みぞおちが痛い。胃が悪いのだろうと思って市販の胃薬を飲んだけれど、はっきりとは良くならない。数日たっても同じところが痛む——40代・50代でよくある相談です。

ただ、みぞおちの痛みを「胃の痛み」と決めてしまうのは、少し早いところがあります。みぞおちの奥には、胃だけでなく胆のう・膵臓・十二指腸が集まっていて、さらにその上には心臓があります。同じ場所が痛んでも、原因はまったく別のことがあります。

とはいえ、いきなり病名を並べられても選べません。この記事では、自分で答えられる2つの質問だけで原因を絞り込む形にしました。

  • 痛みに波がありますか(強くなったり弱くなったりを繰り返すか、ずっと同じ強さか)
  • 食事で変わりますか(空腹で痛むか、食べたあとに痛むか、関係ないか)

この2つで、かなりのところまで絞れます。まずは、それより先に外しておくべきものから始めます。

まず、救急で見るべき3つ

みぞおちの痛みで最初に外しておきたいのは、胃腸の病気ではありません。心筋梗塞です。

意外に思われるかもしれませんが、心臓の発作は「胸が痛い」とは限りません。みぞおちのあたりが痛い、重い、詰まる感じがする、という形で出ることがあります。実際、心筋梗塞で「胃が痛い」と訴えて受診される方は珍しくありません。胃薬を飲んで様子を見ているあいだに時間が過ぎるのが、いちばん避けたい経過です。

この3つがあれば、胃腸の病気として様子を見ないでください冷や汗が出ている(脂汗、顔が青白い、気分が悪い)
痛みがあご・首・左肩・左腕・背中へ広がる
体を動かすと悪化し、休むと少し楽になる(歩く・階段で強まる)

加えて、息苦しさを伴う、20分以上続いて治まらない場合も同じです。迷ったら救急要請(119)をしてください。

特に、糖尿病がある方・喫煙されている方・血圧やコレステロールを指摘されている方は、この可能性を高めに見積もってください。糖尿病があると痛みの感じ方が鈍くなることがあり、「それほど痛くないから胃だろう」という判断が当てになりません。

胸やみぞおちの痛みと心臓の関係は胸が痛いときの見方心筋梗塞の前兆に詳しくまとめてあります。当てはまるものがある方は、この記事の続きより先にそちらを確認してください。

もうひとつ、急ぐもの 突然、板のように硬くなるほどの激痛が起きて、動くと響く、息をするのもつらい——という場合は、潰瘍に穴があいた(穿孔)可能性があります。これも救急です。「だんだん痛くなった」ではなく「何時何分から痛い」と言えるほど突然なのが特徴です。

ここまでに当てはまらなければ、落ち着いて絞り込んでいきます。

みぞおちはどこか——どう示せるかで絞れます

「みぞおち」は、医学的には心窩部(しんかぶ)と呼ばれる場所です。位置はこう探します。

  • 左右の肋骨が中央で合流する、とがった骨の先端を探します(胸骨の下端)
  • その少し下、へその上のくぼんだあたりがみぞおちです

ここを押すと誰でも少し不快なので、「押すと気持ち悪い」だけでは異常のサインになりません。反対側と比べられない場所なので、判断は痛み方のほうで行います。

指1本で示せるか、手のひらでしか示せないか

診察でよく使われる、簡単ですが役に立つ見分け方があります。「どこが痛いですか」と聞かれたときに、どう示すかです。

示し方 示唆されるもの
指1本でピンポイントに示せる お腹の壁(筋肉・神経)のことがあります(詳細
手のひらで「このへん」としか示せない 内臓の痛み。胃・胆のう・膵臓・十二指腸(逆引き表へ

内臓の痛みは、もともと場所がぼやけて感じられる性質があります。「はっきりここ、とは言えない」こと自体が情報になります。

左右のずれも見ておきます

厳密ではありませんが、傾向として次のような偏りがあります。あくまで参考として、痛み方と合わせて使ってください。

  • みぞおちから右寄り・右の肋骨の下——胆のうのことがあります
  • みぞおちの真ん中〜左寄り、背中へ抜ける——膵臓のことがあります
  • みぞおちの中央——胃・十二指腸のことが多い場所です

