のうちに受診してください今まで平気だった軽い動作で発作が出るようになった(階段の途中→歩いただけ、へ)
発作の回数が明らかに増えた
1回の発作が長くなってきた
安静時にも出るようになった
ニトログリセリンが効きにくくなった(処方されている方)
最近1か月以内に初めて発作が起きた

夜間や休日でも待たないでください。症状が強くなっている段階の変化が、いちばん危険なサインです。

要点は「変化」です。ずっと同じ調子で続いている症状より、ここ数日〜数週間で悪くなっているほうが急ぎます。痛みの強さではありません。

狭心症とはどんな病気か

心臓に血液を送る「冠動脈」が狭くなる

心臓は全身に血液を送り続けるポンプですが、心臓自身にも栄養と酸素を届ける血管が必要です。その血管が「冠動脈(かんどうみゃく)」です。

狭心症は、この冠動脈が何らかの原因で一時的に狭くなる・けいれんすることで、心臓の筋肉(心筋)に届く血液が不足する状態です。血流が減ると心筋が酸素不足になり、「胸が締め付けられる」「押さえつけられる」といった発作的な痛みや不快感が生じます。

重要なのは「一時的」という点です。血流が戻れば症状は治まり、心筋そのものが死んでしまうことは起きません。この点が心筋梗塞との大きな違いです。

心筋梗塞との決定的な違い

狭心症と心筋梗塞はよく混同されますが、医学的には明確に区別されます。

狭心症と心筋梗塞の違い
  • 狭心症:冠動脈が一時的に狭くなる→血流低下→症状→血流回復→症状消失。心筋の壊死なし
  • 心筋梗塞:冠動脈が完全に詰まる→血流ゼロ→心筋が壊死。症状が長く続き、安静にしても治まらない

狭心症の発作は通常5〜15分以内に治まります。休めば収まる、ニトログリセリン(舌下錠)で数分以内に楽になる——これが狭心症の特徴です。一方、心筋梗塞は安静にしても治まらず、30分以上続く強烈な胸の痛みが典型的です。

また、不安定狭心症(後述)は狭心症と心筋梗塞の中間に位置し、心筋梗塞に移行するリスクが高い緊急状態です。

日本人の循環器科医が医療パネルの前で心臓の解剖図を指差しながら冠動脈の仕組みを説明しているシーン

狭心症の主な症状

典型的な発作の感覚

狭心症の発作は「痛み」というよりも、胸部の不快な「感覚」として現れることが多いです。患者さんがよく使う表現をまとめると次のようになります。

狭心症の発作でよく使われる表現
  • 胸が締め付けられる、絞られるような感じ
  • 重いものを乗せられているような圧迫感
  • 胸の奥が焼けるような灼熱感
  • 胸全体がきつくなる感じ
  • 「なんとなく胸が変」という漠然とした不快感

「刺すような鋭い痛み」は、実は狭心症よりも筋肉痛や逆流性食道炎の可能性が高いといわれています。狭心症の痛みは「ジワジワ広がる重い感じ」が特徴的です。

とくに食後や横になったときに強くなる、焼けるような胸の不快感であれば、心臓より先に胃酸の逆流を考えたほうが自然です。見分け方は逆流性食道炎の記事で詳しく解説しています。

発作が起きやすい場所とタイミング

発作が起きやすい状況には一定のパターンがあります。

  • 階段や坂道を上るとき
  • 重い荷物を持って歩くとき
  • 寒い朝に外に出たとき
  • 食後に急いで動いたとき
  • トイレで強くいきんだとき
  • 強いストレスや興奮を感じたとき

これらは「心臓に負担がかかる状況」です。心臓が酸素をより多く必要とするタイミングに、狭くなった冠動脈では供給が追いつかなくなるため発作が起きます。

胸以外に出る症状(放散痛)

狭心症の特徴のひとつが「放散痛(ほうさんつう)」です。胸の痛みや圧迫感が、胸以外の場所にも広がることがあります。

  • 左肩・左腕:内側にかけてだるく重い感じ
  • 顎・歯:歯痛のように痛む(歯科を受診して異常なしと言われることも)
  • 背中・肩甲骨の間:重い感じ
  • みぞおち:胃痛のように感じることがある

「左肩が痛い」「顎が痛い」だけの症状でも、動いたときに起きる・数分で治まる・繰り返すようであれば、心臓由来の可能性を疑う必要があります。

狭心症の3つの種類と症状の違い

狭心症は大きく3種類に分けられます。種類によって「いつ発作が起きるか」が異なります。自分の症状がどのタイプに当てはまるかを把握しておくことが、適切な対処の第一歩です。

