健診で「LDLコレステロールが高い」と言われて、まず何をやめましたか。多くの方が答えるのは「卵」です。次に多いのが「肉」、そして「とりあえずウォーキングを始めた」。
ところが1年後の健診で、数値がほとんど変わっていない。あるいは少し上がっている。——この経験をした40代・50代の男性は、驚くほど多いのです。
理由ははっきりしています。効果の小さいことから手をつけているからです。LDLを下げる方法はいくつもありますが、それぞれの効果の大きさは同じではありません。にもかかわらず、多くの記事は「これがいい」「あれもいい」と横並びで紹介します。だから読んだ人は、いちばん取り組みやすいもの——卵を減らす、歩く——から始めてしまいます。
この記事では、LDLを下げる手段を効果が大きい順に並べ直します。そのうえで、40・50代男性が信じがちな2つの通説——「卵を減らせば下がる」と「運動すれば下がる」——を、根拠を示して整理します。どちらも間違いというより、効く相手を取り違えている話です。
なお、この記事は「下げる方法」だけを扱います。数値の読み方や基準値はLDLコレステロールの基準値の記事、薬については脂質異常症の薬の記事、中性脂肪については中性脂肪を下げる記事に分けてあります。
まず、この3つだけ確認してください
手を動かす前に、3つだけ答えてください。ここで進む方向が決まります。
1つめ:これまでに何を減らしましたか。卵ですか、それとも脂身ですか。卵・イカ・エビ・タラコを減らしたのに変わらなかった、という方は、この記事のH2-3とH2-4がそのまま答えになります。
2つめ:前回の健診と比べて、上がっていますか、横ばいですか。数値そのものより「動き」のほうが情報量が多いのです。急に上がった年があるなら、その年に何が変わったか(転勤・単身赴任・体重・飲酒量)を思い出してください。
3つめ:家族に、若くして心筋梗塞や脳梗塞になった人がいますか。あるいは、健診でずっとLDLが180を超えている。この場合は食事だけの話ではなくなる可能性があります(H2-10で扱います)。
血液中のコレステロールの多くは肝臓で作られています。食事から入ってくる量が増えると、肝臓は作る量を減らして調整します。だから食べた分がそのまま血中の数値に足されるわけではないのです。
一方、肝臓がコレステロールを作る量を増やしてしまう引き金になるのが、飽和脂肪酸です。だから「コレステロールを含む食品」ではなく「飽和脂肪酸を多く含む食品」を見直すほうが、LDLは動きます。減らすべきは卵ではなく、脂身とバターだった——これが多くの方の取り違えです。
【結論】効果が大きい順に5つ
先に全体像を出します。下がり幅の目安は研究によって幅がありますが、順序はおおむね変わりません。
| やること | LDLの下がり幅の目安 | 続けやすさ |
|---|---|---|
| 1. 飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換える | 5〜10%程度 | △(買うものを変える必要がある) |
| 2. 水溶性食物繊維を1日5〜10g足す | 3〜5%程度 | ◎(足すだけ・我慢がない) |
| 3. 体重を5%落とす | 5%前後 | △(時間がかかる) |
| 4. トランス脂肪酸を避ける | 摂取量による(多い人ほど効く) | ○(選ぶだけ) |
| 5. 禁煙 | LDLより「HDLが上がる」効果 | △ |
| (参考)運動 | LDLへの直接効果は小さい | ○ |
| (参考)卵を減らす | 多くの人では小さい(例外あり) | ◎ |
1と2を同時にやるのが、いちばん効率のいい組み合わせです。1は「置き換える」、2は「足す」なので、我慢が1種類で済みます。下から順にやると、いちばん我慢した割にいちばん動かない、という結果になります。
飽和脂肪酸の置き換えは、明日の買い物から実行できて、数週間で数値に出ます。体重を5%落とすのは、順調にいっても3〜6か月かかります。同じ下がり幅でも、到達までの距離がまるで違うのです。