【逆引き表】波があるか、食事で変わるか

ここがこの記事の中心です。迷ったらこの表に戻ってきてください。

痛み方の特徴 考えられるもの
冷や汗/あご・腕・背中へ広がる/動くと悪化 救急——心臓の可能性(詳細
強い痛みが波のように寄せては引く/脂っこい食事の後・夜間に起きる/右の肋骨の下や右肩へ 胆石詳細
空腹時・夜間や明け方に痛む/何か食べると楽になる 十二指腸潰瘍詳細
食後に痛む・もたれる/少し食べただけで満腹になる 胃潰瘍・機能性ディスペプシア詳細
背中まで抜ける/前かがみになると楽/飲酒の後に強い 膵臓——受診してください(詳細
指1本で示せる/体をひねる・起き上がると響く/押すと再現できる お腹の壁(詳細
ずっと同じ強さで痛む/引く時間がない/食事とも姿勢とも関係しない この形は絞りにくく、自己判断に向きません。2週間を待たず受診してください
げっぷやガスが出ると軽くなる/お腹が張っている ガスによる腹満のことがあります
体重が減っている/黒い便/飲み込みにくい/貧血を指摘された 検査が必要です詳細
「波がある」とはどういうことか 関連して最も多い質問がこれです。ここでいう波とは、「痛みがゼロに近いところまで引いて、また強くなる」ことを指します。ずっと痛くて、その中で強弱があるのとは違います。数十分から数時間の単位で寄せては引くなら、胆石の疝痛発作(せんつうほっさ)が代表的です。

波がある → 胆石を考えます

40代・50代の男性で、みぞおちの強い痛みが波のように来る場合、胆石はまず考えるべきものです。

どういう痛み方か

胆のうは、脂肪の消化を助ける胆汁をためて、食事に合わせて絞り出す袋です。ここに石ができていると、絞り出そうとしたときに石が出口に詰まり、胆のうが強く収縮して痛みが出ます。これが疝痛発作です。

  • 脂っこい食事のあと、30分〜数時間で起きる——揚げ物、焼肉、ラーメン、天ぷら
  • 夜間から明け方に多い
  • 右の肋骨の下や、右の肩・背中へ広がることがあります
  • 数十分から数時間続いて、自然に引くことが多い
  • じっとしていても楽にならず、体をどう動かしても楽な姿勢がない

「一度あったけれど治まったので放っておいた」という方が非常に多いのですが、石は消えていません。また同じことが起きます。

胆石で急ぐサイン発熱がある(胆のう炎・胆管炎の可能性)
白目や皮膚が黄色い(黄疸)
尿が濃い茶色になった/便が白っぽい
・痛みが6時間以上続いて引かない

この組み合わせ、特に発熱+黄疸+痛みがそろうのは急ぐ状態です。その日のうちに受診してください。

誰にできやすいか

胆石は、脂質の代謝と関係があります。中性脂肪が高い方、急激に体重を落とした方、脂肪肝を指摘されている方は、できやすい条件がそろっています。「痩せるために極端な食事制限をした」あとに発作が起きるのは、よくある流れです。

思い当たる方は中性脂肪を下げる方法脂肪肝とはもあわせてご覧ください。胆石そのものは食事では溶けませんが、発作の引き金になる脂っこい食事は減らせます。

見つかったら、必ず手術になるのか

ここは誤解が多いところです。石があるからといって、全員が手術になるわけではありません。

  • 症状がまったくない(無症状胆石)——健診のエコーでたまたま見つかるパターンです。この場合は、多くが経過観察になります。石を持っている方のうち、生涯にわたって発作を起こさない方も相当数います
  • 一度でも発作を起こした——ここから扱いが変わります。一度起きた方は繰り返しやすいため、手術(胆のうを摘出する)が検討されます
  • 胆のう炎・胆管炎を起こした——手術の対象になります

手術は多くが腹腔鏡で行われ、入院期間も以前より短くなっています。「胆のうを取ったら消化できなくなるのでは」と心配される方が多いのですが、胆汁は肝臓で作られ続けます。胆のうは「ためて濃くする袋」なので、なくなっても消化そのものは続きます。手術後しばらく脂っこい食事で下しやすくなる方はいますが、多くは慣れていきます。