労作性狭心症|動いたときに発作が起きる

労作性狭心症は最も一般的なタイプです。「労作」とは体を動かすことを指し、運動・歩行・階段の上り下りなど、身体的な活動がきっかけで発作が起きます。

主な原因は動脈硬化です。コレステロールや脂質が冠動脈の内壁に蓄積してプラーク(塊)を形成し、血管が慢性的に狭くなります。安静時には問題ないものの、運動によって心臓の酸素需要が増えると供給が追いつかなくなります。

特徴:休むと5〜10分で治まる。いつも同じような活動量で発作が起きる「再現性」がある。

冠攣縮性狭心症|安静時・早朝に締め付けられる

冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)は、冠動脈が突然けいれんして収縮し、一時的に血流が途絶えるタイプです。「異型狭心症」とも呼ばれます。

最大の特徴は「安静時・早朝に発作が起きる」ことです。睡眠中から明け方にかけて、特に休んでいるときに突然胸が締め付けられます。日本人に比較的多いタイプとされています。

原因:動脈硬化がなくても発作が起きることがある。喫煙・過度の飲酒・ストレス・過度な冷えが誘因になりやすい。

特徴:運動とは無関係に起きる。発作中の心電図でST上昇(通常の労作性と逆のパターン)が見られる。ニトログリセリンやカルシウム拮抗薬が有効。

不安定狭心症|発作が頻繁・長引く→緊急のサイン

不安定狭心症は、安静にしても発作が起きる、以前より少ない活動量で発作が起きる、発作の頻度が増えた・長くなった——このような状態を指します。

不安定狭心症は緊急のサインです

プラーク(血管内の脂質の塊)が破裂し、血栓が形成されかけている状態です。放置すると心筋梗塞に移行するリスクが非常に高く、「心筋梗塞の予告」と考えてください。このような症状の変化があれば、すぐに救急受診が必要です。

屋外の階段を上る途中で立ち止まり、胸に手を当てて軽い苦しさを感じている40代日本人男性

狭心症の前兆・セルフチェックリスト

狭心症は「ある日突然」ではなく、前兆サインが出ていることがほとんどです。以下のチェックリストで当てはまる項目がないか確認してみてください。

狭心症セルフチェックリスト
  • 階段を上ると胸が重くなり、しばらく休むと治まる
  • 早歩きや坂道で胸が締め付けられる感じがある
  • 朝方(特に起床直後)に胸の痛みや不快感で目が覚める
  • 胸の不快感と一緒に、左肩・左腕・顎が痛むことがある
  • 胸の症状が数分で治まるが、繰り返している
  • トイレでいきんだときに胸が苦しくなる
  • ストレスや緊張した後に胸が締め付けられる
  • 高血圧・糖尿病・高コレステロール・喫煙のうち1つ以上がある

2項目以上に当てはまる場合は、早めに循環器科を受診することを強くお勧めします。特に「繰り返している」「最近頻度が増えた」という場合は、早急な受診が必要です。

「ただの疲れ」と思いがちな症状の見分け方

40〜50代男性に特に注意してほしいのが「見過ごしパターン」です。疲労や筋肉痛と混同して受診が遅れるケースが多くあります。

狭心症 vs. 疲れ・筋肉痛の見分けポイント
  • 狭心症の可能性が高い:動くと起きる・休むと治まる・繰り返す・数分で消える・重い圧迫感
  • 筋肉痛・疲れの可能性が高い:特定の体勢で痛む・押すと痛い・1日中続く・刺すような鋭い痛み

「動いたときに起きて、休むと治まる」という再現性が最重要ポイントです。この特徴があれば、たとえ痛みが軽くても循環器科を受診してください。

狭心症でやってはいけないこと

狭心症と診断されている方、または症状に心当たりがある方が避けるべき行動をまとめました。

激しい運動・力み(いきみ)

急に激しい運動をすると心臓の酸素需要が急増し、発作を誘発します。特に注意が必要なのがトイレでのいきみです。排便時に強くいきむ(バルサルバ手技)と、一瞬血圧が急上昇し心臓に大きな負担がかかります。便秘の解消が狭心症管理の重要な一環となる理由はここにあります。

