後頭部が痛い。ただ、その痛みをどう説明すればいいのか分からない。
検索すると、緊張型頭痛、後頭神経痛、頸性頭痛、そして「危険な頭痛」という言葉が並びます。どれも「後頭部が痛む」と書いてあるので、読み比べても自分がどれなのかは分かりません。
この記事では、病名から入りません。1つのことだけ思い出してください。
——その痛み、1回あたり何秒続きますか。
後頭部の痛みは、持続時間で驚くほどきれいに分かれます。
- 数秒で終わる。ただし何度も繰り返す……神経の痛みです
- 何時間も、鈍く続いている……筋肉の痛みです
- 突然始まって、そのまま強いまま続いている……血管を疑います。ここだけは急ぎます
強さではなく、長さで読む。これが後頭部の痛みでいちばん実用的な切り分けです。順に説明していきます。
まず、この3つだけ確認してください
切り分けに入る前に、待ってはいけないものを外します。次のどれかに当てはまるなら、この先を読まずに救急要請してください。
- 突然、経験したことのない強さの痛みが始まった……「何時何分から」と言えるほど急に始まり、数分以内に最大になった。くも膜下出血で典型的な始まり方です
- 後頭部から首にかけての強い痛みに、めまい・ふらつき・ろれつが回らない・片側の手足が動かしにくいのどれかを伴う……椎骨動脈解離を考えます(詳細)
- 発熱があり、首を前に曲げると硬くて曲がらない・強く痛む……髄膜炎を考えます
首の後ろを通って脳へ向かう血管(椎骨動脈)があるため、後頭部から後頸部にかけての痛みは、他の部位より血管を考える必要があります。
見分ける手がかりは「始まり方」です。じわじわ強くなってきた痛みより、突然始まった痛みのほうが危険です。そして、その痛みが数時間経っても引かないなら、様子を見る対象ではありません。
いずれにも当てはまらない場合は、ここから切り分けに入ります。
【一問】その痛み、何秒続きますか
思い出していただきたいのは、1回の痛みが始まってから消えるまでの長さです。1日のうち何回来るかではありません。
数え方
次に痛みが来たとき、心の中で数を数えてください。「1、2、3……」と数えて、いくつまでいったら消えるか。
すでに何日か続いている方は、「ずっと痛いのか、痛くない時間があるのか」で置き換えてください。痛くない時間がはっきりあって、その合間に鋭い痛みが刺すように来るなら、それは前者です。
数える前に終わってしまう場合
「気づいたときには終わっていて、数えられない」——これはよくある反応です。そして、それ自体が答えになっています。
数え始める前に消えるほど短いなら、それは秒単位です。神経の痛みと考えて構いません。数えられるかどうかを気にする必要はありません。
それでも確かめたい方は、次の言い換えで判定できます。
- 「痛い」と声が出て、すぐ終わるか……声を出し切る前に消えるなら、1〜2秒です
- 痛みが来たとき、手が後頭部に届く前に終わるか……反射的に手をやる前に消えるなら、やはり秒単位です
- 今この瞬間、痛いですか……「今は痛くない」と答えられるなら、持続する痛みではありません。これがいちばん簡単な判定です
逆に、「ずっと痛い。ときどき特に強くなる」なら、ベースに持続する痛みがあります。この場合は筋肉の痛みを土台にして、そこに神経の痛みが乗っている可能性を考えます。
なぜ持続時間で分かれるのか
痛みを出している組織が違うと、痛みの続き方も変わります。
- 神経……刺激が伝わった瞬間だけ痛みます。電気が走るように、鋭く、短い。だから秒単位で終わり、また来る
- 筋肉……血流が落ちて代謝の産物がたまった状態が痛みを出します。たまったものはすぐには消えないので、だらだら続く
- 血管……壁が裂けたり出血したりすると、その刺激は突然始まって、続きます
だから「電気が走るように鋭いが短い」なら神経、「重く締めつけられてずっと続く」なら筋肉、と読めます。
もう1つ、触れて確かめる
持続時間と合わせて、次の2つを確かめてください。
