背中の、肩甲骨のあたりが痛い。手が届きそうで届かない場所なので、自分で押すこともできず、姿勢を変えてもすっきりしない。デスクワークの途中で気づいて、そのまま何週間も付き合っている——40代、50代の男性から、こうした訴えはよく聞きます。

ところが「肩甲骨 痛い」で調べると、出てくるのは原因を10個並べた記事ばかりです。肩こり、筋膜性の痛み、神経の問題、頸椎、内臓の病気……名前を眺めても、自分がどれなのかは分かりません。しかも最後に「内臓の病気のこともあります」と書かれていて、かえって不安になる。

この記事では、順番を変えます。原因を並べる前に、まず「動かすと痛みが変わるか」だけで2つに分けてください。これだけで、疑う対象は半分になります。筋肉や神経など体の構造による痛みは体位や動作で変わり、それ以外の原因による痛みは動作と関係なく続く——この違いがはっきりしているからです。

そのうえで、痛む場所と、突然か徐々にかで絞り込んでいきます。

まず、この3つだけ確認してください

細かい話の前に、次の3つだけ確認してください。

1つめ:動かすと痛みは変わりますか。肩を回す、腕を前に伸ばす、背中を丸める、深呼吸をする——こうした動作で痛みが強くなったり弱くなったりするなら「変わる」です。じっと座っていても、横になっても、姿勢を変えても同じ強さで痛むなら「変わらない」です。

「動かすと変わるか」を判定する5つの動作 次の順に1回ずつ行い、痛みが強くなる・弱くなる動作が1つでもあれば「変わる」と判定してください。
① 両肩をすくめて、ストンと落とす(肩甲骨を上下に動かす)
② 両腕を前にまっすぐ伸ばし、背中を丸める(肩甲骨を外へ広げる)
③ 両肘を後ろに引き、肩甲骨を寄せる(肩甲骨を内へ寄せる)
④ 痛む側の腕を、反対側の肩に回して抱える(肩甲骨を外へ引き出す)
⑤ 大きく息を吸って止め、ゆっくり吐く(肋骨を動かす)
5つすべてで痛みの強さがまったく変わらなかった場合が「変わらない」です。判定に迷ったら、痛みが最も弱くなる姿勢が見つかるかどうかで考えてください。楽になる姿勢がどこかにあるなら「変わる」側です。

2つめ:痛むのは左右どちらですか。これは自分の判断のためではなく、受診したときに必ず聞かれる情報です。左右のどちらかによって、医師が確認する順番が変わります。両側なのか、片側だけなのかも合わせて覚えておいてください。

3つめ:突然でしたか、徐々にでしたか。「昨日の朝、起きたら急に」なのか、「1か月くらい前からじわじわ」なのか。突然の発症は筋肉の急な攣縮(けいれん)や神経の問題を、徐々の発症は姿勢や使い方の蓄積を示すことが多くなります。

先に確認:次のいずれかがあるときは、様子を見ずに受診してください ・肩甲骨まわりの痛みに加えて胸の締めつけ・圧迫感、息苦しさ、冷や汗がある
動作と無関係に痛みが続き、じっとしていても和らがない状態が数日以上続いている
発熱をともなう
・腕や手にしびれ・力が入らない感じがある
体重が減ってきている、夜間の痛みで目が覚める
とくに1つめの組み合わせがある場合は、救急要請も含めて検討してください。肩甲骨のあたりの痛みは、まれに心臓に関わる症状として現れることがあります(狭心症の症状で、胸以外に出る痛みについて整理しています)。

【逆引き表】最初に「動かすと変わるか」で2つに分ける

3つの答えを持ったまま、次の表を見てください。縦の分かれ目が「動かすと変わるか」です。

痛み方 痛む場所の細かい位置 考えられるもの
動かすと変わる
(体の構造による痛み)
肩甲骨の内側の縁に沿って、背骨との間 菱形筋(りょうけいきん)など、肩甲骨を背骨側へ引く筋肉の疲労・攣縮
肩甲骨の内側の一点を指で押すと再現できる 筋膜性の痛み(トリガーポイント)。押すと離れた場所にも痛みが響くことがある
肩甲骨の内側〜上側で、腕を動かすと響く 肩甲骨のまわりを走る神経のトラブル
肩甲骨から腕・指先に向かってしびれが伸びる 首の骨(頸椎)から出る神経の圧迫
動かしても変わらない
(体位と無関係に続く)
左側に持続する・胸の症状をともなう 心臓に関わる症状として現れることがある。後述の組み合わせを確認
右側に持続する・食事のあとに強まる 腹部の臓器に関わる症状のことがある。後述
突然「寝違えたように」 肩甲骨の内側、片側だけ 筋肉の急な攣縮、または神経の絞扼(こうやく)。後述