さらに1位は3位を含みます。脂身を赤身に、菓子パンをナッツに替えれば、摂取エネルギーは自然に下がるので体重もついてきます。逆は成り立ちません——食べる中身を変えずに体重だけ落としても、下がり幅は小さくなります。だから1位から始めて、3位は結果として受け取るのが正しい順序です。
また、これらは薬の代わりになるものではありません。医師から薬を勧められている方は、自己判断で食事に置き換えないでください。
【誤解①】卵を減らしても、あまり下がりません
いちばん多い取り違えから片づけます。
食事のコレステロールと血中LDLは、思ったほど連動しません
体内のコレステロールは、その多くが肝臓などで作られています。食事から入ってくるのは一部です。しかも体には調整するしくみがあり、食事から多く入れば肝臓は作る量を減らします。
だから、卵を1日1個から2日に1個に減らしても、その分がまるごと数値から引かれるわけではありません。「1年間まじめに卵を減らしたのに、LDLが5しか下がらなかった」——これは、あなたの努力不足ではなく、そういうしくみだということです。
日本の食事摂取基準は、コレステロールの上限値を設けていません
ここは事実として押さえておく価値があります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」は、2015年版以降、コレステロールの目標量(上限値)を設定していません。科学的根拠が十分でないという判断によるものです。
ただし、これは「いくら食べてもいい」という意味ではありません。基準そのものにも、上限を設けないことが摂取量の多さを認めるものではない、という趣旨の注記が添えられています。
ただし例外——「反応しやすい人」がいます
ここが大事です。食事のコレステロールに強く反応する体質の方が、一定の割合で存在します。この方たちでは、卵を減らすことに意味があります。
そして重要な点として、すでにLDLが高いと診断されている方については、動脈硬化の予防を目的とした診療ガイドラインで、コレステロール摂取量を1日200mg未満に抑えることが勧められています(卵1個におよそ200mg強が含まれます)。「上限がない」のは健康な人の食事の話であって、すでに高い人に向けた助言とは別だと理解してください。
実務的な落としどころはこうです。卵を目の敵にする必要はありませんが、1日2個も3個も食べているなら1個に戻す。そのうえで、本丸である脂身とバターに取りかかる。順番の問題です。
【1位】飽和脂肪酸を置き換える——ここが本丸です
LDLを下げるうえで、いちばん効果が期待できるのがここです。
何に入っているか——40・50代男性の食卓で多い5つ
飽和脂肪酸は、常温で固まる脂だと覚えると分かりやすいです。40・50代男性の食生活で摂取源になりやすいのは、次の5つです。
①肉の脂身。バラ肉、ひき肉(合いびき)、鶏皮、霜降りの牛肉。②加工肉。ベーコン、ソーセージ、ハム。③乳製品。バター、生クリーム、チーズ、全脂肪の牛乳。④洋菓子・菓子パン。クッキー、ケーキ、デニッシュ——バターとショートニングの塊です。⑤ラーメンのスープと揚げ物。とんこつ・背脂系のスープは、飲み干すかどうかで摂取量が大きく変わります。
心当たりのある方は多いはずです。ここに卵は入っていません。
「減らす」ではなく「置き換える」
ここがこの記事でいちばん実用的な部分です。「飽和脂肪酸を減らす」と聞くと、多くの方は脂身を残す・揚げ物を我慢するという引き算をします。ところが、それだけでは思ったほど数値が動きません。理由は2つあります。
理由1:減らした分が、別のもので埋まるからです。人は1日に必要なエネルギーを、無意識にどこかで取り戻します。夕食の脂身を我慢した人が、夜に煎餅やアイス、締めのごはんに手を伸ばす——これは意志の弱さではなく、体の当然の反応です。そして糖質で埋めた場合、LDLはあまり下がらず、代わりに中性脂肪が上がることがあります。数値が横ばいどころか悪化した、という健診結果は、この形で起こります。