- 髪をとかす、枕に当たる、シャワーが当たる——これだけで痛みますか……本来なら痛いはずのない刺激で痛むなら、神経が過敏になっている状態です
- 耳の後ろから後頭部の出っ張りにかけて、押すと「そこだ」という一点がありますか……神経が出てくる場所に一致することがあります
【逆引き表】持続時間と痛み方で絞り込む
| 痛みの続き方 | 考えられるもの |
|---|---|
| 突然始まり、強いまま続いている/めまい・しびれを伴う | 血管(椎骨動脈解離・くも膜下出血)——救急(詳細) |
| 数秒の電撃痛が、日に何度も繰り返す/髪をとかすと痛い | 後頭神経痛(詳細) |
| 何時間も、重く締めつけられる/夕方に強い | 緊張型頭痛(詳細) |
| 片側で脈打つ/動くと悪化する/吐き気を伴う | 偏頭痛(後頭部に出ることもあります) |
| 首を動かすと変わる/腕にしびれが広がる | 首(頸椎)から来ている(詳細) |
| 片側に帯のような痛み/数日後に発疹 | 帯状疱疹(詳細) |
| 朝起きたときに強く、昼にかけて軽くなる | 睡眠中の要因(詳細) |
複数に当てはまることもあります。とくに後頭神経痛と緊張型頭痛は同時に起きやすく、首の状態が両方の背景になっていることがよくあります。
数秒の電撃痛が繰り返す → 後頭神経痛
後頭部の痛みで、意外と知られていないのがこれです。「第4の頭痛」と呼ばれることもあります。
どこの神経か
首の後ろから頭皮へ向かって、大後頭神経という神経が伸びています。首の骨のあいだから出て、後頭部の筋肉を貫いて、頭皮の感覚を担当しています。
この神経が、通り道のどこかで圧迫されたり引っ張られたりすると、支配している範囲に痛みが走ります。後頭部から頭頂へ、あるいは耳の後ろへ、線を引くように広がるのが特徴です。
典型的な症状
- ピリッ、ズキッという鋭い痛みが数秒……電気が走る、刺されるようだ、と表現されます
- 1日に何度も繰り返す……1回は短いが、日に何十回来ることもあります
- 片側に出ることが多い……ただし両側のこともあります
- 痛みの間も、その範囲がジンジンする……電撃の合間に、鈍い違和感が残ることがあります
- 髪をとかす、枕に頭をつける、帽子をかぶるだけで痛む……これがかなり特徴的です
最後の項目について補足します。本来なら痛いはずのない、軽く触れる程度の刺激で痛みが出る状態を、医学的にはアロディニアと呼びます。神経が過敏になっているサインで、筋肉の痛みでは通常起こりません。後頭神経痛を疑う手がかりとして役立ちます。
スマホが原因、というのは本当か
「後頭神経痛はスマホが原因か」という質問をよく見かけます。正確に言えば、スマホそのものではなく、そのときの首の角度が問題です。
頭は体重の約1割の重さがあります。まっすぐ立っているときは背骨の真上に乗っているので、首の筋肉はさほど働きません。ところが下を向くと、頭が前に張り出し、その分を首の後ろの筋肉が引っ張って支え続けることになります。
大後頭神経は、この首の後ろの筋肉を貫いて出てきます。だから筋肉が硬く縮んだ状態が続くと、神経がその中で締めつけられる。これが「スマホが原因」と言われる仕組みです。
スマホに限らず、ノートパソコンを机に直置きしている、書類仕事で下を向く時間が長い、車の運転が多い——同じことが起きます。
日に何十回も来るとき、仕事はどうするか
後頭神経痛でつらいのは、痛みの強さより回数です。1回は数秒でも、日に何十回来れば集中は途切れ続けます。「そのうち治る」と言われても、今日の会議をどう乗り切るかが問題です。
現実的にできることを挙げます。
- 痛みが出やすい姿勢を、その日は避ける……下を向く時間を減らすだけで、日中の回数が変わります。ノートパソコンの下に本を数冊入れる、書類を立てて置く。即効性があるのはここです
- 首を温めておく……使い捨てカイロを衣類の上から首の後ろに当てておくと、日中の回数が減る方がいます。デスクワーク中でも続けられます
- 髪を触る動作を減らす……触れるだけで痛む状態なら、髪をかき上げる癖や、帽子・ヘッドホンの圧迫が引き金になります
