夜中の2時、ふくらはぎに激痛が走って飛び起きる。足を押さえてうずくまり、痛みが引くのを待つ。数分でおさまって、朝には忘れている——40代、50代の男性で、これを月に何度も繰り返している方がいます。
ほとんどの場合、原因は「水分不足」か「ミネラル不足」で片づけられます。実際、それで説明がつくことも多いのです。ですが40代を境に急に増えてきたのであれば、確認しておいたほうがいいことがあります。
こむら返りは、それ自体が危険な症状ではありません。問題は、いくつかの病気が「足がつる」という形で最初のサインを出すことにあります。糖尿病、腎機能の低下、足の動脈硬化、下肢静脈瘤、腰の神経の圧迫——いずれも40代以降に増えるもので、いずれも初期には足のつり以外にほとんど症状がありません。
この記事では、まず「つっていないときの足に、何かあるか」を確認してもらいます。この一問で、ただのこむら返りと、背景に何かあるものは大きく分かれます。生理的なこむら返りは、つっている数分間だけが症状です。平常時の足はまったく正常なのが本来の姿です。
そのうえで、つった瞬間の正しい対処、繰り返さないための方法、そして受診の線引きまで整理します。
まず、この3つだけ確認してください
いちばん最近つったときのことを思い出しながら、次の3つに答えてください。
1つめ:どのくらいの頻度で起きていますか。年に数回なのか、月に数回なのか、週に何度もなのか。「たまに」ではなく、回数で答えてください。
2つめ:つるのは片足だけですか、両足ですか。いつも同じ側なのか、そのときによって左右が変わるのか。「いつも右だけ」なら、それは情報です。
3つめ:つっていないとき、その足はまったく何ともないですか。ここが最大の分かれ目です。しびれ、冷たさ、だるさ、むくみ、歩いたときの痛み——つっていない時間帯に、足に何か感じることはありませんか。
ところが神経や血管そのものに問題があるときは、こむら返りは症状のひとつでしかありません。つっていない時間にも、しびれ・冷え・だるさ・歩行時の痛みという形で足が信号を出し続けます。「つったときだけ痛い」のか「そうでないときも何かある」のか——ここを分けてください。
・歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると楽になるのを繰り返す
・足のしびれや感覚の鈍さが、つっていないときも続いている
・片足だけ明らかに冷たい、色が悪い
・週に何度もつる状態が続いている
・糖尿病がある、または血糖・腎機能を指摘されている
【逆引き表】「つっていないときの足」で原因は分かれます
3つの答えを持ったまま、次の表を見てください。縦の分かれ目は「つっていない時間の足」です。
| 考えられるもの | つっていないときの足 | つり方の特徴 | ほかの手がかり |
|---|---|---|---|
| 生理的なこむら返り (脱水・ミネラル・使いすぎ) |
まったく何ともない | 夜中や明け方。運動した日・汗をかいた日の夜に多い | 左右どちらにも起きる。頻度は月に数回まで |
| 糖尿病による神経の障害 | 足先のしびれ・ジンジン感が続く | 夜間に多い。両足に起きやすい | 左右対称。感覚が鈍く、けがに気づきにくい |
| 下肢の動脈硬化 (閉塞性動脈硬化症) |
片足が冷たい・色が悪い | 歩いた日の夜。運動でふくらはぎが張る | 歩くと痛み、休むと楽になるを繰り返す |
| 下肢静脈瘤 | 夕方の足のだるさ・むくみ | 夜中。立ち仕事の日の夜に強い | ふくらはぎに血管が浮き出て見える |
| 腰の神経の圧迫 (脊柱管狭窄症など) |
お尻から足にかけてのしびれ | 夜間。片足に偏ることが多い | 前かがみになると楽。腰痛をともなう |
| 腎機能の低下・電解質の乱れ | だるさ・むくみ | 頻度が高い。手や体幹がつることもある | 健診でクレアチニンや尿の異常を指摘 |
| 肝臓の機能低下 | 全身のだるさ | 夜間に頻繁。こむら返りが最初の訴えになることも | 飲酒量が多い、肝機能の数値を指摘 |