重い荷物を持ち上げる・力仕事・競技レベルの運動なども避けましょう。医師と相談の上で、ウォーキングなどの有酸素運動は適切に継続するのが望ましいです。

急激な温度変化

冠攣縮性狭心症では特に危険です。熱い風呂に突然入る冬の寒い外気に急に出るといった温度変化は、血管のけいれんを誘発します。

入浴時はお湯を38〜40℃程度のぬるめに設定し、脱衣所を温めてから服を脱ぐなどの工夫が有効です。冬の朝に外出する際は十分に防寒してから出ましょう。

喫煙・過度な飲酒・過食

喫煙は冠動脈のけいれんを直接誘発するとともに、動脈硬化を進行させます。狭心症のある方の喫煙は非常に危険です。

過度な飲酒も自律神経を乱し、冠攣縮を起こしやすくします。冠攣縮性狭心症の方は特にアルコール摂取に注意が必要です。

食べ過ぎは食後に消化管への血流が集中し、心臓への血流が相対的に減ることがあります。また血圧の急上昇も招きます。腹八分目を心がけましょう。

自己判断での服薬中断

症状が落ち着いてきたからといって、処方されたニトログリセリンや抗狭心症薬を勝手にやめることは危険です。薬は症状を抑えているだけでなく、発作や心筋梗塞の予防のために継続することに意義があります。変更・中断は必ず医師に相談してください。

ストレスで狭心症の発作は起きる?

精神的ストレスが冠動脈を収縮させるメカニズム

「ストレスで胸が痛くなる」というのは医学的にも正しい現象です。強い精神的ストレスや怒り・不安・緊張は、交感神経を活性化させます。交感神経が優位になるとアドレナリンが分泌され、心拍数が増加し、血管が収縮します。この反応が冠動脈にも及ぶと、血流が低下して発作が起きることがあります。

これを「精神的狭心症」「精神的誘発性狭心症」と呼ぶことがあります。また、強いストレスによる急激な心臓の負担は「たこつぼ型心筋症」という別の病気を引き起こすこともあります。

40〜50代男性が特に注意すべき場面

この年代の男性に特に多いストレス誘発の場面を挙げます。

  • 職場での重大なプレゼン・会議・トラブル対応
  • 身内の葬儀や冠婚葬祭でのプレッシャー
  • スポーツ観戦での興奮(特に競技レベルが高い場面)
  • 怒りや口論
  • 睡眠不足が続いているとき

「感情が激しく動いたとき」に胸の症状が出るようであれば、狭心症の可能性を念頭に置き、循環器科に相談することを勧めます。日常的なストレス管理が狭心症の予防・悪化防止にもつながります。

明るいオフィスのデスクで書類の前に座り、胸の中心に手を当ててストレス性の胸の不快感を感じている40代日本人男性

受診の目安と検査・治療の流れ

こんな症状があればすぐ受診

以下に当てはまる場合は、早めに循環器科(内科)を受診してください。

あわせて心筋梗塞の前兆|発症の1か月前から出るサインと、救急を呼ぶ判断基準で、救急車を呼ぶべき状態との線引きを確認しておいてください。狭心症の背景にある動脈硬化そのものへの対処は動脈硬化は改善できるに、リスク因子の全体像は健診の心電図で異常と言われたら|所見ごとに、精査が要るものと様子見でよいものが分かれますにまとめています。

受診の目安(外来で相談)
  • 動くと胸が締め付けられ、休むと治まるが繰り返している
  • 朝方に胸の不快感が出るようになった
  • 以前よりも少ない活動量で症状が出るようになった
  • 左肩・顎・腕の痛みが胸の症状と同時に出る
以下の場合はすぐに119番救急を呼ぶ
  • 胸の痛みが15分以上続いて治まらない
  • 安静にしてもニトログリセリンを使っても症状が改善しない
  • 激しい胸の痛みと一緒に冷や汗・吐き気・顔面蒼白が出ている
  • 意識が薄れそうな感じがある

心電図・冠動脈CT・カテーテル検査の概要

循環器科を受診すると、以下の検査が行われます。

  • 安静時心電図:発作がないときでも異常波形が残っていることがある。まず最初に実施
  • 運動負荷心電図:トレッドミルや自転車で運動しながら心電図を取り、発作を再現して確認する。労作性狭心症の診断に有効
  • ホルター心電図:小型心電図装置を24〜48時間装着し、日常生活中の心電図を記録。冠攣縮性狭心症(早朝発作)の診断に特に有用
  • 冠動脈CT(CCTA):造影剤を使って冠動脈の狭窄を非侵襲的に確認できる。多くの場合、次のカテーテル検査の前段階として実施
  • 冠動脈造影検査(CAG):カテーテルを動脈から挿入し、冠動脈に直接造影剤を注入してX線撮影する。最も確実な診断法。その場でPCI(治療)に移行できる