- 周囲に一言だけ伝えておく……「後頭部の神経痛で、ときどき顔をしかめます」と伝えておくと、会議中に表情が変わっても説明が要りません。説明しなくていい状態を作るだけで、消耗がかなり減ります
そして、回数が多い状態は、我慢して過ごすべきものではありません。後述する治療で経過を短くできる可能性があります。「日に何度も来て仕事にならない」は、それ自体が受診の理由として十分です。
他の原因
- 寒さ……首を冷やすと筋肉が縮み、症状が出やすくなります。エアコンの風が首に当たる席、冬場の屋外
- 帯状疱疹……発疹が出る前に痛みだけ先行することがあります(詳細)
- むち打ちなどの外傷後
- まれに、首の骨や神経の周囲に別の原因があることがあります
何時間も締めつけられる → 緊張型頭痛
後頭部の痛みで最も多いのがこちらです。頭全体、あるいは後頭部から首にかけてが、重く締めつけられる感じ。
後頭神経痛との違いは、はっきりしています。
| 後頭神経痛 | 緊張型頭痛 | |
|---|---|---|
| 1回の長さ | 数秒〜数分 | 数時間〜数日 |
| 痛みの質 | 鋭い、電気が走る | 鈍い、締めつけ、重い |
| 触れたとき | 軽く触れるだけで痛む | 強く押すと気持ちいいこともある |
| 範囲 | 線を引くように広がる | 面として広がる |
ただし両方が同時に起きていることは珍しくありません。首の筋肉が硬いという同じ背景から、両方が出るためです。
緊張型頭痛の詳しい見分け方と対処は緊張型頭痛の記事にまとめています。「動くと楽になるか」という別の切り口で、偏頭痛との違いも整理しています。
突然始まって続く激痛 → 血管【最重要】
この記事で最も見落としてほしくない項目です。
椎骨動脈解離
首の骨のなかを通って脳へ向かう血管(椎骨動脈)の壁が裂ける状態です。40〜50代でも起こり、しかも高血圧などの持病がない方にも起こります。
特徴は次のとおりです。
- 突然始まる……後頭部から後頸部にかけての、これまでにない痛み
- 持続する……数分で消える性質のものではありません
- 片側に出ることが多い
- きっかけがあることがある……首を強くひねった、勢いよく振り向いた、首の施術を受けた、激しい運動をした
そして危険なのは、放置すると脳梗塞やくも膜下出血につながりうることです。次の症状が加わったら、迷わず救急要請してください。
- めまい、ふらつき、まっすぐ歩けない
- ろれつが回らない、ものが二重に見える
- 片側の手足が動かしにくい、しびれる
- 飲み込みにくい
くも膜下出血
後頭部が痛むこともあります。特徴は「突然」「これまでに経験したことのない強さ」で、数分以内に痛みが最大になります。嘔吐や意識の低下を伴うことがあります。
ここでも判断材料は強さではなく始まり方です。「だんだん強くなってきた」ではなく「バットで殴られたように急に」と表現されるなら、それが手がかりです。
整体やマッサージで首を強くひねる施術を受けた後、数時間から数日以内に後頭部や後頸部の痛みが出た場合は、椎骨動脈解離の可能性を一度は考えてください。頻度としてはまれですが、実際に報告されています。
「施術で揉み返しが来た」と考えて様子を見るのが、いちばん危ない解釈です。とくにめまいやふらつきを伴うなら、その日のうちに受診してください。
片側に帯のような痛み——帯状疱疹
後頭部にも帯状疱疹は起こります。厄介なのは、発疹が出る数日前から痛みだけが先行することです。
この時期に受診しても原因が分からず、「筋肉の痛みでしょう」「後頭神経痛でしょう」と言われることがあります。実際、症状だけでは区別がつきにくい部分があります。
手がかりは次のとおりです。
- 片側だけ……正中線を越えて反対側には広がりません
- ピリピリ、焼けるようなと表現される痛み
- 皮膚が過敏になる……触れるだけで痛い
- 疲れがたまっていた、体調を崩していた時期に始まった