大事なのは、発作が一度でもあったなら、治まったからといって終わりにしないことです。次の発作が、発熱や黄疸を伴う重い形で来ることがあります。

空腹で痛み、食べると楽 → 十二指腸潰瘍

この痛み方は、かなり特徴的です。

  • 空腹時に痛む。食事と食事のあいだ、特に夜中から明け方に目が覚めるほど痛むことがあります
  • 何か食べると、30分ほどで楽になる。牛乳やパンでも和らぎます
  • みぞおちの中央からやや右寄り
  • 数週間から数か月の単位で、良くなったり悪くなったりを繰り返す

胃酸が十二指腸の粘膜を刺激することで痛むので、食べ物が入って胃酸が薄まると楽になるという理屈です。「夜中に痛くて起きて、何か食べたら寝られた」という経験がある方は、この形に当てはまります。

原因の多くはピロリ菌と痛み止め

潰瘍の原因は、ほとんどが次の2つです。

  • ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)——胃の中に住みつく細菌です。日本では上の世代ほど感染率が高く、40代・50代は感染している方が一定の割合でいます。検査で分かり、除菌もできます
  • 痛み止め(NSAIDs)——ロキソプロフェンやイブプロフェンなど。腰痛・関節痛・頭痛で常用していると、胃や十二指腸の粘膜を守るしくみが弱くなります(詳細

この2つは自分で心当たりを確認できます。健診でピロリ菌を調べたことがあるか、痛み止めを月にどれくらい飲んでいるか。受診のときに伝えると話が早く進みます。

ピロリ菌の除菌は、1週間の内服です

「除菌」という言葉が大がかりに聞こえますが、実際には薬を1日2回、1週間飲むだけです。抗菌薬2種類と胃酸を抑える薬を組み合わせたもので、多くはまとめて包装されています。

  • 1回目の除菌で成功しない場合、薬を替えて2回目を行います。2回目まで含めれば、多くの方で除菌できます
  • 飲んでいるあいだ、軟便・下痢・味覚の変化が出ることがあります。多くは飲み終われば戻ります
  • 期間中の飲酒は避けるよう指示されるのが一般的です(薬の種類によっては特に強く言われます)
  • 除菌できたかどうかは、薬を終えてから一定期間おいて検査で確認します。ここを受けずに終わってしまう方がいるので、必ず確認まで行ってください

ただし、除菌すれば胃がんにならないわけではありません。リスクは下がりますが、ゼロにはなりません。除菌後も定期的な内視鏡が勧められるのはそのためです。「除菌したからもう安心」ではなく、「リスクを下げたうえで、見続ける」という位置づけになります。

潰瘍で急ぐサイン黒い便(タール便)が出た——海苔の佃煮のような、つやのある黒。出血しているサインです
吐いたものにコーヒーかすのような黒いものが混じる
立ちくらみ・動悸・冷や汗を伴う(出血による貧血)

いずれもその日のうちに受診してください。黒い便については血便が出たときの判断もあわせてご覧ください。

食後に痛む・もたれる → 胃潰瘍と機能性ディスペプシア

十二指腸潰瘍とは逆に、食べたあとに痛む・もたれるのがこちらです。

胃潰瘍

  • 食後30分〜1時間ほどで痛む
  • 食べると楽になるどころか、食べるのが怖くなる
  • 吐き気、食欲の低下を伴うことがあります

原因は十二指腸潰瘍と同じく、ピロリ菌と痛み止めが中心です。ただし胃潰瘍は、まれに胃がんが潰瘍の形をとっていることがあります。そのため、胃潰瘍が疑われるときは内視鏡での確認が勧められます。ここは自己判断で市販薬を続けるべきではないところです。

機能性ディスペプシア——検査で異常がないのに痛む

内視鏡を受けて「異常なし」と言われたのに、みぞおちの痛みやもたれが続く。この状態には名前がついています。機能性ディスペプシアです。

  • 少し食べただけで満腹になる(早期満腹感)
  • 食後にいつまでももたれる
  • みぞおちが焼けるように感じる、痛む
  • 検査では傷も炎症も見つからない