この「動かすと変わるか」という切り分け方は、膝の裏が痛いで使った「伸ばすと痛いか、曲げると痛いか」と同じ考え方です。痛む部位ではなく、どの動きで症状が変わるかを先に決めると、原因の候補は一気に減ります。

表のとおり、動かすと変わる痛みは、そのほとんどが筋肉・筋膜・神経・頸椎です。ここに当てはまるなら、まずは姿勢と使い方の見直しから始めて構いません。

逆に「どんな体勢でも同じように痛む」「痛みが数日以上、途切れずに続いている」場合は、自己対処の対象ではありません。ストレッチやマッサージで様子を見るのではなく、受診して原因を確認してください。

動かすと変わる痛み——筋肉・神経・関節のどれか

ここからは、頻度としてもっとも多い「動かすと変わる」グループを見ていきます。

肩が前に出た姿勢と、肩甲骨の内側の筋肉

肩甲骨の内側の縁に沿って、背骨との間が痛む。デスクワーク中心の40・50代男性でもっとも多いのがこのパターンです。

この場所には、肩甲骨を背骨のほうへ引き寄せる筋肉(菱形筋・僧帽筋の中部など)があります。キーボードに向かって腕を前に出し続けると、肩甲骨は外側へ引っ張られたままになります。その位置で肩甲骨が流れていかないよう、内側の筋肉は一日中ブレーキをかけ続けることになります。

力を出しているのではなく、引っ張られるのを支え続けている——これがこの痛みの本質です。だから「動かしていないのに疲れる」ように感じますし、休憩で立ち上がって肩を回すと一時的に楽になります。

見分け方は簡単です。反対の手を背中に回して、肩甲骨の内側の縁を探ってみてください。指で押すと「ここだ」という一点が見つかり、押している間だけ痛みの質が変わるなら、筋肉・筋膜の痛みである可能性が高くなります。押しても何も変わらない、あるいはそもそも押した場所と痛む場所が一致しないなら、別の原因を考えます。

「寝違えたような突然の痛み」の正体

「朝起きたら、肩甲骨のあたりが寝違えたように痛い」——これは検索でもよく調べられている症状です。

肩甲骨まわりで突然の痛みが起きるとき、多くは筋肉が急に強く縮んだまま戻らなくなった状態です。首の寝違えと同じ機序が、少し下の位置で起きていると考えると分かりやすいかもしれません。

きっかけとしてよくあるのは、次のようなものです。

「寝違えたような」痛みが起きやすい場面不自然な姿勢で長時間眠った(ソファで寝落ちした、腕を体の下に敷いていた)
・前日に普段しない動作をした(引っ越し、庭仕事、久しぶりのゴルフやテニス)
体が冷えた状態で寝た(エアコンの風が直接当たっていた)
強いストレスや疲労が続いていた(筋肉の緊張が抜けにくくなります。自律神経の乱れもこの背景になります)

このタイプの痛みは、数日から2週間ほどで軽くなっていくのが一般的な経過です。動かすと痛みが変わる、押すと痛む一点がある、じっとしていると和らぐ——これらが揃っていれば、まずは無理に動かさず、温めて様子を見て構いません。

ただし、「寝違えたようだ」と思っていても、動作と無関係に痛みが続く場合は話が別です。寝違えであれば、痛みの出ない角度が必ずどこかにあります。どの姿勢でも同じように痛むなら、それは寝違えの痛み方ではありません。

肩甲骨のまわりを走る神経のトラブル

3つめは、神経が原因になっているパターンです。肩甲骨のまわりには、首から出て肩甲骨の内側や上側へ向かう神経がいくつも走っています。これらが筋肉の間で圧迫されたり、引っ張られたりすると、肩甲骨のあたりに痛みが出ます。

筋肉の痛みとの違いとして挙げられるのは、次のような点です。

神経が関わっているときの手がかり ・押しても「ここだ」という一点が見つからないのに痛い
・痛みがジンジン・ピリピリといった質を持つ
・腕を特定の方向へ動かしたときだけ電気が走るように響く
・肩甲骨から腕や指先に向かって症状が伸びる(この場合は首から出る神経の圧迫を疑います)
力が入りにくい感じがともなう