いちばん上の行に当てはまるなら、慌てる必要はありません。この記事の後半にある対処と予防で、多くは減らせます。2行目より下に思い当たるものがあるなら、足のつりは入口です。本体はそちらにあります。
なぜ夜中と明け方に集中するのか
「日中は平気なのに、決まって夜中につる」——これには理由があります。
ひとつは足の向きです。あお向けで寝ていると、掛け布団の重みで足首が自然に伸びた状態(つま先が下を向いた状態)になります。この姿勢では、ふくらはぎの筋肉がずっと縮んだままです。縮んだ筋肉は、わずかな刺激で異常な収縮を起こしやすくなります。寝返りを打った瞬間や、伸びをした瞬間につるのは、このためです。
もうひとつは水分です。眠っているあいだ、人はコップ1杯前後の汗をかきます。飲みものは入ってこないので、朝方に向けて体の水分は少しずつ減ります。汗と一緒に出ていくのは水だけではなく、筋肉の収縮を調節しているミネラルも一緒です。
そして3つめが温度です。寝ているあいだに布団から足が出る、あるいは明け方に室温が下がると、ふくらはぎの血流が落ちます。「夏の夜、エアコンをつけたまま寝た日につる」という方が多いのは、これが理由です。こむら返りは冬の症状だと思われがちですが、脱水と冷房が重なる夏も同じくらい起こります。
つるのはふくらはぎだけではありません
「こむら返り」の「こむら」は、ふくらはぎの古い言い方です。ただし実際につるのは、そこだけではありません。
足の指と土踏まずは、ふくらはぎの次に多い場所です。足の指を曲げる筋肉は、ふくらはぎの奥からアキレス腱の内側を通って足の裏まで伸びています。つまり「ふくらはぎがつる人」と「足の指がつる人」は、同じ筋肉群を共有しています。ふくらはぎのストレッチが足の指のつりにも効くのは、このためです。
足の指がつりやすい方には、共通する条件があります。合わない靴で長時間歩いた日、立ちっぱなしだった日、そして冷房の効いた部屋で靴を脱いでいた日です。足の指は体のいちばん末端にあるため、血流と温度の影響を最も受けやすい場所だと考えてください。
太ももの前や裏がつる場合は、ふくらはぎより「使いすぎ」の要素が強くなります。久しぶりの運動、長距離の運転、慣れない姿勢での作業のあとに起こりやすくなります。
40・50代で増えるのはなぜか——「ミネラル不足」で片づけない
こむら返りの説明は、たいてい「水分とミネラルが足りていないから」で終わります。間違いではありませんが、それだけでは「なぜ20代のときは同じ生活でつらなかったのか」に答えられません。
40代以降に増える理由は、大きく3つあります。
1つめは、筋肉量そのものが減っていることです。筋肉は30代以降、何もしなければ年に1%前後ずつ減っていきます。減った筋肉は、同じ作業でも限界に近い使われ方をします。「昔と同じ距離を歩いただけなのに、その夜つった」という経験があるなら、負荷が変わったのではなく、受け止める側が変わったということです。
2つめは、水分を蓄える力が落ちていることです。加齢とともに体内の水分の割合は減り、のどの渇きを感じる感覚そのものも鈍くなります。つまり「のどが渇いていない=足りている」ではなくなるのが、この年代です。
3つめは、背景に病気が増える年代だということです。糖尿病、動脈硬化、腎機能の低下、静脈瘤——いずれも40代から増えます。「加齢だから仕方ない」と「加齢とともに増える病気が隠れている」は、まったく別のことです。前者だと決めつけると、後者を見落とします。
なお腎機能を指摘されている方は、カリウムを含むサプリメントを自己判断で使わないでください。この場合は必ず主治医に相談してください。
背景に病気があるとき——臓器別の手がかり
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。足のつりを入口に見つかることがあるものを、臓器別に整理します。
糖尿病——両足に、左右対称に
血糖が高い状態が続くと、細い神経から傷んでいきます。最初に出るのは足先です。ジンジンする、砂利の上を歩いているような感じがする、感覚が鈍い——こうした症状に、こむら返りが加わります。