「異常なし」と言われると、気のせいだと言われた気持ちになる方が多いのですが、そうではありません。胃の動きや、胃が刺激を感じ取る感度の問題で、治療の対象になります。詳しくは機能性ディスペプシアにまとめてあります。検査で異常がなかった方は、こちらが行き先です。

ここで知っておいてほしいのは、治療の選択肢がきちんとあるということです。胃酸を抑える薬、胃の動きを整える薬、漢方薬などが使われ、それでも変わらない場合には別の系統の薬が検討されます。「異常がないので様子を見ましょう」で終わってしまったなら、それは相談し直してよい場面です。「症状が続いていて困っている」と伝えてください。

「胃が痛い」と「もたれる」は分けて伝えると通じます 機能性ディスペプシアは、大きく2つのタイプに分けて考えられています。
みぞおちが痛む・焼けるタイプ
食後にもたれる・少しで満腹になるタイプ

どちらが主体かで、選ばれる薬が変わります。「胃の調子が悪い」とだけ伝えると、この区別が伝わりません。どちらが強いかを言葉にしておいてください。

なお、胸やけやすっぱいものが上がってくる感じが主体であれば、逆流性食道炎のほうが近いかもしれません。みぞおちの痛みと胸やけは、隣り合っていて重なります。

背中まで抜ける・前かがみで楽 → 膵臓

この組み合わせは、覚えておく価値があります。

  • みぞおちの痛みが、背中の真ん中あたりまで突き抜ける
  • 前かがみになる、体を丸めると少し楽になる(仰向けで伸ばすと強くなる)
  • 飲酒のあと、脂っこい食事のあとに強くなる
  • 吐き気を伴い、吐いても楽にならない

膵臓は胃の裏側にあるため、痛みが背中側へ抜けます。前かがみで楽になるのは、膵臓への圧が減るためと考えられています。この姿勢の変化は、自分で確認できる数少ない手がかりです。

膵臓が疑われるときは、様子を見ないでください 急性膵炎は、進行すると全身に影響が及ぶことがあります。強い痛みが持続し、背中へ抜け、前かがみで楽になる——この組み合わせがそろったら、その日のうちに受診してください。市販の胃薬では対応できません。

膵臓のトラブルは、お酒の量と強く関係します。週にどれくらい飲んでいるかを数字にしたことがない方は、純アルコール量の考え方で一度計算してみてください。減らす前に、まず数えることが必要です。背中側の痛みについては背中が痛いときの見方でも扱っています。

押すと痛い → お腹の壁の可能性

ここまでは内臓の話でしたが、みぞおちの痛みが内臓ではなく「お腹の壁」から来ていることがあります。筋肉や、肋骨に沿って走る神経です。

見分け方はひとつです。押して、その痛みを再現できるかどうか。

確かめ方(1回だけ) ① 仰向けに寝て、力を抜いた状態で、痛むところを指で軽く押します
② 次に、頭を持ち上げてお腹に力を入れた状態(腹筋に軽く力を入れる)で、同じところを押します

力を入れたときのほうが痛ければ、お腹の壁の可能性が高くなります。内臓が原因なら、腹筋に力を入れると内臓が守られるので、痛みは変わらないか弱くなります。

強く押さないでください。軽く触れる程度で十分です。響いたらすぐにやめてください。

「痛いところを押して、悪化しませんか」——もっともな心配だと思います。次の3つを守れば、この確認で悪くなることはまずありません。

  • 1回だけにする。何度も繰り返さないでください
  • 指の腹で、へこむ程度に軽く。強く押し込む必要はありません
  • 響いた瞬間にやめる。我慢して続けても情報は増えません

目安として、押すのをやめて数十秒で痛みが元に戻るなら、範囲内です。押したあと数分以上ずっと強い痛みが残る場合は、それ自体が受診の理由になります。

この確認を省いてよい方すでに強い痛みがある方——確かめる必要はありません。そのまま受診してください
発熱がある
押した手を離したときに強く響くと分かっている方——腹膜の炎症で見られる反応です。この場合は押す確認をせず受診してください

お腹の壁が原因になりやすいのは、次のような場合です。

  • 体をひねる、起き上がる、咳をすると響く
  • 指1本でピンポイントに場所を示せる
  • 前日に慣れない運動をした、重い物を持った、激しく咳き込んだ
  • 食事とまったく関係がない

