7時間はベッドにいる。寝つきも、そこまで悪くない。夜中に何度も起きるわけでもない。それなのに、朝すっきりしない。
この状態を、多くの方が「睡眠の質が悪い」と表現します。言葉としては合っているのですが、「質」というものは主観でしか語れないため、そこから先に進めなくなります。だから対策も「なんとなく良さそうなこと」を並べることになりがちです。
この記事では、「質」を測れるものに置き換えるところから始めます。
使うのは「布団に入っていた時間」と「実際に眠っていた時間」の差です。8時間ベッドにいて、実際に眠っていたのが6時間なら、2時間は「横になっていただけ」ということになります。この割合を睡眠効率と呼び、睡眠の質を評価するときに実際に使われている指標です。
そして、ここから意外な結論が出てきます。質を上げたければ、布団にいる時間を「増やす」のではなく「減らす」ほうが効くことがあります。長く寝ようとするほど、かえって浅い時間が増えるからです。
なお、この記事は「眠れている人」向けです。寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまう——そもそも眠れていない方は、不眠症を4タイプで切り分ける記事が入口になります。この違いはH2-3で詳しく扱います。
まず、この3つだけ確認してください
ゆうべのことを思い出しながら、3つに答えてください。
1つめ:何時に布団に入って、何時に布団から出ましたか。眠っていた時間ではなく、布団にいた時間です。
2つめ:そのうち、実際に眠っていたのは何時間くらいだと思いますか。正確でなくて構いません。感覚で十分です。
3つめ:起きたとき、「よく寝た」と思えましたか。それとも「もう朝か」と思いましたか。
この場合の割合は6 ÷ 7 = 約86%。これが睡眠効率です。おおむね85%以上あれば、効率としては悪くないとされています。
逆に8時間ベッドにいて、眠れていたのが6時間なら75%。この2時間の差が、朝の「すっきりしない感じ」の正体であることが少なくありません。眠っていない時間が長いほど、眠りは細切れになり、浅くなります。
【一問】布団にいる時間と、眠っている時間の差は?
もう少し実用的に見ていきます。
「眠っていた時間」は、どう見積もるのか
もっともな疑問だと思います。眠っている間のことは、本人には分かりません。ですから正確に測る必要はなく、引き算で見積もります。
布団にいた時間から、次の3つを引いてください。——①寝つくまでにかかった時間(10分か、30分か、1時間か)、②夜中に目が覚めて戻れなかった時間の合計、③朝、目が覚めてから布団を出るまでの時間。
③を忘れる方が多いのですが、ここが意外に大きいのです。6時に目が覚めて、6時半までスマホを見ながら布団にいる——この30分は「眠っていない時間」に入ります。
たとえば23時に布団へ入り、寝つくのに20分、夜中に10分ほど起きて、朝は5時50分に目覚めて6時に出たとします。布団にいた時間は7時間、引くのは20分+10分+10分=40分。眠っていたのは約6時間20分、効率は約90%です。
感覚で構いません。正確さより、「思ったより横になっていただけの時間があった」と気づくことが目的です。
計算はざっくりで構いません
睡眠効率=実際に眠っていた時間 ÷ 布団にいた時間 × 100。分単位の正確さは要りません。むしろ、正確に測ろうとして時計を見るほうが害になります。
| 睡眠効率 | どう受け止めるか |
|---|---|
| 85%以上 | 効率としては良好です。それでも朝つらいなら、眠り以外に原因があります(下の枠へ) |
| 75〜85% | いちばん多い層。H2-6とH2-7で動かせる範囲です |
| 75%未満 | 横になっている時間のほうが目立ちます。H2-7を最優先で |
| そもそも眠れない | 不眠症の記事へ。この記事の対象ではありません |
