頭が痛くなったら、引き出しの痛み止めを飲む。だいたい効く。効かない日もあるけれど、その日は早く帰って寝る。——この繰り返しを、5年、10年と続けている40代・50代の男性がいます。
そして多くの場合、こう思っています。「病院に行くほどじゃない」「行っても、どうせ同じような薬を出されるだけだろう」。
ここに、ひとつ知られていない事実があります。偏頭痛には、市販の痛み止めとはまったく働き方の違う「専用の薬」があります。そしてそれは、受診しないと手に入りません。
ただし「すぐ病院へ行きましょう」と書くつもりはありません。市販薬で足りている人は、それで構わないからです。問題は、足りていないのに気づかないまま何年も続けてしまうことのほうです。
そこでこの記事では、「市販薬で粘る」か「切り替える」かを、4つの基準ではっきり分けます。あなたが今どちらの段階にいるのかを、読み終わるまでに判断できるように書きました。
なお、そもそも自分の頭痛が偏頭痛なのかどうかが曖昧な方は、先に偏頭痛の記事で「動くと悪化するか」を確認してから戻ってきてください。タイプが違えば、薬の選び方も変わります。
まず、この3つだけ確認してください
細かい話の前に、次の3つに答えてください。この記事はこの3つの答えを使って進みます。
1つめ:市販薬を月に何日飲んでいますか。「痛くなったら飲む」を続けていると、想像より多くなっていることがあります。感覚ではなく、カレンダーを見て直近1か月を数えてください。
2つめ:飲んでから効き始めるまで、どのくらいかかりますか。30分か、1時間か、2時間か。あるいは「効いた気がしないまま、いつのまにか治っている」のか。
3つめ:いつ飲んでいますか。痛くなり始めてすぐか。「もう少し我慢できるかな」と様子を見てからか。それとも、耐えられなくなってからか。
・頭痛に発熱と首の硬さ(あごを胸につけられない)をともなう
・手足のしびれ・力が入らない・ろれつが回らない・物が二重に見える
・頭を打ったあとに始まった
・日を追うごとに強くなっている、朝方や起床時に最も強い
・50歳を過ぎて初めてこの種の頭痛が始まった
【判定表】まだ市販薬の段階か、もう次の段階か
3つの答えを持ったまま、次の表を見てください。4つの基準で、左と右に分かれます。
| 基準 | 市販薬で粘ってよい | 切り替えを考える段階 |
|---|---|---|
| ①頻度 月に何日飲むか |
月2〜3日まで | 月10日以上飲んでいる。または飲む日数が年々増えている |
| ②効き方 飲んだあとどうなるか |
1時間ほどで和らぎ、その日のうちに立て直せる | 飲んでも半日つぶれる。追加で飲むことがある。以前より効かなくなった |
| ③生活への支障 | 能率は落ちるが、予定はこなせる | 仕事や予定を休んだ・中断したことがある(年に数回でも) |
| ④タイミング いつ飲めているか |
始まってすぐ飲めていて、それで足りている | すぐ飲んでいるのに効かない。または吐き気で飲めないことがある |
逆にすべて左側なら、いまのやり方で構いません。ただし①の日数だけは、半年に一度は数え直してください。ここは静かに増えていきます。
この表でいちばん見落とされやすいのが③です。「頭痛くらいで休むなんて」と考える方が多いのですが、年に数回でも仕事に穴があいているなら、それは十分に医療の対象です。頭痛は本人にしか見えないので、周囲も本人も過小評価しがちです。
もうひとつ、この表を「今の自分」だけで見ないでください。大事なのは方向です。3年前と比べて、飲む日数は増えていますか。効きは同じですか。いま左側でも、右へ向かって動いているなら、それは早めに手を打てる状態ということです。逆に何年も変わらず左側で安定しているなら、急ぐ理由はありません。
そして「切り替えを考える段階」と出た方が、次にぶつかるのはたいてい同じ壁です。——「で、何を言えばいいのか分からない」。
市販薬で10年やってきた方は、頭痛について医療者と話した経験がありません。だから受診を決めても、診察室で「頭が痛くて……」としか言えず、「では痛み止めを出しておきますね」で終わる。これが「病院に行っても同じだった」の正体です。