理由2:脂そのものを減らすのではなく、脂の「種類」を替えるほうが効くからです。研究で確かめられているのは「脂を減らすとLDLが下がる」ではなく、「飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に替えるとLDLが下がる」というほうです。つまり同じ量の脂を食べていても、種類が替われば数値は動きます。
だから合言葉は「減らす」ではなく「替える」です。我慢の総量は増えません。買うものと注文するものが変わるだけです。これが、この方法がいちばん続く理由でもあります。
置き換えの具体例を挙げます。
・豚バラ/合いびき → 鶏むね、豚もも、赤身のひき肉。いちばん効きます。・週2回、肉を魚に。とくにさば、いわし、さんま、ぶり。青魚の脂は不飽和脂肪酸で、置き換えの効果が大きい組み合わせです。・バター → オリーブオイル、菜種油。トーストに塗るバターをやめるだけでも量が変わります。・間食の洋菓子 → ナッツひとつかみ(無塩・素焼き)。アーモンド、くるみ。・牛乳を低脂肪に。毎日飲む人ほど効きます。
全部やる必要はありません。この中からいちばん頻度が高いもの1つを選んで置き換えてください。毎日バターを塗っている人はバター、週4回ラーメンの人はスープ、というように「回数が多いもの」からです。
コンビニと外食での置き換え
自炊しない方のほうが多いので、外での選び方を書きます。
コンビニ。おにぎりなら鮭・こんぶ。サンドイッチならカツサンドよりツナや卵よりサラダチキン系。惣菜はさばの塩焼き・いわしの煮付けが置いてある店が増えました。ホットスナックは、鶏皮つきの唐揚げより焼き鳥のもも塩(皮なしがあれば)。
定食屋。とんかつ・から揚げ定食 → 焼き魚定食、刺身定食。これだけで飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が同時に入れ替わります。牛丼チェーン。牛丼 → 鮭定食のある店を選ぶ。ラーメン。とんこつ → 中華そば、そしてスープを飲み干さない。この1つだけでも、週の摂取量はかなり変わります。
いちばん脂身が集まるのは、実は飲み会です
週に何度か飲む方にとって、ここがいちばん大きい場面です。居酒屋の定番メニューは、飽和脂肪酸が集中する構成になっています。から揚げ、手羽先、串カツ、ソーセージ、豚バラ串、シーザーサラダ、チーズ、ポテトフライ、そして締めのラーメン。これを週2回やると、平日の食事を整えた分がかなり相殺されます。
飲み会をやめる必要はありません。頼むものを替えてください。幸い、居酒屋には置き換え先が豊富にあります。
・から揚げ・串カツ → 焼き鳥(もも塩・砂肝・レバー)、刺身、焼き魚。とくにさばの塩焼き、いわしの丸干し、あじの開きは置き換えとして理想的です。・ポテトフライ → 枝豆、冷奴、だし巻き。・シーザーサラダ → 海藻サラダ、酢の物、めかぶ。これはH2-5の食物繊維も同時に取れます。・締めのラーメン → お茶漬け、あるいは何も食べない。
コツは「最初の3品」です。人は空腹の最初に頼んだものをいちばん食べます。最初の3品を刺身・枝豆・海藻サラダにしておくと、その後に揚げ物が来ても食べる量が減ります。注文の主導権を握れない立場なら、「先に刺身を頼んでおきますね」と最初に言ってしまうのが実際的です。
なお、酒そのものはLDLよりも中性脂肪に影響します。両方を指摘されている方は純アルコール量の記事もあわせてどうぞ。
とはいえ、外食中心の生活でグラム数を数えるのは現実的ではありません。「常温で固まる脂を、液体の脂に置き換える」——この一言だけ覚えて帰ってください。バターは固まる、オリーブオイルは固まらない。牛脂は固まる、魚の脂は固まらない。判断はそれで足ります。
【2位】水溶性食物繊維を1日プラスする
2番目は、我慢がまったく要らない方法です。だから続きます。