特徴は「両足に、左右対称に」出ることです。片足だけなら、まず別のものを考えます。そして重要なのは、この段階では痛くも痒くもない期間が長いという点です。健診で血糖を指摘されたまま放置している方は、糖尿病の合併症を確認してください。足のつりが最初の自覚症状になることがあります。
足の動脈硬化——歩くと痛み、止まると治まる
足へ向かう動脈が狭くなると、歩いているあいだだけ筋肉が酸素不足になります。数十メートル〜数百メートル歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると数分で楽になって、また歩ける。これを繰り返すのが典型的な現れ方です。
片足が冷たい、色が悪い、足の毛が薄くなった——こうした変化をともなうこともあります。喫煙者と糖尿病のある方に多く、心臓や脳の血管も同時に傷んでいる可能性を示すサインでもあります。動脈硬化の記事で全身の見方を整理しています。
下肢静脈瘤——夕方のだるさと、浮き出た血管
足の静脈にある弁が壊れて、血液が下にたまる状態です。立ち仕事の方に多く、夕方になると足がだるく、重くなります。ふくらはぎに青い血管がぼこぼこと浮き出て見えるのが分かりやすいサインです。夜のこむら返りは、この病気の代表的な症状のひとつです。
腰の神経——足だけを見ていても分かりません
腰の神経が圧迫されると、お尻から足にかけてのしびれと一緒に、こむら返りが起こることがあります。「しばらく歩くとしびれて歩けなくなり、前かがみで休むとまた歩ける」という形なら、動脈硬化ではなく腰を疑います。見分け方は「前かがみで楽になるか」です。動脈硬化なら姿勢は関係なく、止まれば楽になります。
腎臓・肝臓——頻度が異常に高いとき
腎機能が落ちると、体のミネラルバランスの調節がうまくいかなくなります。肝臓の機能が低下したときも、こむら返りは高い頻度で起こります。いずれも「週に何度も」「ふくらはぎ以外もつる」という形になりやすいのが特徴です。
健診でクレアチニンの数値や肝機能を指摘されていて、なおかつ足がつる頻度が上がっているなら、その2つは無関係ではない可能性があります。受診時には必ず両方を伝えてください。
いま飲んでいる薬が原因のことがあります
意外に見落とされるのが、薬です。こむら返りが「薬を始めた時期」と重なっていないかを確認してください。
- 利尿薬——尿を出す作用で、水分と一緒にミネラルも失われます。高血圧やむくみの治療で使われます
- コレステロールを下げる薬(スタチン系)——筋肉に関わる副作用が知られています。足のつりだけでなく、筋肉の痛みやだるさが続く場合は必ず申し出てください
- 一部の降圧薬・ホルモン関連薬・喘息の薬——ミネラルバランスに影響することがあります
つった瞬間の対処——伸ばす方向を間違えないこと
実際につっているときにやることは、シンプルです。縮んでいる筋肉を、ゆっくり伸ばすこと。これだけです。
ふくらはぎがつったとき——ひざを伸ばしたまま、つま先を手前(すね側)に引き寄せます。手が届かなければ、足の裏にタオルをかけて両手で引くと同じことができます。壁に足の裏を当てて体重をかける方法でも構いません。
やってはいけないのは、勢いよく引くことです。つっている筋肉は限界まで縮んでいる状態で、そこへ急な力を加えると筋線維が切れて肉離れになることがあります。10秒〜20秒かけて、じわじわ伸ばしてください。
足の裏や足の指がつったとき——指を1本ずつではなく、足の指全体を手で持って、甲側にゆっくり反らせます。ふくらはぎのときと考え方は同じで、縮んでいる方向の反対へ伸ばします。
太ももの前がつったとき——うつ伏せになるか横向きになり、ひざを曲げてかかとをお尻に近づけます。太ももの裏なら、逆にひざを伸ばして足を持ち上げます。
痛みが引いたら、そのまま寝ずに、ふくらはぎを軽く動かしてから寝てください。血流を戻しておくと、同じ夜にもう一度つる確率が下がります。
運転中・入浴中・水の中でつったとき