見るべきは、次の3つです。①眠っている間に、質を落とす何かが起きていないか——いびき、呼吸の乱れ、寝汗。本人には自覚できないので、家族の観察か記録が要ります(H2-11へ)。②そもそも必要な時間が足りていないか——6時間半で足りる人と、7時間半必要な人がいます。③眠り以外の要因——H2-9cで扱います。
いちばん多いのは①です。効率の計算は「布団の中で目覚めていた時間」しか拾えないので、眠ったまま浅くなっている時間は見えません。いびきを指摘されたことがあるなら、そちらを先に確認してください。
【逆説】質を上げたいなら、布団にいる時間を減らす
ここがこの記事でいちばん意外な部分だと思います。
「疲れているから長く寝よう」と考えて、いつもより早く布団に入る。ところが、これは質を下げる方向に働きます。
理由は単純です。人が一晩に眠れる量には限りがあります。その量が6時間半だとして、8時間ベッドにいれば、1時間半は眠れないまま横になっていることになります。そして眠れないまま横になる時間が増えるほど、眠りは細切れになり、浅い時間が増えます。
逆に、布団にいる時間を実際に眠れる時間まで削ると、その中に眠りがぎゅっと詰まります。結果として深い眠りの割合が増え、同じ6時間半でも「よく寝た」と感じられるようになります。
これは睡眠の専門的な治療でも使われている考え方です。やり方はH2-7で扱います。
「眠れない」と「質が悪い」は別の問題です
ここを分けておかないと、対策がかみ合いません。
| 眠れない(不眠) | 質が悪い(この記事) | |
|---|---|---|
| 寝つき | 30分以上かかる | 悪くない |
| 夜中 | 何度も起きて戻れない | 起きても戻れる、または起きない |
| 眠っている時間 | 短い | 足りているはず |
| 本人の訴え | 「眠れない」 | 「寝たのに疲れが残る」 |
| 入口 | 不眠症の記事 | この記事 |
該当するものがあれば、そちらを先に読んでください。——寝つけないなら入眠障害の記事、夜中に目が覚めて戻れないなら中途覚醒の記事、朝早く目覚めてしまうなら早朝覚醒の記事。
そして「時間そのものが足りていない」方も、この記事の対象ではありません。5時間しか眠れていないなら、質の前に量の問題です(睡眠不足の記事)。
40・50代で質が下がる理由——ひとことで
この節は短くします。理由を詳しく知っても、やることは変わらないからです。
ひとことで言えば、年齢とともに深い眠りが減り、浅い眠りの割合が増えます。これは病気ではなく自然な変化です。加えて眠る時間帯そのものが少し前倒しになるため、早く眠くなり早く目が覚めるようになります。
そこに、この年代特有の事情が重なります。ストレスによって交感神経が優位のまま夜を迎える、飲酒の習慣、運動量の減少、そして男性ホルモンの低下。
男性ホルモンと睡眠には、双方向の関係があります。テストステロンは睡眠中に分泌されるため、眠りが浅くなると分泌が減り、それがさらに眠りに影響します(睡眠とテストステロンの記事)。ストレスホルモンの側から見たい方はコルチゾールの記事へ。
①終わらないまま持ち帰る仕事がある。管理職になると、判断が保留のまま夜を迎えます。頭が「片づいていない」状態のままだと、交感神経が下がりません。
②帰宅が遅く、夕食・入浴・就寝が全部後ろにずれる。食べてすぐ寝る、風呂に入ってすぐ寝る——体温も消化も、眠る準備が整っていない状態で布団に入ることになります。
③飲む機会が多い。付き合いの席が週に何度もあると、それだけで後半の眠りが崩れます。
④休日に生活時間がずれる。平日の不足を土日で取り返そうとして、月曜がいちばんつらくなる。
これらは加齢と違って、動かせます。そして動かす順番が、この記事のH2-5以降です。
ただし、ここで知っておいてほしいのは1点だけです。——「若い頃と同じ眠り」を目標にしないこと。達成できない目標を追うと、眠れないこと自体が不安になり、質はさらに下がります。
【効く順】質を上げる4つ