この場合は、内臓の検査をしても何も出ません。時間とともに軽くなることが多いものです。ただし「押すと痛い」は胆のうや腹膜の炎症でも起こりうるので、発熱がある・押した手を離したときに強く響く場合は、自己判断せず受診してください。

「がんですか」に答えます

みぞおちが痛いと検索する方の多くが、心のどこかで気にしていることだと思います。先に頻度の話をします。

みぞおちが痛いという症状で受診される方のうち、がんが見つかる割合は高くありません。大多数は、これまで書いてきた潰瘍・胆石・機能性ディスペプシア・お腹の壁です。「痛みが強い=重い病気」でもありません。むしろ胃がんは、初期にはほとんど症状が出ないことのほうが多いという性質があります。痛みの強さは判断材料になりません。

そのうえで、痛み以外に次のものが出ていないかを確認してください。これらは検査を急ぐ理由になります。

痛み以外の、確認すべきサイン体重が意図せず減っている(半年で5%以上、60kgなら3kg以上)
黒い便が出る
飲み込みにくい・つかえる
健診で貧血を指摘された(男性の貧血は、どこかで出血している可能性を考えます)
食欲がはっきり落ちた
血縁者に胃がんの方がいる

男性の貧血は特に重要です。女性と違って生理による失血がないため、貧血を指摘されたら「どこかで少しずつ出血していないか」を考えます。健診で言われたまま放置している方は、そこから調べる価値があります。

結論としては、心配なら内視鏡を1回受けるのがいちばん早いということになります。痛みが続いていて不安が消えないなら、それは検査を受ける十分な理由です。「何もなかった」と分かること自体に意味があります。

40代・50代は、症状がなくても一度は受けておく年齢です

胃がんの検診は、50歳から2年に1回の内視鏡検査が国の指針で勧められています(自治体によっては胃部エックス線検査との選択制です)。つまり50代は、症状の有無にかかわらず対象年齢に入っています。

40代の方でも、次に当てはまるなら早めに受ける理由があります。

  • ピロリ菌を調べたことがない——40代・50代は感染率が下の世代より高い年代です
  • 血縁者に胃がんの方がいる
  • 喫煙している——胃がんのリスク要因のひとつです
  • 塩分の多い食事が続いている
  • 症状が2週間以上続いている

お住まいの自治体の検診と、勤務先の健康診断のオプションと、どちらで受けられるかを確認してみてください。「症状が出てから」ではなく「順番が来たから」受けるほうが、結果的に負担が軽く済みます。そして一度受けておくと、次に同じ痛みが出たときに「前回は何もなかった」という基準ができます。この基準があるかないかで、判断の速さがまったく変わります。

市販薬はどれを、いつまで

受診までのあいだ、市販薬をどう使うかを整理します。

種類と使い分け

種類 向いている場面
H2ブロッカー(胃酸の分泌を抑える) 空腹時に痛む・夜間に痛む。潰瘍タイプの痛み方に
制酸薬(出た胃酸を中和する) 今すぐ和らげたいとき。効き始めは早く、持続は短い
健胃薬・消化酵素薬 食後のもたれ、食べ過ぎたあと
胃粘膜保護薬 荒れている感じがあるとき。他と併用されることが多い

その痛み、痛み止めが原因かもしれません

ここは見落とされがちなので、独立して書きます。

腰痛・膝痛・頭痛で痛み止め(ロキソプロフェンなどのNSAIDs)を常用している方は、それがみぞおちの痛みの原因になっていることがあります。この種類の薬は、胃の粘膜を守るしくみそのものを弱めるためです。飲み薬だけでなく、湿布を大量に使っている場合も同じ経路で影響することがあります。

心当たりがある方へ まず、この2週間で痛み止めを何回飲んだかを数えてください。週に何度も飲んでいるなら、胃薬を足すより先に、そちらを医師に相談するほうが筋が通ります。自己判断で急にやめる必要はありませんが、「痛み止めを飲んでいます」と伝えるかどうかで、処方の内容が変わります。
なお、寝違え膝の痛みで市販薬を使う場面についても、胃への影響を前提に書いています。