とくにしびれや力の入りにくさをともなう場合は、自己対処の範囲を超えます。ストレッチやマッサージで様子を見るより、整形外科で神経の状態を確認したほうが早く解決します。

動かしても変わらない痛み——体位と無関係に続くとき

ここからは、もう一方のグループです。どんな姿勢をとっても痛みの強さが変わらない、押しても再現できない、じっとしていても和らがない——この場合は、背中の構造以外に原因がある可能性を考えます。

体の内側の臓器の異常が、離れた場所の痛みとして感じられることがあります。これは、内臓からの信号と皮膚・筋肉からの信号が、脊髄の同じ高さで合流するために起こると説明されています。肩甲骨のあたりは、ちょうどその合流点にあたる臓器がいくつかあります。

左右で、受診時に伝えるべき情報が変わります

ここで大事なのは、自分で原因を特定することではありません。左右どちらが痛むかという情報が、医師が確認する順番を変えるということです。

受診時に伝えると診察が早く進む情報 左側:胸の症状(締めつけ、圧迫感、息苦しさ)をともなうか。坂道や階段で強まり、休むと落ち着くという出方をしないか。この出方は、医師がまず確認したい情報のひとつです
右側脂っこい食事のあとに強まらないか、みぞおちや右の肋骨の下にも症状がないか
左右共通:発熱の有無、体重の変化、夜間の痛みで目が覚めるか、痛みが背中を回って前へ抜ける感じがあるか

これらはあくまで「伝えるべき情報」であって、自分で判断する材料ではありません。肩甲骨の痛みの大半は筋肉・筋膜・神経によるもので、こうしたケースはごく一部です。ただ、そのごく一部に時間が勝負を分けるものが含まれているため、判断は医療機関に委ねてください。

40・50代男性で優先して確認したい組み合わせ

この年代の男性で、とくに気に留めておきたい組み合わせがあります。

次の組み合わせがあるときは、様子を見ずに受診してください ・肩甲骨まわりの痛みに胸の締めつけ・圧迫感・息苦しさ・冷や汗のいずれかがともなう
・痛みが体を動かした量に比例して強まり、休むと落ち着く(体勢ではなく「労作」で変わる点が、筋肉の痛みとの違いです)
・健診で血圧・血糖・コレステロールを指摘されている、または喫煙している
・症状が数分から十数分単位で出たり消えたりする
受診先は整形外科ではなく内科・循環器内科が適切です。「背中の肩甲骨のあたりが痛み、胸にも症状がある」と伝えてください。心筋梗塞の前兆狭心症の症状もあわせてご確認ください。

逆に、体をひねると痛みが変わる、押すと痛む一点がある、朝より夕方につらい、休憩で肩を回すと楽になる——これらに当てはまるなら、前章の筋骨格系の話に戻って構いません。

なぜ40・50代で増えるのか——肩甲骨は「浮いている骨」

肩甲骨は背中に置かれているだけの骨です

肩甲骨は、体の中でも特殊な骨です。背骨とも肋骨とも、関節でつながっていません。上腕骨と鎖骨にわずかにつながっているだけで、あとは十数個の筋肉によって背中の上に「置かれている」状態です。

この構造のおかげで、肩甲骨は背中の上を滑るように大きく動けます。腕を大きく回せるのは、肩の関節だけでなく肩甲骨自体が一緒に動いているからです。

ただし裏を返せば、肩甲骨の位置は筋肉のバランスだけで決まっています。骨で固定されていないので、周りの筋肉の緊張が偏れば、肩甲骨はその方向へ引っ張られたまま定着します。肩甲骨まわりの痛みが「押しても場所が特定しにくく、しかも治りにくい」のは、この不安定さが背景にあります。

問題は猫背ではなく「肩が前に出ていること」

姿勢の話になると「猫背を直しましょう」と言われがちですが、肩甲骨の痛みに関しては、もう少し具体的に見たほうが役に立ちます。

問題なのは背中の丸まりそのものより、肩が前に出ていることです。デスクワーク、スマートフォン、車の運転——いずれも腕を体の前で使う姿勢で、その間ずっと肩甲骨は外へ引っ張られています。胸の前側の筋肉は縮んだまま短くなり、肩甲骨の内側の筋肉は伸ばされたまま踏ん張り続けます。

ここが対処のポイントです。痛いのは肩甲骨の内側ですが、短くなって原因を作っているのは胸の前側です。内側だけをほぐしても、胸の前が短いままなら肩甲骨はまた前へ引っ張られます。