睡眠に良いとされることは無数にありますが、全部やろうとすると続きません。効く順に4つだけ並べます。
| やること | なぜ効くか | 負担 |
|---|---|---|
| 1. 起床時刻を固定し、朝に光を浴びる | 体内時計をその日にリセットする、最も確実な方法 | 小 |
| 2. 布団にいる時間を、眠れる時間に近づける | 眠りが詰まり、深い割合が増える | 中 |
| 3. 体温の落差をつくる | 深部体温が下がるときに眠気が来る | 小 |
| 4. 寝室を暗く・静かに・少し涼しく | 覚醒しにくい環境をつくる | 小(一度やれば終わり) |
1と2は「時刻」の話で、3と4は「条件」の話です。そして効くのは圧倒的に1と2のほうです。枕やマットレスを買い替える前に、こちらを動かしてください。
【1位】起床時刻を固定して、朝に光を浴びる
睡眠の質に対して、いちばん確実に効く一手です。そして、いちばんお金がかかりません。
固定するのは「寝る時刻」ではなく「起きる時刻」
ここを取り違えている方が非常に多いところです。体内時計を整えるうえで基準になるのは起床時刻で、就寝時刻ではありません。
眠くないのに早く布団に入っても、眠れる時刻は変わりません。ところが起きる時刻を一定にすると、そこを起点に体のリズムが揃っていきます。
眠れなかった翌朝こそ、いつもと同じ時刻に起きてください。寝坊して取り返そうとすると、その日の夜がまた乱れます。足りない分は、H2-10で触れる短い昼寝で補います。
起きたら、光を浴びる
起床後に光を浴びることが、体内時計をリセットする合図になります。そしてその約14〜16時間後に、眠気が来るように仕組まれています。つまり朝の行動が、その日の夜の眠気を決めています。
やることは簡単です。起きたらカーテンを開けて、窓際に立つ。目安は5〜15分——晴れていれば5分程度、曇りなら長めに15分ほど見てください。曇りの日でも、屋外や窓辺の明るさは室内照明よりはるかに強いので十分に働きます。ただし窓ガラス越しでは弱まるので、可能なら窓を開けるか、ベランダに出てください。ベランダに出る、朝の通勤で一駅歩く——できればなお良い、という程度の話です。
【2位】布団にいる時間を、眠れる時間に近づける
H2-2で書いた逆説を、実行に移します。
やり方
①まず、実際に眠れている時間を見積もる。直近1週間で、だいたい何時間眠れているか。仮に6時間半だとします。
②布団にいる時間を、そこに30分足した長さに設定する。この例なら7時間。起床時刻が6時なら、布団に入るのは23時です。
③それより早く布団に入らない。眠くなくても、23時までは布団の外にいてください。ここがいちばん大事な部分です。
④よく眠れる日が続いたら、15分ずつ早めていく。いきなり1時間戻さないでください。
問題は「眠くない23時までをどう過ごすか」です
ここが実行のいちばんの壁です。やることがなければ、結局スマホを見て過ごすことになり、それでは意味がありません。
条件は2つだけです。①明るい照明の下にいないこと、②画面を見ないこと。この2つさえ守れば、何をしていても構いません。
現実的な選択肢を挙げます。・翌日の準備をする(着るものを出す、鞄に入れる)。手を動かすので時間が過ぎます。・紙の本や雑誌を読む。暗めの手元灯で。・風呂に入る。H2-8とちょうど噛み合います。・ストレッチや片づけ。激しい運動でなければ問題ありません。・家族と話す。
照明を落としておくのがコツです。21時以降は部屋の明かりを一段暗くしておくと、時間が来たときに自然に眠くなります。逆に、明るいリビングでテレビをつけたまま待つと、23時になっても眠くなりません。
・最初の数日は、日中に眠気が強くなることがあります。これは想定内ですが、運転や危険をともなう作業をする方は、この方法を自己判断で始めないでください。医師に相談してから行ってください
眠気が強い期間に車を運転するのは避けてください。効果が出るまでに1〜2週間かかります。