片側の痛みが数日続いたら、発疹が出ていなくても相談してください。早い段階での対応が、その後の経過に関わることが知られています。とくに顔や頭に出るものは、目や耳に影響することがあるため注意が必要です。
なぜ40・50代で後頭部が痛くなるのか
下を向いている時間が、人生で最も長い年代です
スマホ、ノートパソコン、書類、車の運転。起きている時間の大半で、頭が前に出た姿勢を取っています。
頭の重さは体重の約1割——体重70kgなら約7kgです。これが前に張り出すと、首の後ろの筋肉はその何倍もの力で引っ張り続けることになります。そして大後頭神経は、その筋肉のなかを通っています。
首の骨の変化が始まる年代でもあります
首の骨と骨のあいだのクッションは、40代から水分を失い、薄くなっていきます。骨の縁に出っ張りができることもあります。その結果、神経が出てくる隙間が狭くなることがあります。
これ自体は加齢に伴う変化で、あっても症状が出ない方が大半です。ただし、そこに姿勢や冷えが重なると症状として現れやすくなります。
ストレスで、無意識に力が入り続けている
緊張が続くと、肩から首の筋肉が無意識に縮んだままになります。本人には力を入れている自覚がないため、「凝っている」とすら思っていないことがあります。
思い当たる方はストレスの症状チェックリストもあわせて確認してください。後頭部の痛みだけを追いかけても、背景が変わらなければ繰り返します。
朝起きたときに強いとき
後頭部の痛みが朝いちばん強く、昼にかけて軽くなる——このパターンには、別に考えることがあります。
枕と寝る姿勢
もっとも多いのがこれです。枕が高すぎると、寝ているあいだじゅう首が前に曲がった状態になります。下を向いてスマホを見ているのと、同じことが数時間続くわけです。
目安として、仰向けに寝たときに、立っているときと同じくらいの首の角度になる高さが適しています。ただし、これは自分では測れません。実際に確かめる方法を3つ挙げます。
- あごの向きを見る……仰向けに寝て、あごが天井より少し胸側を向いていれば適正です。あごが上を向いている(のけぞっている)なら低すぎ、あごが胸につきそうなら高すぎます。鏡がなくても、あごの位置は自分の感覚で分かります
- 寝返りで判定する……仰向けから横向きへ、力を入れずに寝返りが打てるかを試してください。頭を持ち上げないと寝返れないなら、高さが合っていません
- 家族に横から見てもらう……仰向けに寝た状態を横から見て、おでことあごを結んだ線が床と平行に近いか。写真を撮ってもらえば自分でも確認できます
買い替える前に、いま使っている枕で調整してみてください。高すぎるならタオルを抜く、あるいは枕を薄いものに替えて下にたたんだタオルを敷き、1枚ずつ減らして合う高さを探します。数百円で済むことが多く、いきなり高価な枕を買う必要はありません。
うつ伏せで寝る方は、首を左右どちらかにひねった状態が数時間続いています。朝の痛みが片側に出るなら、まずここを疑ってください。
朝の頭痛で、他に考えること
枕を変えても朝の痛みが続く場合、次の2つを検討します。
- 睡眠中の呼吸……睡眠時無呼吸があると、朝の頭痛が出ることが知られています。いびきを指摘されている、日中に強い眠気がある方は無呼吸のセルフチェックを確認してください
- 血圧……早朝に血圧が高くなるタイプがあります。家庭で朝の血圧を測っていない方は、一度測ってみる価値があります(早朝高血圧の記事)
朝の頭痛は、後頭部の問題として片づけないほうがいい症状です。
【手順】今日からできる4つ
1. 痛みの長さを記録する
受診したときに、最も役立つ情報です。次の3つだけメモしてください。
- 1回の痛みが何秒/何分続くか
- 1日に何回来るか
- 髪をとかす・枕が当たるだけで痛むか(はい/いいえ)
3つめは、医師が後頭神経痛を考える材料になります。聞かれる前に言えると、診察がかなり早く進みます。
2. 首を温める
後頭部の痛みの多くは、首の後ろの筋肉が硬いことが背景にあります。温めて血流を戻すのが、最も手軽で効果を感じやすい方法です。