では、痛み止めをどうすればいいのか

「原因かもしれない」と言われても、腰や膝が痛いから飲んでいるわけで、単純にやめられません。受診までのあいだ、現実的にできることを順番に書きます。

  • ① まず、回数を数える。この2週間で何回飲んだか。「頓服のつもりが毎日だった」と気づく方がかなりいます。数えるまでは判断材料がありません
  • ② 空腹時に飲むのをやめる。これだけでも負担が変わります。必ず何か食べてから、コップ1杯の水で飲んでください
  • ③ 減らせる分だけ減らす。本当に痛い日だけにする、1日2回を1回にする。ゼロにする必要はありません
  • ④ 飲み薬を湿布や塗り薬に置き換えられないか考える。全身への影響は飲み薬より小さくなります。ただし大量に使えば同じ経路で影響しうるので、枚数は守ってください
  • ⑤ 受診時に「痛み止めを飲んでいます」と必ず伝える。薬の名前と回数まで言えると理想的です。パッケージを持参するのが確実です

やってはいけないのは、黙って飲み続けることと、何も言わずに突然やめることです。前者は原因が分からないまま胃薬だけが増えます。後者は元の痛みが戻って生活が回らなくなります。

医師に伝えると、胃を守る薬を一緒に出す・別の系統の痛み止めに替える・元の痛みそのものの治療を見直す——といった選択肢が出てきます。「痛み止めをやめたくないのですが」と正直に言って構いません。そのうえで組み立て直すのが、実際の診療です。

いつまで使ってよいか

市販の胃薬の目安は「2週間使って改善しなければ受診」です。パッケージにもそう書かれています。

特に注意したいのは、市販薬が効いてしまう場合です。胃酸を抑える薬は、潰瘍でも、がんによる症状でも、いったんは痛みを和らげます。「効いているから大丈夫」は成り立ちません。効いたうえで、飲むのをやめると戻る——という状態が続いているなら、それは調べる理由になります。

受診までの数日、痛みを強めない過ごし方

原因が確定していない段階でも、どの原因であっても痛みを強めやすい条件があります。受診までの数日をしのぐために、ここだけは押さえておいてください。治療ではなく、悪化させないための工夫です。

減らすもの

  • お酒——胃の粘膜を直接荒らし、膵臓にも負担がかかります。原因が何であれ、痛みが続いているあいだは止めてください。ここだけは例外がありません
  • 脂っこい食事——揚げ物、焼肉、ラーメン、洋菓子。胆のうを強く収縮させるので、胆石があると発作の引き金になります
  • 痛み止め(NSAIDs)——飲む必要があるなら食後に。回数を数えておいてください(詳細
  • コーヒー・強い炭酸・香辛料——荒れているときは刺激になります。ただし個人差が大きいので、自分で痛んだものだけ避ければ十分です
  • 喫煙——粘膜の修復を遅らせ、潰瘍が治りにくくなります。禁煙の方法もご覧ください

変えるもの

  • 一度に食べる量を減らし、回数を分ける——空腹で痛むタイプにも、食後に痛むタイプにも効きます。胃を空にしすぎず、いっぱいにもしない状態を保ちます
  • 寝る3時間前から食べない——夜間に痛むタイプ、胸やけを伴うタイプで差が出ます
  • 上半身を少し高くして寝る——胸やけがある場合。枕ではなく、敷布団やマットレスの頭側の下に折った毛布を入れて、上半身ごと傾けるのがコツです。枕だけ高くすると首が曲がるだけで効きません
  • ベルトを緩める——お腹を締めつけると圧が上がります。地味ですが、デスクワークでは効きます
受診が決まっているなら、記録を取ってください 紙でもスマートフォンのメモでも構いません。「日付・時刻/何を食べた後か/痛みの強さ/どれくらい続いたか」の4つだけで十分です。
数日分あると、食事との関係と波の有無が自分でも見えてきます。これは医師が原因を絞るときにそのまま使う情報で、その場で思い出そうとしてもうまく言えないものです。痛くない日の記録にも意味があります——「毎日ではない」ということ自体が手がかりになります。
明るいキッチンのテーブルで、症状の記録をノートに書きとめている40代後半の男性