なぜ効くのか
「布団にいるのに眠れない時間」が減ると、眠りが分断されにくくなります。加えて、ベッドが「眠れない場所」として記憶されるのを防げます。眠れないまま長く横になっていると、ベッドに入っただけで目が冴えるようになることがあるからです。
【3位】体温の落差をつくる
人は、体の内部の温度が下がるときに眠くなります。この落差を意図的に作れば、寝つきと寝入りばなの深さが変わります。
いちばん手軽なのが入浴です。就寝の90分ほど前に、40℃前後の湯に15分程度。いったん体温を上げておくと、その後の下がり方が大きくなります。
直前の熱い風呂は逆効果です。体温が上がったまま布団に入ることになります。時間が取れないときは、シャワーだけでも構いません——足首まで湯につける、手を温めるだけでも多少は働きます。
サウナを利用している方は、就寝までの間隔に気をつけてください(サウナの記事)。
【4位】寝室を暗く、静かに、少し涼しく
一度やれば終わる項目なので、順位は4位ですが着手は簡単です。
光——寝室はできるだけ暗く。豆電球もつけないほうが眠りは深くなります。遮光カーテン、あるいはアイマスクで十分です。家電の待機ランプも、意外に効きます。
音——完全な無音でなくて構いません。突然の音が入らないことのほうが大事です。深夜に車の音や物音で目が覚めるなら、扇風機や空気清浄機の一定の運転音が、その突発音を覆い隠してくれることがあります。
温度——少し涼しいと感じるくらいが適温です。暑いと深部体温が下がらず、眠りが浅くなります。夏はエアコンを一晩つけたままのほうが、途中で切れて暑くなるより眠れます。寝汗が続く方は寝汗の記事もどうぞ。
日中の過ごし方が、その日の夜を決めます
「効く順4つ」に食事と運動を入れていないのは、効かないからではありません。1位と2位のほうが確実に効くので、先にそちらを固めてほしいからです。ここでは日中側を短くまとめます。
運動——夕方までに、汗ばむ程度を
日中に体を動かすと、その夜の深い眠りが増えることが知られています。目安は早歩き30分程度。ただし就寝の3時間前を過ぎてからの激しい運動は、体温と交感神経を上げるので逆効果になります。夕方までに済ませてください。
カフェイン——15時以降はやめる
カフェインは体から抜けるのに時間がかかります。個人差はありますが、半分に減るまでにおよそ4〜6時間。15時に飲んだコーヒーは、23時にもまだ体内に残っている計算になります。「飲んでも眠れる」という方でも、眠りの深さには影響しています。
15時以降は、カフェインレスかお茶(ほうじ茶・麦茶)に替えてください。夕方の眠気をコーヒーでしのいでいる方は、それが翌日の眠気を作っている可能性があります。
食事——就寝3時間前までに
消化にエネルギーを使っている間は、深い眠りに入りにくくなります。帰宅が遅くて難しい方は、夕方に軽く食べて、帰宅後は量を減らす——この分割が現実的です。
「朝のだるさ」が本題という方へ
ここまで眠りの話をしてきましたが、多くの方の本当の目的は「朝のだるさが取れること」だと思います。そして朝のだるさは、睡眠だけで決まっているわけではありません。
睡眠を整えても朝がだるい場合、次の3つが関わっていることがあります。
①起床直後のだるさは、誰にでもあります。目覚めてから頭がはっきりするまでには時間がかかり、30分ほどかかるのは正常です。起きた瞬間の感覚で「今日はだめだ」と判断しないでください。光を浴びて動き出したあとで、もう一度確かめてみてください。
②前日の疲れが抜けていない。睡眠は回復の手段のひとつであって、すべてではありません。そもそもの負荷が大きければ、一晩では戻りません。
③眠り以外の要因。貧血、甲状腺の働き、血糖の乱高下、気分の問題——いずれも「よく眠っているのに疲れが取れない」という形で出ます。
眠りは足りているはずなのに疲れが残るという方は、寝ても疲れが取れない記事のほうが本題に近いかもしれません。日中の疲れそのものを扱いたい方は疲れが取れない原因の記事へ。