治療の選択肢

狭心症の治療は、症状の重さや病態によって以下から選択されます。

  • 薬物療法:多くの場合まず薬から始まります。硝酸薬(ニトログリセリン:発作時に舌下服用)、β遮断薬(心拍数を抑える)、カルシウム拮抗薬(血管のけいれん抑制・冠攣縮性に有効)、抗血小板薬(血栓予防)などが用いられます
  • カテーテル治療(PCI):経皮的冠動脈インターベンションの略。カテーテルの先端のバルーンで狭くなった血管を広げ、金属の筒(ステント)で固定します。局所麻酔で行えるため体への負担が比較的少ない
  • 冠動脈バイパス手術(CABG):複数の血管が狭窄している場合や、PCIが困難な場合に行われます。足や胸の血管を使って狭窄部を迂回する新しい血流路を作ります

治療の方針は専門医と十分に相談して決めます。薬で十分にコントロールできている場合はカテーテルや手術が不要なケースも多くあります。

よくある質問(FAQ)

Q 狭心症の発作が起きたとき、その場でどうすればいいですか?

A.まずその場で立ち止まり、できれば座って安静にします。ニトログリセリン(舌下錠)が処方されている場合はすぐに舌の下に含んでください。通常5分以内に症状が楽になります。15分以上経っても治まらない場合は心筋梗塞の可能性があるため、すぐに119番通報してください。

Q 狭心症でも運動はしていいのですか?

A.治療が安定していれば、適切な有酸素運動(ウォーキングなど)は心臓の機能を維持するために推奨されます。ただし「どこまでできるか」は個人差が大きいため、必ず主治医に運動強度の目安を確認してから始めてください。急激に激しい運動をするのは避け、ゆっくり体を慣らしていくことが大切です。

Q 冠攣縮性狭心症は動脈硬化がなくてもなりますか?

A.はい、なることがあります。冠攣縮性狭心症は動脈硬化がなくても血管のけいれんによって起きるため、「健診で異常なし」と言われた人でも発症します。特に喫煙者・飲酒量が多い方・ストレスが多い方に起きやすいとされています。安静時・早朝に胸の症状が繰り返すようであれば受診しましょう。

Q 狭心症と診断されたら、仕事は続けられますか?

A.多くの場合、適切な治療と管理のもとで仕事を継続できます。ただし重労働・激しい肉体作業・夜勤が多い仕事などは制限が必要になることがあります。また高ストレス職場への対策も重要です。産業医や主治医と連携して「職場での配慮事項」を共有しておくことが安全に働き続けるためのポイントです。

Q 狭心症は元の状態に戻せますか?

A.動脈硬化が原因の労作性狭心症は「元どおりに治す」というより「コントロールする」の疾患です。カテーテル治療や手術で狭窄部を改善しても、生活習慣を変えなければ別の場所に新たな病変が起きる可能性があります。一方、冠攣縮性狭心症は禁煙・節酒・薬物療法で発作をゼロに近づけられるケースが多く、生活改善と薬を続けることで長期的に安定する人も多くいます。

まとめ:狭心症は「心臓からの予告サイン」と受け止めよう

狭心症は、心臓が「もう少しで限界」と発している予告サインです。適切に対処すれば心筋梗塞を防げますが、見過ごせば命に関わる事態になりかねません。この記事のポイントをまとめます。

  • 症状の特徴:動いたとき・安静時(早朝)に胸が締め付けられ、数分〜15分以内に治まる。放散痛(肩・顎・腕)も起きることがある
  • 3種類の違い:労作性(運動時)・冠攣縮性(安静・早朝)・不安定(頻繁・長引く)。不安定狭心症はすぐ受診が必要
  • 心筋梗塞との違い:15分以上続く・安静でも治まらない・冷や汗を伴う場合は心筋梗塞の疑いがあり、即119番
  • やってはいけないこと:激しい運動・排便時の強いいきみ・急激な温度変化・喫煙・大量飲酒
  • 受診の目安:「動いたときに胸が締め付けられ、休むと治まる」が繰り返すなら循環器科へ。症状が急に悪化した場合はすぐに救急を

「こんな症状が前からあった気がする」と思い当たることがあれば、ぜひ一度循環器科に相談してみてください。狭心症は早期発見・早期治療で十分にコントロールできる病気です。