この記事の後半(手順と受診の目安)は、そこを埋めるために書いています。持っていく情報と、最初のひとことを決めておくだけで、同じ病院でも結果が変わります。
市販の痛み止めは、偏頭痛にどう働くのか
痛みの元になる物質をおさえるタイプ
市販されている頭痛薬の多くは、体の中で痛みや炎症を起こす物質(プロスタグランジン)が作られるのをおさえるタイプです。成分名でいうとイブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリンなどがこれにあたります。
もう1つ、アセトアミノフェンという成分があります。こちらは働き方がやや異なり、胃への負担が比較的少ないとされるため、胃が弱い方や、他の薬との兼ね合いで選ばれることがあります。
どちらが優れているという話ではありません。体質、持病、飲み合わせ、そのときの症状によって適したものは変わります。ここは薬剤師に相談するのが確実です。市販薬を買うとき、レジに出す前に「偏頭痛で月に何日くらい飲んでいる」と一言伝えるだけで、返ってくる情報がまったく違います。
「効かない」と感じるとき、薬のせいではないことがあります
市販薬が効かないと感じている方に、まず確認していただきたいことがあります。飲むのが遅くなっていませんか。
偏頭痛の発作中は、胃腸の動きそのものが落ちます。吐き気をともなうのはそのためで、この状態では飲んだ薬が吸収されにくくなります。つまり、痛みがピークに達してから飲むと、薬が届く前に胃の中で足止めされるということが起こります。
「我慢できるところまで我慢してから飲む」——これは薬を大事に使っているつもりで、実際にはいちばん効きにくい飲み方になっています。同じ薬でも、始まってすぐ飲めば十分だったかもしれないのです。
40・50代は「他に飲んでいる薬」が効いてきます
ここは、若い頃と決定的に条件が変わるところです。40代・50代は、頭痛薬以外にも何かを飲んでいる方が一気に増えます。血圧の薬、コレステロールの薬、血糖の薬、胃薬、痛風の薬、そしてサプリメント。
市販の痛み止めの中には、胃に負担がかかりやすいものや、腎臓の働きに影響しうるものがあります。健診でクレアチニンを指摘されたことがある方、胃の調子が悪い方は、そもそも選ぶべきものが変わってきます。
とくに注意していただきたいのが「常用している薬がある人ほど、頭痛薬は自己判断で買っている」という傾向です。血圧の薬は医師に管理されているのに、頭痛薬だけは10年間ドラッグストアで選んでいる——これは珍しくありません。
やることは1つです。次にかかりつけ医を受診するとき、「市販の頭痛薬を月に○日飲んでいます」と伝えてください。血圧や血糖の定期受診のついでで構いません。飲み合わせの確認は、それだけで済みます。お薬手帳に市販薬を書き足しておくのも有効です。
カフェインが入っているものについて
市販の頭痛薬には、カフェインが一緒に配合されているものがあります。カフェインには広がった血管を収縮させる働きがあり、鎮痛成分の働きを助けると考えられています。
ただし注意点があります。カフェインを含む薬を日常的に飲み続けると、飲まない日に頭痛が起きやすくなることが知られています。「頭痛だから飲む → 飲まない日に頭痛 → また飲む」という輪に入りやすいのが、この組み合わせの難しいところです。
月に数回なら問題になりにくいのですが、常用している方は一度、成分表示を見てください。自分が何を毎日入れているのかを把握しておくのは、それだけで価値があります。
偏頭痛専用薬という選択肢があります
痛み止めとは、働き方がまったく違います
トリプタン系と呼ばれる、偏頭痛のために作られた薬があります。医師の処方が必要な薬で、市販されていません。
市販の痛み止めが「痛みの信号をおさえる」方向で働くのに対して、トリプタン系は、偏頭痛が起きている仕組みそのものに働きかけます。広がった血管を収縮させ、痛みを引き起こす物質の放出をおさえる——発作のメカニズムに沿って作られているという点が、根本的に違います。