その場でできる確認方法があります。壁に背中をつけて立ち、後頭部・背中・お尻・かかとを壁につけてみてください。このとき、両肩の後ろが壁につかない、あるいはつけようとすると胸の前がつっぱるなら、肩が前に出た状態が定着しています。

「肩甲骨はがし」は、痛いときにやっていいのか

肩甲骨の不調を調べると、必ず出てくるのが「肩甲骨はがし」です。肩甲骨と肋骨の間に指を入れるようにして、動きを出す手技を指します。実際に受けたことがある方も多いかもしれません。

痛みがあるときにやっていいのかどうか、判断の目安を整理します。

「肩甲骨はがし」の判断の目安 やってもよさそうな状態:動かすと痛みが変わる/押すと痛む一点がある/夕方に強まり朝は軽い/じっとしていると和らぐ——つまり前章の筋骨格系のパターンに当てはまるとき
やらないほうがよい状態:どんな体勢でも同じように痛む/しびれや力の入りにくさがある/発熱がある/突然の強い痛みが数日以内に起きた/原因がまだ確認できていない
共通の注意痛みを我慢して強く押し込むと、かえって筋肉の緊張が強まることがあります。「痛気持ちいい」を超えて息を止めるほどの強さは行きすぎです

もうひとつ知っておいていただきたいのは、肩甲骨は「はがす」ものではないということです。肩甲骨と肋骨の間には本来すきまがあり、その上を滑るように動くのが正常な状態です。「はがれていないから痛い」のではなく、まわりの筋肉が硬く短くなって、滑りが悪くなっていると考えるほうが実態に近いといえます。

したがって、他人にはがしてもらうことよりも、自分で動かして滑る範囲を保つことのほうが本筋です。次章で具体的な方法をまとめます。

【手順】今日からできる4つ

ここまでで、自分がどちらのグループかがある程度絞れているはずです。以下は「動かすと変わる」グループ向けの内容です。体位と無関係に痛みが続く場合は、まず受診してください。

1. 痛む場所ではなく、胸の前を伸ばす

肩甲骨の内側が痛いとき、多くの方は内側をほぐそうとします。ですが短くなって原因を作っているのは胸の前側です。

やり方はシンプルです。ドアの枠や壁の角に、肘を肩の高さに曲げた状態で前腕をつけ、体を反対側へゆっくりひねります。胸の前が伸びる感覚があれば正解です。片側ずつ行ってください。両腕を同時に開く形(壁の角や柱を使う方法)でもできますが、左右で硬さが違うことが多く、片側ずつのほうが硬い側にきちんと効きます。20〜30秒を左右2回ずつ、痛む側から始めるのではなく、硬いと感じる側を多めに。反動はつけません。

痛む側の肩甲骨の内側は、この時期はあまり強く押さないでください。伸ばされて疲れている筋肉を、さらに刺激することになります。

2. 30分に一度、肩甲骨を「寄せて下げる」

肩甲骨まわりの痛みは、動きの総量よりも同じ姿勢が続いた時間に強く影響されます。

オフィスの窓際でマグカップを持って立ち、席を離れて休憩する40代後半の男性

おすすめは、回すのではなく寄せて下げる動きです。両肩を軽く後ろへ引き、そのまま肩甲骨を下へ落とす。5秒キープして力を抜く。これを3回。所要時間は20秒ほどで、席に座ったままできます。

肩を「すくめて回す」動きは、僧帽筋の上部を使うので、すでに緊張している場所をさらに使うことになります。寄せて下げる動きのほうが、痛む場所である肩甲骨の内側・下側の筋肉を目的どおりに働かせられます。

3. デスクとモニターの高さを変える

ストレッチより効果が長続きするのが、そもそも肩が前に出ない環境を作ることです。

今日変えられる3か所モニターの上端を目の高さに合わせる。低すぎると首が前に落ち、肩甲骨が引き上げられます
肘が90度前後で机に載る高さにする。机が高いと肩がすくみ、低いと前に丸まります。椅子の高さで調整し、足が浮くなら足元に台を置きます
キーボードを体に近づける。腕を前に伸ばす距離が短いほど、肩甲骨が外へ引かれる量は減ります
目の高さに上げたモニターと手前に引いたキーボードで、背筋を伸ばして作業する40代後半の男性