水溶性の食物繊維は、腸の中で胆汁酸を捕まえて体の外へ運びます。胆汁酸はコレステロールから作られているので、それが出ていくと肝臓は新しい胆汁酸を作るためにコレステロールを使います。結果として血中のLDLが減る方向に働く、というしくみです。
何をどれだけ足すか
目安は1日5〜10gを追加です。多く含むのは次のものです。
・大麦(もち麦)——白米に混ぜて炊くだけ。いちばん手間がかからない。・オートミール——朝食を置き換える。・海藻——わかめ、めかぶ、もずく。パックのめかぶ1つが手軽です。・きのこ・こんにゃく・里芋。・果物——りんご、みかん、キウイ。皮ごと食べられるものはそのまま。・納豆、オクラ、山いも。
朝食を変えるのがいちばん続きます
実務的な提案をひとつ。朝食は毎日同じものを食べている方が多いので、ここを1回変えると自動的に毎日続きます。意志の力がほとんど要りません。
具体的には、白米をもち麦入りに変える(無洗米に混ぜて炊くだけ)、あるいは朝のパンをオートミールに変える。そして味噌汁にわかめを入れる、めかぶを1パック足す。これで5g前後は動きます。
夕食を変えようとすると、外食や付き合いで崩れます。変えるなら、自分が確実にコントロールできる食事からです。
【3位】体重を落とす——目標は5%です
減量はLDLにも効きますが、目標設定を間違えると続きません。
目標は「5%」で十分です。体重80kgの方なら4kg、75kgなら約3.8kg。10kg痩せる必要はありません。健診の数値を動かすという目的なら、5%の減量で意味のある変化が期待できるとされています。
そして減量は、H2-4とH2-5をやっていれば自然についてきます。脂身を赤身に置き換え、もち麦とめかぶを足せば、摂取エネルギーは下がり満腹感は保たれます。減量を別のタスクとして立てないでください。タスクが3つになると、たいてい全部崩れます。
内臓脂肪を減らす具体的な進め方は内臓脂肪を落とす記事にまとめてあります。腹囲が気になる方はそちらもどうぞ。
【4位】トランス脂肪酸を避ける
トランス脂肪酸は、LDLを上げると同時にHDL(善玉)を下げるという、脂質にとって二重に不利な働きが知られています。
含まれやすいのはマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングを使った菓子パン・クッキー・ドーナツ・パイ、一部の揚げ物です。原材料表示に「ショートニング」「加工油脂」「マーガリン」とあれば含まれている可能性があります。
ただし順位を4位にしているのは理由があります。日本人の平均的な摂取量は、国際的な基準と比べて多くないと報告されています。つまりもともとあまり食べていない人が神経質になっても、下げしろがありません。
効くのは「毎朝マーガリンを塗っている」「菓子パンを週に何個も食べる」という方です。心当たりがなければ、ここは飛ばしてH2-4に戻ってください。
【誤解②】運動では、LDLはあまり下がりません
2つめの取り違えです。ここは意外に思われるかもしれません。
有酸素運動がLDLコレステロールそのものを下げる効果は、食事の見直しに比べると小さいことが、複数の研究で示されています。「ウォーキングを1年続けたがLDLは変わらなかった」という健診結果は、実はごく普通のことなのです。
では運動は無駄なのか——HDLと中性脂肪には効きます
まったく無駄ではありません。効く相手が違うだけです。
運動がはっきり効くのはHDL(善玉)を上げることと中性脂肪を下げることです。とくに中性脂肪への効果は大きく、数値が高い方ほど動きます。中性脂肪も指摘されている方は、中性脂肪を下げる記事のほうが役に立ちます。
つまり、健診で指摘されたのがLDLだけなら食事、中性脂肪も一緒に高いなら食事+運動という切り分けになります。「とりあえず歩く」が正解になるかどうかは、どの数値が高いかで変わります。
それでも歩いたほうがいい理由
LDLへの直接効果が小さいからといって、運動をやめる理由にはなりません。体重が落ちればLDLも下がりますし(H2-6)、血圧・血糖・睡眠にも効きます。そして脂質異常症で本当に避けたいのは数値そのものではなく、その先の動脈硬化です。運動はそちらに効きます。