そのため、市販の痛み止めでは足りなかった方でも、専用薬なら違う結果になることがあります。逆に言えば、「痛み止めが効かないから、自分の頭痛は薬ではどうにもならない」という結論は、早いということです。試していない選択肢が残っています。
近年は、CGRPという物質に関連した新しい薬も登場しており、治療の幅は広がっています。「10年前に病院で言われたこと」が、いまの標準とは限りません。以前に受診してあまり収穫がなかった方も、状況は変わっている可能性があります。
実際に使うとどうなるのか——ここは個人差が大きい部分ですが、一般的な使われ方の枠組みだけお伝えします。
この種の薬は「毎日飲む」ものではなく、発作が起きたときに使うものです。飲み薬のほかに、口の中で溶けるタイプ、点鼻薬、注射など、いくつかの形があります。吐き気で飲み込めない方や、外出先で水が用意できない方には、この形の違いが実務的に効いてきます。「錠剤しかない」と思って選択肢から外していた方は、そこも相談の対象です。
また、1回で足りるかどうか、次にいつ使えるかには決まりがあります。「効かないからもう1錠」を自己判断でやってよい薬ではありません。使える回数には上限があり、それを超えると別の問題(後述の飲みすぎによる頭痛)につながります。ここは処方を受けるときに必ず確認してください。
そして、合わない場合もあります。効き方には個人差があり、同じ系統の中でも複数の種類があるため、最初のものが合わなければ別を試すという進み方をすることもあります。「1回試してダメだった」で終わらせず、そのことを医師に伝えるのが次につながります。
「頭痛が始まってから、まだ軽いうち」が原則
専用薬にも、飲むタイミングの原則があります。ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。
| タイミング | どうなるか |
|---|---|
| 予兆・前兆の段階(まだ頭痛が始まっていない) | 早すぎます。頭痛が始まる前に飲んでも十分に働かないとされています |
| 頭痛が始まった直後・まだ軽いうち | これが原則です。胃腸の動きが落ちる前でもあります |
| 痛みがピークに達してから | 遅すぎます。十分な結果が得られにくくなります |
「前兆が出たらすぐ飲む」は、よくある誤解です。ギザギザした光(閃輝暗点)が見えた段階ではまだ早く、実際に頭が痛くなり始めてからが目安になります。この幅は思ったより狭いので、処方を受けるときに、必ず医師や薬剤師に「いつ飲むか」を確認してください。
処方でしか手に入らない理由
「便利なら市販してくれればいいのに」と思われるかもしれません。ただ、この種の薬は誰でも使えるわけではありません。
血管に働きかける仕組みを持つため、心臓や脳の血管に関わる病気がある方などでは、使えない場合があります。また、他に飲んでいる薬との組み合わせにも注意が必要です。
・心臓の病気を指摘されたことがある(狭心症・心筋梗塞など)、胸の痛みを感じたことがある
・脳梗塞・脳出血・一過性脳虚血発作の既往がある
・高血圧で通院している、または血圧の薬を飲んでいる
・脂質異常症・糖尿病を指摘されている
・喫煙している
・肝臓や腎臓の数値を指摘されたことがある
・他に飲んでいる薬・サプリメントがある(お薬手帳を持参するのが確実)
・前兆(閃輝暗点など)をともなう発作がある
40代・50代は、この中の複数に当てはまる方が珍しくありません。だからこそ、市販薬を自分で選び続けるより、一度きちんと確認してもらう価値があります。
40代・50代は、まさにここが問われる年代です。高血圧や脂質異常症を指摘されている、喫煙している、といった条件が重なってくる。「処方が必要」というのは不便な制度ではなく、その人に使えるかどうかを確かめる工程だと考えてください。診察を受ける意味は、そこにもあります。
予防という考え方——発作を減らす薬もあります
ここまでは「起きた発作をどうするか」の話でした。もう1つ、別の考え方があります。発作そのものの回数を減らす、という方向です。