何日続いたら受診か

時間で線を引きます。

状況 いつ受診するか
冷や汗/あご・腕へ広がる/突然の激痛/黒い便/発熱+黄疸 すぐ(救急を含む)
強い痛みが波で来る/背中へ抜けて前かがみで楽 その日のうち
体重減少・貧血・飲み込みにくさなど、痛み以外のサインがある 今週中
市販薬を2週間使っても変わらない 次の休みに
軽い痛みだが、1か月以上ときどき出る 一度は受診を。繰り返すこと自体が理由になります

いちばん多いのは、いちばん下の行です。「そのうち治る」を何度も繰り返して、年単位で経過している方が少なくありません。痛みが軽くても、繰り返しているなら一度調べる価値があります。

クリニックの待合で、医師に伝えることを書いたノートを見返している40代後半の男性

何科で、実際に何をされるか

消化器内科です

みぞおちの痛みは消化器内科(または内科)が担当します。近くになければ内科で構いません。心臓の可能性を示すサイン(冷や汗・広がる痛み・動くと悪化)があるときだけは、循環器内科か救急が先です。

検査は3つの組み合わせ

  • 血液検査——炎症の程度、肝臓・胆道の数値、膵臓の酵素(アミラーゼ・リパーゼ)、貧血の有無。膵臓と胆道は、まずここで当たりがつきます
  • 腹部エコー(超音波)——胆石を見つけるのはこれです。痛くなく、その場で分かります。胆のう・肝臓・膵臓の一部を見ます
  • 胃カメラ(上部内視鏡)——胃と十二指腸の粘膜を直接見ます。潰瘍・炎症・がんを判断できるのはこれだけです。ピロリ菌の検査も同時にできます

目的が違うので、どれか1つでは足りないことがあります。「胃カメラで異常なしと言われたのに痛い」という場合、胆のうや膵臓はまだ見ていないかもしれません。エコーを受けたか確認してみてください。

胃カメラが不安な方へ

受診をためらう理由の多くがこれなので、実際のところを書きます。

  • 鼻から(経鼻)と口から(経口)が選べる施設が増えています。鼻からのほうが管が細く、舌の根元に触れないため「オエッとなる」反射が起きにくくなります。鼻が狭い方には向かないことがあるので、当日相談になります
  • 眠っているあいだに終える方法(鎮静剤)もあります。ほとんど記憶が残りません。ただしその日は車やバイクの運転ができませんので、来院方法を決めてから予約してください。ここを知らずに車で来て受けられなかった、という方が実際にいます
  • 検査そのものは5〜10分程度です。前日の夜から食事を控え、当日は絶食で行きます
  • 費用は保険適用(3割負担)で、内訳はおおよそ次のとおりです
    • 観察のみ……4,000〜5,000円程度
    • +鎮静剤……1,000円前後が上乗せ
    • +組織を採って調べた(生検)……3,000〜4,000円程度が上乗せ
    • +ピロリ菌の検査……1,000〜2,000円程度が上乗せ
    全部つくと1万円前後、初診料や薬代は別と考えておくと足りなくなりません。生検は「その場で気になるものがあったら採る」ものなので、事前には決まりません。1万円強を用意して行けば、当日困ることはまずありません

予約のときに「鎮静剤を使えますか」「鼻からできますか」と聞いて構いません。施設によって対応が違うので、聞いたうえで選べます。一度受けておくと、次に同じ症状が出たときの判断がまったく変わります。

腹部エコーを受けるときの注意

胆石を探すならエコーですが、食後だと胆のうが縮んでいて見えにくくなります。そのため多くの施設で「絶食で来てください」と言われます。受診の予約を取るときに、当日食べてよいかを必ず確認してください。食べて行ってしまい、検査だけ後日になる——というのは避けられます。

受診のときに伝えるとよいこと痛みに波があるか、ずっと同じか
食事との関係(空腹で痛む/食後に痛む/関係ない)
背中へ抜けるか、前かがみで楽になるか
・いつからか、何日続いているか
痛み止めを飲んでいるか、月に何回か
お酒の量(週に何日、1日にどれくらい)
・体重の変化、便の色
ピロリ菌を調べたことがあるか

この中で特に効くのが、最初の3つです。「波があるか」「食事との関係」「前かがみで楽か」は、医師が原因を絞るときにそのまま使う情報で、しかも本人にしか分かりません。聞かれる前にメモしていくと、検査の順番が変わることがあります。

よくある質問(FAQ)

Q みぞおちが痛いのは、何日続いたら病院に行くべきですか?