蒸しタオルを首の後ろに数分当てる、入浴時に湯船で首まで浸かる、使い捨てカイロを衣類の上から当てる——いずれでも構いません。ただし、突然始まった痛みや、痛みが強くなっている段階では温めないでください。
3. 下を向く時間を、区切る
姿勢を正すより、同じ姿勢を続けないほうが現実的です。
- ノートパソコンの下に台を置く……画面が目の高さに近づくだけで、首の角度が変わります。本を数冊重ねるだけでも十分です
- スマホを目の高さに上げる……肘を体につけて手を上げると、疲れずに保てます
- 30分に1回、天井を見る……5秒で構いません。下を向き続けた首を、逆方向に戻します
ただし、天井を見上げられない場面はあります。会議中、来客中、運転中。座ったまま、誰にも気づかれずにできることを挙げておきます。
- あごを軽く引いて、後頭部を上へ伸ばす……うなずくのではなく、頭のてっぺんを天井から吊られているように、首を長くするイメージです。5秒キープするだけで、前に出ていた頭が戻ります
- 肩を1回、後ろに回す……肩甲骨が動くと、首の後ろの筋肉の緊張も変わります
- 視線だけを上げる……首を動かさず、目線を水平より少し上に置きます。自然と頭の位置が戻ります
- 背もたれから背中を1cm離す……背中が丸まると頭が前に出ます。背中を起こすだけで首の負担が変わります
「30分に1回」と時間で決めると忘れます。会議が変わるたび、電話を切るたび、席を立つたび——すでにある行動に紐づけると続きます。
4. 首を冷やさない
見落とされがちですが、効果があります。エアコンの風が首に当たる席にいないか、確認してください。夏場のオフィスで後頭部の痛みが出る方は、これが背景のことがあります。
薄手のスカーフやタオルを首にかける、風向きを変える、席を移動する——できることから試してください。
やってはいけない3つ
1. 強く揉む・首を鳴らす
硬いから揉みたくなりますが、神経が過敏になっている状態で強い刺激を加えると、かえって症状が長引くことがあります。
そして首を勢いよくひねって鳴らす動作は避けてください。頻度はまれですが、椎骨動脈解離の誘因になりうることが知られています。気持ちよさと引き換えにするリスクとしては、割に合いません。
2. 痛み止めを飲み続ける
市販の痛み止めで和らぐなら使って構いませんが、飲む日数が増えていく状態には注意してください。
月に10日以上、痛み止めを飲む状態が続くと、薬そのものが頭痛を起こすようになることがあります。これは薬剤の使用過多による頭痛として知られていて、「効かないから増やす」が最も悪い方向です。詳しくは頭痛薬の記事にまとめています。
なお、後頭神経痛には一般的な痛み止めが効きにくいことがあります。「飲んでも効かない」場合、量が足りないのではなく、薬の種類が合っていない可能性があります。ここも受診で解決できる部分です。
3. 「肩こりのひどいやつ」で片づける
後頭部の痛みは肩こりと同時に起きることが多く、本人も周囲も「凝っているだけ」と解釈しがちです。
ただし、電撃痛が繰り返す・触れるだけで痛い・突然始まった——このどれかがあるなら、肩こりでは説明がつきません。説明のつかない要素が1つでもあるなら、それが受診の理由になります。
首から来ているとき
後頭部の痛みの背景に、首の骨の問題があることがあります。
手がかり
- 首を動かすと、痛みが変わる……後ろに反らす、痛むほうへ傾けると強くなる
- 腕や手にしびれが広がる
- 後頭部から肩、腕へと痛みがつながっている
- 朝、寝違えたような状態から始まった
手のしびれがある場合は、どの指がしびれるかが手がかりになります。小指がしびれるかどうかで、首由来か手首由来かが絞り込めます。手のしびれの見分け方を参照してください。
肩や肩甲骨まで痛むとき
後頭部だけでなく、肩甲骨のあたりまで痛みが広がっている場合は、首から背中にかけての筋肉の状態をまとめて見たほうが早いことがあります。肩甲骨が痛いときの見方もあわせて確認してください。