発作の回数が多い方や、起きるたびに生活に大きな支障が出る方には、毎日または定期的に使って発作を起こりにくくする薬が検討されることがあります。もともと別の目的で使われてきた薬が、この用途で用いられることもあります。
知っておいてほしいのは、この選択肢の存在そのものです。「痛くなったら薬を飲む」以外に手がないと思っている方が非常に多い。月に何度も発作があるなら、そもそも回数を減らす話ができます。
ただし、どの薬が適するか、そもそも予防を始めるべきかは、発作の頻度・生活への影響・持病・他の薬との兼ね合いを見て医師が判断します。ここで大事なのは、受診したときに「月に何回あるか」を数字で言えることです。それがないと、この話は始まりません。
どういう人が対象になりやすいか——目安として、次のような状況が挙げられます。
- 発作の回数が多く、月に何度も生活が止まる
- 発作のたびに仕事や予定に支障が出る(回数が少なくても、影響が大きい場合)
- 発作時の薬だけでは足りていない、または使える回数の上限が近い
- 持病などの事情で、発作時の薬が使いにくい
そして、この方向を選ぶときにあらかじめ知っておくべきことが1つあります。効果の判定に時間がかかります。飲み始めてすぐに変わるものではなく、2〜3か月ほど続けてから、発作の回数が減ったかどうかを振り返るという進み方が一般的です。
ここでも記録が効いてきます。「なんとなく減った気がする」では判定できません。始める前の3か月と、始めたあとの3か月で、月何回だったかを比べる。だからこの記事は、後半で「カレンダーに丸をつける」ことから始めるようお伝えしています。その丸は、受診の日だけでなく、その先の判断材料にもなります。
【要注意】飲む日数が増えていませんか
判定表の①で「月10日以上」に当てはまった方に、必ず知っておいてほしいことがあります。
痛み止めを飲む日数が多い状態が続くと、薬そのものが頭痛を起こしている状態になることがあります。頭痛が増える → 薬を飲む日が増える → さらに頭痛が増える、という輪です。この状態では、薬を増やしても種類を変えても、根本的には改善しません。
「最近、頭痛の日が増えた気がする」と感じて薬を買い足している方は、まずこの可能性を確認してください。詳しい経過と、抜け出すときに何が起きるかは緊張型頭痛の記事で扱っています。自己判断で急にやめると、一時的に悪化する時期があります。必ず医療機関に相談しながら進めてください。
「効かない」の正体は4つに分かれます
「薬が効かない」という一言には、まったく違う4つの状況が混ざっています。どれなのかを見分けないと、次の一手が決まりません。
| 正体 | 心当たり | 次の一手 |
|---|---|---|
| ①遅すぎる | 我慢してから飲んでいる。飲む頃には吐き気がある | タイミングを変えるだけで結果が変わる可能性。まずここを試す |
| ②薬の種類が合っていない | すぐ飲んでいるのに足りない | 専用薬という選択肢がある。受診を検討 |
| ③薬が頭痛を作っている | 月10日以上飲んでいる。飲む日が年々増えた | 薬を変える前の問題。医療機関へ |
| ④そもそも偏頭痛ではない | 動いても悪化しない。締めつけられる感じ | タイプの見直しから。緊張型頭痛の可能性 |
順番に見てください。いきなり②(薬を変える)に飛ぶ方が多いのですが、①は今日から自分で試せて、しかも当たっていることがかなりあります。「次の発作では、始まったと気づいた時点ですぐ飲む」——これを2〜3回試してから、それでも足りなければ②へ進む。この順番のほうが、判断材料が増えます。
そして③に当てはまる場合、①も②も意味がありません。先に③を解決する必要があります。判定表の①をもう一度確認してください。
【手順】受診する日までにやっておく3つ
受診を決めた方へ。この3つをやっておくと、初診の中身がまったく変わります。どれも数分でできます。
1. 飲んだ日をカレンダーに丸をつける
今日から、薬を飲んだ日に丸をつけてください。それだけです。アプリでもカレンダーの余白でも構いません。