A.日数だけでは決まりません。冷や汗を伴う・あごや腕へ広がる・突然の激痛・黒い便・発熱と黄疸がある場合は、日数に関係なくすぐ受診してください。そうしたサインがなければ、市販の胃薬を2週間使って改善しないときが受診の目安です。ただし軽い痛みでも1か月以上ときどき繰り返している場合は、一度受診してください。繰り返していること自体が、調べる理由になります。

Q みぞおちが鈍く痛くて、波があります。これは何ですか?

A.痛みがいったん引いて、また強くなる——という寄せては引く形なら、胆石の発作が代表的です。脂っこい食事のあとや夜間に起きやすく、右の肋骨の下や右肩へ広がることがあります。一方、ずっと痛くてその中で強弱があるだけなら、胃や十二指腸の可能性が高くなります。見分けるポイントは「痛みがほぼゼロになる時間があるか」です。胆石は腹部エコーで確認できます。

Q ストレスでみぞおちが痛くなることはありますか?

A.あります。ただし「ストレスのせい」で片づけないでください。胃の動きや、胃が刺激を感じ取る感度は、緊張状態の影響を受けます。検査で異常がないのに痛む場合は機能性ディスペプシアという状態として扱われ、治療の対象になります。順番としては、まず検査で潰瘍や胆石を外してからです。ストレスが原因かどうかは、それを外したあとに考えることになります。

Q お酒を飲んだ翌日にみぞおちが痛みます。飲み過ぎただけでしょうか?

A.一晩で治まるなら、胃の粘膜の荒れであることが多いところです。ただし「背中まで抜ける」「前かがみになると楽」という特徴があるなら、膵臓を考えてください。これは様子を見るものではありません。また、飲酒のたびに繰り返しているなら、量そのものが体の許容範囲を超えているサインです。純アルコール量で自分の量を数字にしてみてください。

Q ピロリ菌の検査は、痛みがなくても受けたほうがいいですか?

A.40代・50代は感染している方が一定の割合でいる世代です。一度も調べたことがないなら、調べる価値はあります。特に、潰瘍を繰り返している方、血縁者に胃がんの方がいる方は優先度が上がります。除菌には保険が使える条件があり、内視鏡で胃炎などが確認されていることが要件になるため、実際には胃カメラとセットで進むことが多くなります。まずは消化器内科で相談してみてください。

Q げっぷやガスが出ると楽になります。これも胃の病気ですか?

A.出すと軽くなり、しばらくすると戻る——という形なら、ガスによる張りであることが多いところです。早食い、炭酸飲料、無意識に空気を飲み込む癖(呑気症)が背景にあります。ただし「ガスだと思っていたら胆石だった」は実際にあります。見分けるポイントは、ガスを出しても本当に楽になるか、脂っこい食事との関係があるかです。出しても変わらない強い痛みが波で来るなら、ガスではありません。

まとめ:波があるか、食事で変わるか。この2つで大きく絞れます

みぞおちの痛みは原因が多岐にわたりますが、聞かれることは決まっています。自分で答えを用意しておくだけで、絞り込みは進みます。

  • 最初に外すのは心臓:冷や汗/あご・腕・背中へ広がる/動くと悪化。胃薬で様子を見てはいけない組み合わせです
  • 波がある:ゼロに近くまで引いてまた強くなるなら胆石。脂っこい食事のあと・夜間に多く、腹部エコーで分かります
  • 空腹で痛み、食べると楽:十二指腸潰瘍。原因の多くはピロリ菌と痛み止めです
  • 背中へ抜けて前かがみで楽:膵臓。その日のうちに受診してください
  • 痛み以外のサイン:体重減少・黒い便・飲み込みにくさ・貧血。痛みの強さではなく、これで急ぎ方が決まります

そして、痛み止めを常用している方は、それ自体が原因になっている可能性を一度考えてみてください。胃薬を足すより先に解決することがあります。検査で異常がないと言われた方は機能性ディスペプシアへ、胸やけが主体の方は逆流性食道炎へ進んでください。「異常なし」は終わりではなく、次の入口です。