ここで正確に言い直します。「運動しても意味がない」ではなく、「運動だけでLDLが下がることを期待して、食事を変えないでいるのが問題」ということです。順番として、まず食事、そのうえで運動。歩き方の具体はウォーキングの記事にあります。
LDLだけでなく、HDLも低いと言われた方へ
健診で「LDLが高い」と「HDLが低い」を同時に指摘される方は少なくありません。この記事はLDLを下げる話だけを扱ってきたので、HDLについても触れておきます。
まず知っておいてほしいのは、HDLを上げる手段は、LDLを下げる手段とほとんど別物だということです。だからH2-4の置き換えを完璧にやっても、HDLはあまり上がりません。ここを混同すると、また「やったのに変わらない」が起こります。
HDLに効くとされるのは、次の3つです。
1つめ:禁煙。喫煙はHDLを下げる方向に働き、やめると上がる方向に戻ることが知られています。HDLが低くて喫煙している方は、ここがいちばん大きい手です。2つめ:有酸素運動。H2-8で「運動はLDLをあまり下げない」と書きましたが、HDLに対しては逆で、運動がはっきり効く数少ない項目です。「歩いても意味がなかった」と感じていた方は、見ていた数値が違っただけかもしれません。3つめ:中性脂肪を下げること。中性脂肪とHDLは連動しやすく、中性脂肪が下がるとHDLが上がることがよくあります。
・LDLが高く、HDLも低い → 食事に加えて運動と禁煙。運動はLDLではなくHDL狙いだと理解して続ける
・LDLが高く、中性脂肪も高い → 中性脂肪を下げる記事を先に。中性脂肪が下がるとHDLもついてくることが多い
LDLとHDLの比(LH比)の考え方や基準値そのものはLDLコレステロールの基準値の記事で扱っています。
どれくらいで下がるか——次の健診までの組み立て
いちばん知りたいところだと思います。
数値が動くまでの期間
食事を変えた場合、血液中の脂質は数週間で変化が出始めます。そのため、変えてから3か月ほど経った時点で測ると、効果が見えやすいとされています。逆に言えば、2週間で測っても意味のある差は出ません。
健診が半年後・1年後という方は、3か月経ったところで一度、途中経過を測ってみるのがおすすめです。「やったことが効いているか」を早く知れると、続ける理由になります。効いていなければ、残り期間で方針を変えられます。
①かかりつけ、または近所の内科を受診する。これがいちばん確実です。「健診でLDLが高いと言われ、食事を変えて3か月経ったので、確認したい」と伝えれば話が通ります。脂質異常症の経過を診るための採血なので、多くの場合は保険診療の範囲で行われます。窓口負担は数千円程度が目安です。受診自体を遠慮する必要はまったくありません。むしろ医師の側は、指摘された数値を放置されるほうを心配しています。
②勤め先の健診機関で追加検査を受ける。企業によっては、指摘項目の再検査を無料または低額で受けられます。健康保険組合の案内を確認してみてください。
③自治体の検診を使う。特定健診の対象年齢であれば、年度内に受けられる回数や条件を自治体の窓口で確認できます。
いずれの場合も、前回の健診結果の用紙を持っていってください。比較ができると、話が一段速く進みます。
3か月やっても下がらなかったら
ここで自分を責めないでください。2つの可能性があります。
ひとつは、下げしろがなかった場合。もともと脂身も菓子パンもあまり食べていなかった方が置き換えをしても、変わる幅はわずかです。この場合、食事の方向をさらに攻めても効果は薄いので、次はH2-10とH2-11に進みます。
もうひとつは、体質や別の要因が関わっている場合。甲状腺の働きが落ちている、腎臓の病気がある、飲んでいる薬の影響——こうした背景でLDLが上がることがあります。これは食事では動かせません。