受診したとき、医師は必ず「月に何日くらい飲んでいますか」と聞きます。ここで「うーん、週に1回か2回……くらいですかね」と答えるのと、「先月は12日でした」と答えるのとでは、話の進み方が変わります。とくに月10日という線が近い場合、この数字は治療方針そのものを左右します。
過去の分は思い出せないので、受診まで2週間あるなら2週間分でも十分な材料になります。「まだ数え始めたばかりですが、この2週間で5日です」——これで伝わります。
2. 「効くまでの時間」を1回だけ測る
次の発作のとき、薬を飲んだ時刻と、楽になり始めた時刻をメモしてください。1回で構いません。
これがあると、「効かない」の正体(前述の4つ)を医師と一緒に絞り込めます。「飲んで30分で効いたが、その日のうちにまた痛くなった」と「飲んで2時間経っても変わらなかった」では、意味がまったく違います。感覚で「効きません」と伝えると、この区別が伝わりません。
ついでに「痛くなってから何分後に飲んだか」も書いておくと完璧です。ここが遅ければ、それ自体が答えかもしれません。
3. 手持ちの薬の箱を持っていく
いま飲んでいる市販薬を、箱ごと持っていってください。スマホで成分表示を撮っておくのでも構いません。
「市販の頭痛薬を飲んでいます」だけでは、医師には情報になりません。成分が分かって初めて、次に何を提案できるかが決まります。複数の種類を使い分けている方は、全部持っていってください。
あわせて、持病の薬・サプリメントも忘れずに伝えてください。前述のとおり、偏頭痛専用薬は使えない条件があります。お薬手帳があるなら、それがいちばん早い。
受診の目安——何科で、どう伝えるか
何科か——第一選択は脳神経内科です。頭痛外来があればそこが最適です。脳神経外科でも診てもらえます。近くにない場合は、かかりつけの内科でも構いません。必要に応じて紹介してもらえます。
どう伝えるか——最初のひとことで、話の速度が決まります。次のように伝えてください。
——頻度・薬の日数・生活への支障・来院の目的。この4つが最初に伝わると、診察はそこから先に進みます。
「大げさに思われないか」と心配される方がいますが、逆です。月に何度も発作があって仕事に支障が出ている状態は、医療機関から見れば「もっと早く来てよかった人」です。遠慮して過小に伝えると、その分だけ提案される選択肢が狭くなります。
検査については、典型的な偏頭痛で危険なサインがなければ、画像検査をせずに診断されることもあります。「検査をしないのは手抜きではないか」と感じる方がいますが、問診で診断できるのが偏頭痛の特徴です。逆に危険なサインがある場合や、これまでと違うタイプの頭痛の場合は、CTやMRIが行われます。
受診しない理由の本当のところ——「病院に行くほどじゃない」と言う方の多くは、実は別のことを気にしています。時間が取れない。何度も通うことになりそう。仕事を抜けるほどのことなのか判断がつかない。この3つです。
実際のところを整理しておきます。頭痛の診療は問診が中心なので、初診でも特別な検査が不要なら、待ち時間を除けば診察自体はそれほど長くありません。前述の3つの準備をしていけば、なおさら短く済みます。そして通院の頻度は、選ぶ方向によって変わります——発作時の薬だけなら、様子を見ながら間隔をあけていくことが多く、毎週通うようなものではありません。
「1回行ってみて、話が合わなければそれまで」でも構いません。大事なのは、市販薬以外の選択肢が自分に使えるのかどうかを、一度確かめておくことです。使えないと分かればそれで納得できますし、使えるなら、その後の何年かが変わります。10年迷い続けるより、1回行くほうが早い——これがいちばん実務的な結論です。
なお、忙しくて時間が取れないという方は、すでに別の理由で通院しているなら、そのついでに相談するのがいちばん現実的です。血圧や血糖で定期受診しているなら、その場で「実は頭痛で市販薬を月○日飲んでいます」と伝えてください。必要なら適切な科を紹介してもらえますし、飲み合わせの確認もそこで済みます。
よくある質問(FAQ)
Q 市販薬で効いているなら、受診しなくていいですか?