寝ているとき以外につった場合は、伸ばし方より先に、安全の確保です。
運転中——右足がつるとブレーキ操作ができなくなります。ハザードランプを点けて、安全な場所に停めることが最優先です。「あと少しで着くから」と痛みをこらえたまま走るのは避けてください。長距離運転では、1〜2時間ごとに車を降りて数歩歩くだけで、かなり防げます。
入浴中——湯船の中でつると、痛みで姿勢を崩し、そのまま沈み込む危険があります。まず湯船のふちをつかんでください。動けるようなら浴槽から出て、床の上で伸ばします。長風呂と、風呂上がりの水分不足が重なった日は起きやすくなります。
水泳中・海や川——ここがいちばん危険です。足がつっても、その場で泳ぎ続けようとしないでください。仰向けに浮いて力を抜き、落ち着いてから岸やプールサイドへ向かいます。準備運動をせずに冷たい水に入ることが、最大の引き金です。お酒を飲んだあとに水に入るのは、それ自体を避けてください。
繰り返さないための5つ
頻度を減らすためにやることは、順番があります。上ほど、頻度の変化につながりやすい順に並べています。
- ①寝る前に水分をとる——コップ1杯で構いません。夜中のトイレが心配で控えている方が多いのですが、夜間頻尿の原因が別にあるなら、水を減らしても回数は減りません。汗をかいた日はとくに意識してください
- ②寝る前にふくらはぎを伸ばす——壁に手をついて片足を後ろに引き、かかとを床につけたまま30秒。左右1回ずつで十分です。入浴後、体が温まっているときがいちばん効率的です
- ③足首を冷やさない——夏の冷房と、冬の布団からのはみ出しの両方に注意してください。レッグウォーマーや薄手の靴下1枚で変わることがあります
- ④入浴で温める——シャワーだけで済ませている日が続いていないか。ふくらはぎは心臓から遠く、もともと血流が滞りやすい場所です
- ⑤運動した日の夜こそ、①〜④をやる——ゴルフ、久しぶりの長距離歩行、草野球。「今日は歩いたな」という日の夜が、いちばんつりやすい夜です
なおふくらはぎの柔軟性が落ちていると、足の裏にも負担が回ります。朝の最初の一歩でかかとが痛むなら、足底筋膜炎の記事もご覧ください。同じ場所の硬さが、違う症状として出ていることがあります。
見るのは1か月の合計です。月8回だったものが月3回になれば、確実に効いています。1か月続けて回数がまったく変わらないなら、生活習慣ではないところに理由があるということ——そこが受診の区切りになります。この記録は、そのまま受診時の説明にも使えます。
やってはいけない3つ
①つっている最中に、勢いよく伸ばす・強く揉む。前述のとおり、肉離れの原因になります。とくに「早く治そうとして力任せに引っ張る」のが、いちばんやりがちな失敗です。
②「水分をとると夜中にトイレに行くから」と、夕方以降の水分を極端に減らす。脱水はこむら返りの直接の引き金です。夜間頻尿とこむら返りを両方抱えている方は、水を減らすのではなく、頻尿のほうを別に相談してください。前立腺が原因なら、水を減らしても回数は変わりません。
③つった後の痛みが続いているのに、揉んだり温めたりする。これが3つのうちで最も重要です。理由は次の項で説明します。
「つった後もずっと痛い」なら、別のものを疑います
ふつうのこむら返りは、数秒から数分で収まり、後には筋肉痛のような鈍い痛みが半日ほど残る程度です。
ただし「半日」は目安で、強くつった夜のあとは2〜3日ほど鈍い痛みが残ることもあります。これ自体は珍しいことではありません。見分けるのは日数ではなく、痛みの出方です。ふつうの筋肉痛ならふくらはぎ全体がぼんやり痛み、日を追うごとに軽くなっていきます。歩けますし、腫れもありません。
これに当てはまらない痛み——一点が強く痛む、日を追っても軽くならない、腫れている——であれば、考えるべきものが2つあります。
1つめは肉離れです。つった瞬間に無理な力が加わって、筋線維が部分的に切れた状態です。押すと一点が強く痛む、歩くと痛む、内出血が出てくるのが手がかりです。この場合は揉んではいけません。冷やして、痛む動作を避けてください。