ノートパソコンだけで作業している方は、台に載せて外付けキーボードを使うのがもっとも効果的です。ノートパソコンは画面とキーボードが一体なので、どこに置いても首か肩のどちらかに無理がかかります。

4. 温めるか、冷やすか

入浴後に首と肩へタオルを掛け、腕を組んで立つ40代の男性

肩甲骨まわりの痛みは、ほとんどの場合「温める」で構いません。

温める/冷やすの使い分け 温める:じわじわ続く痛み、朝や長時間の作業後に強まる、押すと硬い——入浴でしっかり温めるのが手軽です。蒸しタオルや温熱シートも有効
冷やすぶつけた・強くひねった直後で、腫れや熱をもっている場合のみ。肩甲骨まわりでこれに当てはまるケースは多くありません
判断に迷ったら:温めて楽になるなら続けて構いません。温めて悪化するようなら中止して受診してください

また、肩甲骨から首にかけての緊張が続くと、頭痛をともなうことがあります。後頭部から首の付け根が重い、夕方に強まるという頭痛は、緊張型頭痛として整理できることが多く、対処も肩甲骨まわりを動かす方向で共通します。

なお、肩甲骨まわりの痛みが続くと、寝返りのたびに目が覚めて睡眠の質が落ちることがあります。夜中に目が覚める原因もあわせて確認しておくと、日中の疲労感の説明がつくことがあります。

どう変わっていけば「順調」なのか

2週間試すと言われても、その間にどう変わるのが正常なのかが分からないと判断できません。目安を示します。

経過の見通し(動かすと変わるタイプの場合) 数日以内:痛みの強さそのものより先に、「楽になる時間帯」が出てくるのが最初の変化です。朝は軽い、休憩のあと30分は楽、といった波が出れば方向は合っています
1週間痛む範囲が狭くなる。「背中全体がだるい」から「肩甲骨の内側のこのあたり」へ絞られてくれば改善の途中です
2週間:痛みの強さが目に見えて下がってくる時期。ただし完全になくなるとは限りません
判断の基準2週間たっても「楽になる時間帯」がまったく出てこない場合は、方向が違うと考えて受診してください。強さが半分にならなくても、波が出ていれば続ける価値があります

逆に、途中で痛む範囲が広がる、しびれが出てきた、夜に強まるようになった——この3つはいずれも経過として一般的ではありません。2週間を待たずに受診してください。

受診の目安——何科で、実際に何をされるか

次のいずれかに当てはまるなら、自己対処を続けるより受診したほうが早く解決します。

受診を検討する目安前章の枠に当てはまる(胸の症状をともなう、労作で変わる)——この場合は当日
どんな体勢でも痛みが変わらない状態が数日以上続いている
しびれ・力の入りにくさがある
・姿勢とストレッチを2週間見直しても、まったく変わらない
・夜間の痛みで目が覚める、体重が減ってきている
・突然の強い痛みが、数日たっても軽くならない

何科か:動かすと痛みが変わり、しびれや胸の症状がないなら整形外科です。胸の症状をともなう、労作で変わる、体位と無関係に続く場合は内科・循環器内科を選んでください。迷ったときは、まず内科で相談して必要なら整形外科へ回してもらうという順番でも構いません。

整骨院・整体は、原因が確認できたあとの施術としては選択肢になりますが、神経の圧迫や内臓に関わる症状を手技だけで判断することはできません。とくに「動かしても変わらない痛み」の段階で通い続けるのは避けてください。

実際に何をされるか:整形外科では、首と肩甲骨の動く範囲を確認し、押して痛む場所を特定し、腕や指の感覚・筋力を調べます。首から出る神経の関与を見る検査を行ったうえで、必要に応じて首や胸のレントゲンを撮ります。神経の圧迫が疑われる場合はMRIが用いられます。内科では、症状の出方の問診に加えて、心電図や血液検査で心臓の関与を確認するのが一般的です。

受診の際は、「動かすと変わるか」「左右どちらか」「突然か徐々にか」「しびれの有無」の4点を伝えられるようにしておくと、診察が早く進みます。この記事の冒頭の3つの確認が、そのまま問診の答えになります。

よくある質問(FAQ)

Q 肩甲骨が痛いのは、何が原因ですか?