A.足りているなら、それで構いません。この記事は「全員が受診すべき」という立場ではありません。判定表がすべて左側——月2〜3日まで、1時間ほどで和らぐ、予定はこなせる——なら、いまのやり方を変える理由はありません。ただし「月に何日飲んでいるか」だけは、半年に一度数え直してください。ここは自覚のないまま増えます。年に1〜2日ずつ増えていって、5年後に月12日になっていた、という経過は珍しくありません。
Q 痛くなりそうな予感がしたら、先に飲んでおくのはどうですか?
A.気持ちは分かりますが、おすすめできません。理由は2つあります。1つは効きにくいこと——とくに偏頭痛専用薬は、頭痛が始まる前に飲んでも十分に働かないとされています。もう1つは飲む日数が増えることです。「予感」は外れることもあるので、飲まなくてよかった日にも飲むことになります。それが積み重なると、判定表の①に引っかかっていきます。予兆の段階でやるべきなのは、薬ではなく予定と生活の調整です。
Q 仕事中に飲むと眠くなるのが心配です
A.これは受診時に必ず伝えてください。薬によって、また人によって、眠気の出方は変わります。「運転する仕事です」「午後に商談があります」と具体的に伝えると、それを前提にした選択肢が出てきます。逆に伝えなければ、その条件は考慮されません。「眠くなるのが嫌だから飲まずに我慢する」がいちばん避けたい形です。我慢して痛みがピークに達すると、結局その日は使いものにならなくなります。
Q 10年前に受診しましたが、あまり収穫がありませんでした
A.状況が変わっている可能性があります。偏頭痛の治療は、この10年ほどで選択肢が増えました。発作を減らす方向の薬を含め、以前はなかった手段が使えるようになっています。また、当時と今とではあなたの発作の頻度や生活への影響も違っているはずです。「あのとき言われたこと」を、いまの標準だと思わないでください。とくに前回の受診で準備をしていかなかった方は、この記事の3つの準備をしてから行くと、結果が変わることがあります。
Q 吐き気がひどくて、薬を飲んでも吐いてしまいます
A.これは受診の明確な理由になります。判定表の④に該当します。発作中は胃腸の動きが落ちるため、タイミングが遅れるほど飲めなくなる・吸収されなくなるという悪循環に入ります。医療機関では、飲み方の工夫も含めて相談できます。「吐いてしまうので薬が使えない」とあきらめている方が一定数いますが、そこは相談する価値のあるポイントです。受診時には「飲んでも吐いてしまうことがある」と、そのまま伝えてください。
まとめ:薬を増やす前に、種類を変える段階かもしれません
頭痛薬の話になると、多くの方が「どれがいちばん効くか」を探します。ですが実際に結果を分けているのは、そこではありません。
- 4基準で判定する:頻度/効き方/生活への支障/タイミング。右側が1つでもあれば受診の価値
- まずタイミング:我慢してから飲むのは、いちばん効きにくい飲み方。始まってすぐを2〜3回試す
- 専用薬がある:市販の痛み止めとは働き方が違い、受診しないと手に入らない
- 回数を減らす方向もある:発作が多いなら、予防という考え方が使える
- 月10日以上なら別問題:薬の種類を変える前に、飲む日数そのものを見直す
そして、受診すると決めたらカレンダーに丸をつけることから始めてください。薬を飲んだ日に丸をつける、それだけです。この数字ひとつで、初診の中身は変わります。10年市販薬で粘ってきた方ほど、持っていく情報がないまま行って「様子を見ましょう」で終わりがちです。準備は、受診の質そのものです。