様子を見てはいけない後頭部の痛み
すぐに救急要請
- 突然始まった、経験したことのない激痛
- 後頭部・後頸部の強い痛みに、めまい・ふらつき・ろれつが回らない・手足が動かしにくいを伴う
- 発熱があり、首を前に曲げられない
- 意識がもうろうとする、けいれんした
- 嘔吐を繰り返す
その日のうちに受診
- 首の施術や強くひねる動作の後に、後頭部の痛みが出た
- 片側の痛みに、ものが二重に見える・まぶたが下がるを伴う
- 痛みで眠れない
数日以内に受診
- 電撃痛が日に何度も繰り返し、1週間以上続いている
- 髪をとかす・枕が当たるだけで痛む状態が続く
- 片側に帯のような痛みがある(発疹が出ていなくても)
- 手足のしびれや力の入りにくさがある
- 痛み止めを月に10日以上飲んでいる
- 2週間以上、まったく軽くならない
- これまでとは明らかに違う頭痛が始まった
受診の目安——何科で、実際に何をされるか
何科に行けばいいのか
- 電撃痛が繰り返す/頭痛が中心……脳神経外科・神経内科、または頭痛外来
- 首を動かすと変わる/腕のしびれがある……整形外科
- 片側の帯状の痛み……皮膚科
- 判断がつかない……内科でも構いません。必要に応じて回してもらえます
頭痛外来がある地域なら、そこが最も適しています。「頭痛外来」で検索すると、日本頭痛学会の専門医が在籍する医療機関を調べられます。
実際に何をされるか
- 問診……いつから、1回何秒続くか、日に何回か、触れて痛むか、きっかけ。この記事でメモした3つが、そのまま答えになります
- 診察……後頭部を押して痛む場所を確認、首を動かして変化を見る、手足の力や感覚を確認
- 画像……突然始まった痛みや神経症状があればCTやMRIを行います。血管を見る検査(MRA)が追加されることもあります
「画像で異常なし」は、後頭神経痛の否定にはなりません。神経の痛みは画像に写らないことが多く、診断は症状と診察で行われます。異常なしと言われて痛みが続くなら、そのまま伝えてください。
治療でできること
後頭神経痛では、神経に直接麻酔薬を注射する方法(神経ブロック)が行われることがあります。診断と治療を兼ねることがあり、効果が出れば診断の裏づけにもなります。
「後頭部に注射」と聞くと身構える方が多いので、実際のところを書いておきます。
- 刺す場所……後頭部の出っ張りの内側あたり、神経が皮膚の下へ出てくる位置です。頭蓋骨の中に針が入るわけではありません。皮膚のすぐ下で止まります
- 痛みの程度……採血や予防接種と同程度と説明されることが多い処置です。刺す瞬間にチクッとし、薬が入るときに押される感じがあります
- かかる時間……処置そのものは数分です
- 効き方……うまくいけば、その場で痛みが軽くなります。効いたこと自体が「その神経が痛みの発生源だった」という裏づけになるため、診断も兼ねます
1回で終わらないこともあります。効果の持続には個人差があり、間隔をあけて複数回行うこともあります。
あわせて、神経の痛みに使われる薬が処方されることもあります。一般的な痛み止めが効かなかった方でも、種類が変わると効くことがあります。眠気が出る種類もあるため、車の運転をする方は必ず伝えてください。
多くは数日から数週間で軽快しますが、姿勢や首の状態という背景が変わらなければ繰り返します。治療と並行して、今日からできる4つを続けてください。
よくある質問(FAQ)
Q 後頭神経痛と緊張型頭痛は、自分で見分けられますか?
A.目安になる違いが2つあります。1つめは1回の長さで、後頭神経痛は数秒〜数分の電撃痛が繰り返すのに対し、緊張型頭痛は数時間〜数日、鈍く続きます。2つめは触れたときで、後頭神経痛は髪をとかす・枕が当たる程度の刺激で痛みますが、緊張型頭痛では強く押すとむしろ気持ちいいことすらあります。ただし両方が同時に起きていることは珍しくありません。首の筋肉が硬いという同じ背景から、両方が出るためです。
Q 後頭神経痛はどのくらいで治りますか?