いずれにしても「3か月やって変わらなければ受診する」と先に決めておいてください。1年後の健診まで自己流で引っ張るのが、いちばんもったいない過ごし方です。
食事では下げられないタイプがあります
短い節ですが、飛ばさないでください。
生まれつきの体質でLDLが非常に高くなる、家族性高コレステロール血症という状態があります。決してまれな病気ではなく、一般に数百人に1人程度の頻度と言われています。
次の3つに当てはまるなら、可能性を考える理由があります。①治療していない状態でLDLが180mg/dL以上ある、②家族(親・きょうだい・子)に若くして心筋梗塞や狭心症になった人がいる、あるいは同じようにLDLが高い人がいる、③アキレス腱が太い、まぶたにやや黄色い盛り上がりがある。
「180未満だが、家族歴がある」場合はどう考えるか
ここは迷いやすいところなので、はっきり書きます。上の3つはすべてそろって初めて意味を持つ条件ではありません。「180に届いていないから自分は違う」と読み飛ばさないでください。
とくに②の家族歴は、単独でも受診して相談する理由になります。親やきょうだいが男性なら55歳未満、女性なら65歳未満で心筋梗塞や狭心症を起こしている——この場合、あなたのLDLが160台であっても、それは「少し高いだけ」ではなくなります。
理由は2つあります。ひとつは、家族歴があること自体が動脈硬化のリスクを押し上げるため、同じ数値でも目標値が低く設定されること。もうひとつは、この体質は薬で下がりにくい場合があり、判断には数値以外の情報(腱の厚みや家族の検査結果)が要るためです。
実務的にはこうしてください。①だけ、②だけ、③だけでも当てはまるなら、次の受診時に「家族に若くして心筋梗塞になった人がいます」と最初に伝える。この一言があるかないかで、医師の見立てが変わります。健診の問診票に書く欄がなかったとしても、口頭で伝えてください。詳しくは家族性高コレステロール血症の記事のセルフチェックへ。
この場合、食事と運動だけで目標まで下げることは現実的ではありません。早く薬による治療を始めるほど、その後の血管の状態を守りやすいことが分かっています。詳しくは家族性高コレステロール血症の記事へ。「まず食事を頑張ってから」と考えて時間を使うべきではないのが、このタイプです。
薬が必要になるラインと、そこまでにやること
「LDLがいくつなら薬なのか」は、よく聞かれます。数値だけでは決まらない、というのが答えです。
目標とする数値は、その人が今後10年で動脈硬化性の病気を起こすリスクがどのくらいあるかによって変わります。判断材料になるのは年齢、性別、喫煙、血圧、血糖、HDLの値、そして過去に心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがあるかです。
だから、同じ「LDL 150」でも、非喫煙で血圧も正常な方と、喫煙していて血圧も高く糖尿病もある方とでは、対応がまったく違います。後者では、より低い数値を目標に設定されます。
実務的にはこう考えてください。①喫煙・高血圧・糖尿病のどれも無く、LDLが少し高いだけなら、まず3〜6か月の食事の見直しから始めるのが一般的です。②これらが重なっているなら、食事と並行して薬の話が出るのが普通です。③すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがあるなら、食事だけで様子を見る段階ではありません。
喫煙している方へ。この記事の内容をすべて実行するより、禁煙のほうが動脈硬化のリスクに対しては大きく効きます。しかも禁煙するとHDL(善玉)が上がる方向に働きます。禁煙の効果が出る順番の記事と禁煙外来の記事を先に読んでください。
薬そのものについて——スタチンとは何か、一生飲み続けるのか、副作用はどうか——は脂質異常症の薬の記事にまとめてあります。「薬は絶対に飲みたくない」と決めてから読むのではなく、読んでから決めてください。
よくある質問(FAQ)
Q 卵は1日何個まで食べていいですか?