2つめが深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)です。ふくらはぎの深いところにある静脈に血のかたまりができる状態で、これは急いで対応すべきものです。
・その部分が熱を持ち、赤みがある
・押すと痛む、ふくらはぎがパンパンに張っている
・長時間の車移動・飛行機・入院・手術のあとに始まった
とくに「息苦しさ」「胸の痛み」が加わった場合は、救急要請を検討してください。血のかたまりが肺へ飛ぶことがあるためです。この状態でマッサージをするのは危険です。「つったから揉んでおこう」がいちばんやってはいけない対応になります。
膝の裏の痛みとふくらはぎの腫れが同時にある場合の見分け方は、膝の裏が痛い記事で詳しく扱っています。
様子を見てはいけない足のつり
・つっていないときも、しびれ・冷え・だるさがある
・歩くと痛くなり、休むと楽になるのを繰り返す
・片足だけ冷たい、色が悪い
・ふくらはぎ以外(手・腹・胸)もつる
・つった後の痛みが数日引かない、腫れている
・薬を飲み始めた時期と重なっている
・健診で血糖・腎機能・肝機能を指摘されている
逆に、月に1〜2回で、つっていないときの足はまったく正常——であれば、前述の予防を1か月試してみる価値があります。それで頻度が変わらないなら、そこが受診の区切りです。
受診の目安——何科で、実際に何をされるか
何科か——迷ったら内科で構いません。こむら返りは全身の状態を映すことが多く、血液検査で見るべきものが多いためです。ただし症状によって行き先が変わります。
- 足のしびれ・冷え・歩くと痛むがある → 循環器内科・血管外科
- 血管が浮き出ている、夕方のむくみがある → 血管外科
- 腰痛・お尻から足のしびれがある → 整形外科
- 血糖・腎機能・肝機能を指摘されている → 内科(かかりつけ)
- ふくらはぎが片側だけ腫れて痛む → その日のうちに内科か救急外来
何をされるか——中心は問診と血液検査です。いつから、どのくらいの頻度で、片足か両足か、つっていないときはどうか。この記事の冒頭の3つが、そのまま問診で聞かれます。血液検査では、血糖、腎機能、肝機能、電解質、甲状腺の機能などが確認されます。
必要に応じて、足の血流を調べる検査(腕と足首の血圧を比べるもの)や、超音波検査が行われます。いずれも痛みのない検査で、その場で結果が分かることがほとんどです。
どんな選択肢があるのか——判断は医師が行いますが、全体像を知っておくと説明を理解しやすくなります。
- 背景に病気があった場合は、そちらの治療が中心になります。血糖のコントロール、静脈瘤の処置、動脈の治療——足のつりを止める薬を出して終わり、にはなりません。これがいちばん大事な点です
- 生活の見直しの指導——水分、ストレッチ、冷え対策。前項で挙げたものが、そのまま指導内容になります
- 薬が原因と考えられる場合は、種類や量の調整が検討されます。だからこそ「お薬手帳を持っていく」ことに意味があります
- 漢方薬(芍薬甘草湯=しゃくやくかんぞうとう)——こむら返りに対して処方されることがある漢方薬です。ただし長く続けると血圧やむくみに関わる副作用が知られており、漫然と飲み続けるものではありません。市販でも手に入りますが、「毎晩飲む」使い方をする前に、必ず医師か薬剤師に相談してください。とくに高血圧・心臓・腎臓に持病のある方は注意が必要です
よくある質問(FAQ)
Q 水分とミネラルをとっているのに、つります。何が足りないのでしょうか?
A.足りないものを探す段階ではないかもしれません。水分とミネラルを意識しても頻度が変わらない場合、考えるのは「補い方」ではなく「別の理由があるか」です。確認する順番は3つ——①つっていないときの足に、しびれ・冷え・むくみがないか。②飲み始めた薬がないか。③健診で血糖・腎機能・肝機能を指摘されていないか。この3つがすべて「なし」で、それでも週に何度もつるのであれば、サプリを増やすより受診したほうが早いです。
Q こむら返りは冬に多いのですか、夏に多いのですか?