A.多くは数日から数週間で軽快します。ただし、姿勢や首の筋肉の状態という背景が変わらなければ繰り返します。判断の基準は「消えたか」ではなく「1日あたりの回数が減る方向に向かっているか」です。回数が減っているなら順調と考えて構いません。1週間以上、日に何度も電撃痛が続いているなら受診してください。神経ブロックなど、経過を短くできる方法があります。
Q 後頭神経痛はスマホが原因ですか?
A.スマホそのものではなく、そのときの首の角度が問題です。下を向くと頭が前に張り出し、その重さを首の後ろの筋肉が引っ張って支え続けることになります。後頭部の神経は、この筋肉を貫いて出てくるため、筋肉が硬く縮んだ状態が続くと締めつけられます。したがってノートパソコンの直置き、書類仕事、車の運転でも同じことが起きます。対策も同じで、画面の高さを上げる/30分に1回だけ天井を見るで首の角度をリセットしてください。
Q 後頭部が痛いとき、脳の病気かどうかはどう判断しますか?
A.判断材料は痛みの強さではなく「始まり方」です。「何時何分から」と言えるほど突然始まり、数分以内に最大になった痛みは、くも膜下出血や椎骨動脈解離を考えます。じわじわ強くなってきた痛みとは性質が違います。加えて、めまい・ふらつき・ろれつが回らない・片側の手足が動かしにくい・ものが二重に見えるのいずれかを伴う場合は、痛みがそれほど強くなくても救急要請の対象です。迷ったら#7119(救急安心センター)で相談できます。
Q 整体やマッサージで首を施術してもらってもいいですか?
A.筋肉の張りが中心なら選択肢になりますが、2つ注意があります。1つは、神経が過敏になっている状態(触れるだけで痛む)で強く揉むと、かえって症状が長引くことがある点。もう1つは、首を勢いよくひねる施術は、まれではありますが椎骨動脈解離の誘因になりうる点です。施術後に後頭部や後頸部の痛みが出た場合、「揉み返し」と考えて様子を見るのが最も危ない解釈です。とくにめまいを伴うなら、その日のうちに受診してください。
Q 市販の痛み止めが効きません。量を増やしてもいいですか?
A.量を増やす方向は避けてください。後頭神経痛には、一般的な痛み止めが効きにくいことがあります。効かないのは量が足りないからではなく、薬の種類が症状に合っていない可能性があるということです。神経の痛みに使われる薬は別にあり、受診すれば選択肢が変わります。加えて、月に10日以上、痛み止めを飲む状態が続くと薬そのものが頭痛を起こすようになることがあります。「効かないから増やす」は、この状態へ最も近づく道です。
まとめ:強さではなく、長さで読んでください
後頭部の痛みは病名が多く、説明もどれも似ているため、読み比べても自分がどれなのか分かりません。先に持続時間で割ってしまうほうが早く進みます。
- まず一問:1回の痛みが何秒続くか。10まで数える前に消えるなら神経、続くなら筋肉
- 髪をとかすと痛い:本来痛いはずのない刺激で痛むのは、神経が過敏になっているサイン
- 急ぐかどうかは始まり方で決まる:突然始まって続く痛みは、強さがそこそこでも受診の理由になる
- 首の施術後の後頭部痛は様子を見ない:「揉み返し」という解釈がいちばん危ない
- 効かないから増やす、をしない:後頭神経痛には一般的な痛み止めが効きにくい。種類の問題です
受診するときは、「1回何秒続くか」「1日に何回来るか」「触れるだけで痛むか」の3つをメモして持っていってください。この3つが揃っていれば、問診はほぼ終わります。
そして、背景にあるのは首の角度と筋肉の状態であることがほとんどです。痛みが引いた後も、画面の高さと下を向く時間だけは見直しておいてください。後頭部の痛みは、繰り返す人と繰り返さない人の差がそこに出ます。