A.健康な方については、日本人の食事摂取基準がコレステロールの上限値を設けていないため、一律の個数制限はありません。ただし、すでにLDLが高いと指摘されている方には、動脈硬化の予防を目的としたガイドラインで1日200mg未満という目安が示されており、卵1個におよそ200mg強が含まれます。実務的には「1日2個以上食べているなら1個に戻す」で十分で、そこから先は脂身やバターの見直しのほうが効果が期待できます。
Q LDLコレステロールを1ヶ月で下げることはできますか?
A.血液中の脂質は数週間で変化が出始めるため、1ヶ月でもある程度の変化は起こり得ます。ただし変化の大きさは、もともとの食生活にどれだけ下げしろがあったかによります。脂身や菓子パンを毎日食べていた方が置き換えれば動きますが、もともと控えめだった方では大きく変わりません。健診が迫っているという理由で急ぐより、3か月続けて測るほうが確実です。なお、直前だけ節制しても数か月分の生活は隠せません。
Q LDLが150は「やばい」数値ですか?
A.数値だけでは決まりません。目標値はその人のリスクによって変わり、喫煙・高血圧・糖尿病があるか、過去に心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがあるかで、同じ150でも対応が変わります。どれもない方なら生活の見直しから始めるのが一般的ですが、複数重なっている方では低い目標が設定されます。基準値の考え方はLDLコレステロールの基準値の記事で詳しく扱っています。
Q 納豆や青汁を毎日とればLDLは下がりますか?
A.納豆や海藻、野菜は水溶性食物繊維の供給源になるので、この記事の2位に該当します。ただし「これを足せば下がる」という単品の魔法はありません。食物繊維の効果は1日5〜10gを追加して初めて意味のある量になるので、納豆1パックだけでは足りません。そして何より、脂身やバターを置き換えないまま何かを足しても、効果は打ち消されます。足す前に、置き換えです。
Q お酒はLDLに影響しますか?
A.アルコールが強く影響するのはLDLよりも中性脂肪です。飲酒量が多い方では中性脂肪がはっきり上がります。ただし、酒そのものより「一緒に食べるもの」の影響が大きいことも見逃せません。から揚げ、ソーセージ、チーズ、締めのラーメン——飲みの席は飽和脂肪酸が集中する場面です。LDLの観点では、酒量より肴の中身を見直すほうが効きます。
Q サプリメントで下げることはできますか?
A.食品やサプリメントは医薬品ではないため、病気を治したり数値を確実に下げたりするものとして扱うことはできません。この記事で挙げた方法はいずれも普段の食事の組み立てを変えるもので、サプリメントを前提にしていません。すでに薬を処方されている方は、自己判断でサプリメントに置き換えないでください。飲み合わせが問題になることもあるため、何か試したい場合は主治医か薬剤師に相談してください。
まとめ:減らすべきは卵ではなく、脂身とバターです
LDLを下げる方法はたくさんありますが、効果の大きさは同じではありません。効きにくいものから始めると、いちばん我慢した割にいちばん動かない、という結果になります。
- 1位・飽和脂肪酸の置き換え:常温で固まる脂を液体の脂へ。頻度がいちばん高いもの1つから
- 2位・水溶性食物繊維:1日5〜10g追加。朝食を変えると自動的に続く
- 卵は本丸ではない:ただしLDLが高いと言われている方は1日1個までを目安に
- 運動はLDLより中性脂肪とHDLに効く:まず食事、そのうえで運動
- 3か月やって変わらなければ受診:下げしろがないか、食事では動かない要因がある
今日ひとつだけやるなら、いちばん頻度の高い脂を置き換えてください。毎朝のバターか、週4回のラーメンのスープか、コンビニの唐揚げか。全部変える必要はありません。回数の多いものを1つ、液体の脂に置き換える。それが、いちばん少ない我慢でいちばん数値が動く手です。