A.どちらにも起こります。理由が違うだけです。冬は冷えによる血流の低下が主な引き金で、布団から足が出ていた朝方につりやすくなります。夏は汗による脱水とミネラルの喪失に加えて、冷房で足だけが冷えているという条件が重なります。「夏は水分をとっているから大丈夫」と考えている方ほど、汗で失う量に追いついていないことがあります。季節で油断せず、「汗をかいた日の夜」と「足が冷えた日の夜」の両方を警戒してください。
Q お酒を飲んだ日の夜によくつります。関係ありますか?
A.関係します。アルコールには尿を増やす作用があり、飲んだ量より多くの水分が出ていきます。「水分をとったつもり」が実際には脱水になっているのが、飲酒した夜の状態です。ミネラルも一緒に失われます。対策はシンプルで、飲んでいるあいだと寝る前に、水を挟むこと。それだけで頻度が変わる方がいます。
ただし飲酒量が多い状態が長く続いている方の場合は、肝臓の機能低下がこむら返りの背景になっていることもあります。「飲んだ日だけ」ではなく「飲まない日もつる」ようになってきたなら、そこは分けて考えてください。
Q 運動不足だからつるのですか。それとも運動しすぎですか?
A.どちらでも起こるので、この問いの立て方だとうまく答えが出ません。正確には「その筋肉にとって、負荷が想定を超えたとき」につります。運動不足の方は筋肉量が落ちているので、日常の動作ですら限界に近い使われ方になります。よく運動する方は、単純に使った量が多い日につります。
ですからやることは同じです。負荷がかかった日の夜に、水分・ストレッチ・保温をする。そして運動不足の方は、それに加えて筋肉量を落とさないことが予防になります。ふくらはぎは、かかとの上げ下げだけでも維持できます。
Q 市販の漢方薬を常備しておけば、受診しなくてもいいですか?
A.おすすめしません。理由は2つあります。1つめは、症状を抑えることと、原因を確かめることは別だからです。背景に糖尿病や動脈硬化があった場合、足のつりだけが目立たなくなると、確認する機会そのものが失われます。足のつりは、この年代では数少ない「体からの通知」です。通知を消す前に、中身を見てください。
2つめは安全性です。こむら返りに使われる漢方薬には、長期に続けると血圧やむくみに関わる副作用が知られており、毎晩飲み続ける想定の薬ではありません。高血圧・心臓・腎臓に持病のある方はとくに注意が必要です。使うなら必ず、医師か薬剤師に相談してからにしてください。
まとめ:つっていないときの足を、一度だけ確認してください
こむら返りは、ほとんどの場合ただのこむら返りです。ですが「ほとんど」に入るかどうかは、確認しないと分かりません。そして確認に必要なのは、検査でも道具でもなく、つっていない時間の足を一度だけ意識してみることだけです。
- 切り分ける:つっていないときの足が完全に正常なら、生理的なこむら返り。しびれ・冷え・だるさ・歩行時の痛みがあるなら、足のつりは入口
- 数える:「よくつる」ではなく1か月に何回か。片足か両足かも記録する
- その場でやる:ゆっくり10〜20秒かけて伸ばす。勢いよく引くと肉離れになる
- 減らす:寝る前の水分/入浴後のふくらはぎ伸ばし/足首を冷やさない。歩いた日の夜こそやる
- 急ぐ:片側だけ腫れて熱を持ち、押すと痛むなら当日受診。揉んではいけません
この記事でいちばん伝えたいのは、「足のつりを止めること」より「足のつりが何を知らせているかを見ること」のほうが先だという一点です。糖尿病も、足の動脈硬化も、腎機能の低下も、初期にはほとんど症状がありません。そのなかで、こむら返りは数少ない、体が出してくれる分かりやすい合図です。
今夜つったら、痛みが引いたあとに一度だけ、両方のふくらはぎを見比べて、触ってみてください。太さは同じか、片方だけ冷たくないか。それだけで、次にやることが決まります。