A.大きく2つに分かれます。動かすと痛みが変わるなら、肩甲骨の内側の筋肉の疲労や攣縮、筋膜性の痛み、まわりを走る神経のトラブル、首から出る神経の圧迫のいずれかであることがほとんどです。40・50代のデスクワーク中心の男性でもっとも多いのは、腕を前に出し続けることで肩甲骨が外へ引っ張られ、内側の筋肉が支え続けている状態です。一方、どんな体勢でも痛みが変わらず、押しても再現できない場合は、背中の構造以外に原因がある可能性を考えて受診してください。

Q 肩甲骨あたりが痛いのは、どういう病気の可能性がありますか?

A.頻度としては、筋肉・筋膜の痛みと、首から出る神経の圧迫が大半を占めます。ただし体の内側の臓器の異常が、離れた背中の痛みとして感じられることがあり、肩甲骨のあたりはその起こりやすい場所のひとつです。見分ける手がかりは「動作や体位で変わるかどうか」で、変わらない痛みが数日以上続く場合や、胸の症状・発熱・体重減少をともなう場合は受診してください。ここは自己判断ではなく、医療機関で確認すべき部分です。

Q 肩甲骨が痛いときは、どうしたらいいですか?

A.動かすと痛みが変わるタイプなら、まず痛む場所ではなく胸の前側を伸ばしてください。肩甲骨の内側は「伸ばされて疲れている側」なので、そこを強く押すと逆効果になることがあります。あわせて30分に一度、肩甲骨を寄せて下げる動きを3回。さらにモニターの高さとキーボードの位置を見直すと、再発しにくくなります。温めるのは基本的に有効です。2週間試して変わらない場合や、しびれ・胸の症状がある場合は受診してください。

Q 肩甲骨を寝違えたような痛みは、なぜ起きるのですか?

A.多くは、筋肉が急に強く縮んだまま戻らなくなった状態です。首の寝違えと同じことが、少し下の位置で起きていると考えると分かりやすいかもしれません。不自然な姿勢での長時間の睡眠、前日の慣れない作業、体の冷え、強い疲労やストレスが重なったときに起こりやすくなります。数日から2週間ほどで軽くなっていくのが一般的な経過です。ただし、寝違えであれば痛みの出ない角度が必ずどこかにあります。どの姿勢でも同じように痛む場合は、寝違えの痛み方ではないので受診してください。

Q 肩こりと肩甲骨の痛みは違うものですか?

A.重なる部分はありますが、つらい場所と関わる筋肉が違います。一般に肩こりと呼ばれるのは、首の付け根から肩の上面にかけての重だるさで、僧帽筋の上部が主役です。肩甲骨の痛みは、肩甲骨の内側の縁に沿った位置に出ることが多く、菱形筋など肩甲骨を背骨側へ引く筋肉が関わります。対処も変わり、肩こりは肩をすくめて回す動きで楽になることがありますが、肩甲骨の内側の痛みには「寄せて下げる」動きのほうが適しています。なお、腕が途中で止まって上がらない場合は四十肩・五十肩のほうが当てはまります。

Q 肩甲骨はがしをすれば治りますか?

A.動かすと痛みが変わるタイプであれば、一時的に楽になることはあります。ただし肩甲骨は本来「はがす」ものではなく、肋骨の上を滑るように動くのが正常な状態です。滑りが悪くなっている原因は、まわりの筋肉が硬く短くなっていることなので、他人にはがしてもらうより自分で動かして範囲を保つほうが本筋です。また、どんな体勢でも痛みが変わらない場合や、しびれ・発熱・突然の強い痛みがある場合は、原因が確認できるまで手技は避けてください。

まとめ:原因を数える前に、まず2つに分けてください

肩甲骨の痛みは、原因を10個並べられても自分がどれかは分かりません。最初にやるべきは、数を減らすことです。この記事の要点を整理します。

  • まず2分する:動かすと変わるなら筋肉・筋膜・神経・頸椎。変わらないなら自己対処の対象ではない
  • 痛む場所と原因は別:痛いのは肩甲骨の内側でも、短くなっているのは胸の前側
  • 肩甲骨は浮いている骨:骨で固定されておらず、位置は筋肉のバランスだけで決まる
  • 回すより寄せて下げる:すくめて回す動きは、すでに緊張している場所をさらに使う
  • 左右は受診時に必ず伝える:自分で判断する材料ではなく、医師が確認する順番を変える情報

今日できることは、壁に背中をつけて立ち、両肩の後ろが壁につくかを確かめることだけで十分です。つかないなら、原因は肩甲骨の内側ではなく胸の前にあります。肩そのものが上がらない場合は四十肩・五十肩を、膝など他の関節が気になる方は膝が痛いときに読む記事もあわせてご覧ください。