やってはいけない3つ
足すことより、やめることのほうが早く効く場合があります。
1. 寝酒
この年代でいちばん多く、いちばん質を下げているのがこれです。寝つきは良くなるので効いているように感じますが、アルコールが分解される過程で眠りが浅くなり、夜の後半の質が落ちます。
しかも量が増えていくのが問題です。眠るために必要な量は、次第に増えていきます。詳しくは寝酒の記事へ。
2. 週末の寝だめ
平日の不足を土日に取り返そうとすると、起床時刻が2時間以上ずれます。これは体内時計にとって、時差のある場所へ移動したのと似た負担になります。結果として日曜の夜に寝つけず、月曜の朝がいちばんつらくなります。
取り返すなら、起床時刻をずらすのではなく昼寝で。ずれても1時間以内に抑えてください。
3. 布団の中でのスマホ
画面の明るさも問題ですが、それ以上に「頭が起きてしまうこと」が効きます。メールを1通見ただけで、翌日の段取りを考え始めてしまいます。
意志で我慢するより、置き場所を変えてください。寝室の外か、手の届かない場所へ。目覚まし代わりに使っているなら、目覚まし時計を買うほうが早いです。
なお昼寝は敵ではありません。20分以内・15時より前なら、日中の眠気を補いつつ夜に影響しません(昼寝の記事)。
2週間やっても変わらないときに疑うこと
H2-6からH2-10までを2週間続けても朝がつらいなら、背景に別の要因があります。
| 心当たり | 考えられること | 行き先 |
|---|---|---|
| いびきを指摘される・日中に強い眠気 | 睡眠時無呼吸。眠っていても呼吸で覚醒している | 無呼吸のセルフチェック |
| 寝ても疲れが残る感じが続く | 睡眠以外の要因が絡んでいることがあります | 寝ても疲れが取れない記事 |
| 寝汗で目が覚める・着替えるほど | いくつかの原因が考えられます | 寝汗の記事 |
| 気力が出ない・楽しめない | 気分の問題が背景にあることがあります | うつ病の記事 |
いちばん上の行は、とくに見落とされます。睡眠時無呼吸があると、本人は眠っているつもりでも、呼吸の乱れで一晩に何度も浅い覚醒が起きています。この場合、環境や習慣をどれだけ整えても質は上がりません。いびきを指摘されたことがあるなら、そちらを先に確認してください。
受診の目安
次に当てはまるなら、生活の工夫で押し切らないでください。
・家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と言われた
・眠りの問題が3か月以上続いている
・気分の落ち込みが続き、これまで楽しめたことが楽しめない
・眠るために飲酒量が増えている
・脚がむずむずして眠れない
診療科は、いびきや日中の眠気があるなら呼吸器内科・睡眠外来、気分の落ち込みをともなうなら精神科・心療内科。決められないときは、かかりつけ内科で構いません。
2週間の記録があると話が早く進みます。記録するのは「布団に入った時刻・布団を出た時刻・夜中に起きたか・前日に飲んだか」の4項目だけ。正確さより、2週間続いていることのほうが役に立ちます。
この4項目が、そのまま睡眠効率の材料になります。布団に入った時刻と出た時刻の差が「布団にいた時間」、そこから寝つきと夜中と朝の分を引けば「眠っていた時間」です。受診のためだけでなく、自分の変化を確かめるためにも使えます。
そして受診を先延ばしにしないでください。「この程度で行っていいのか」と迷う方が多いのですが、睡眠の問題は、放置した年数が長いほど元に戻りにくくなります。とくに眠るための飲酒が習慣になっている場合は、早いほうが確実に楽です。受診しても、いきなり睡眠薬が出るわけではありません。まず背景に別の原因がないかを確認するのが順序です。
よくある質問(FAQ)
Q 睡眠時間は何時間が理想ですか?
A.必要な時間には個人差があり、「何時間が正解」と一律には決まりません。目安として成人では6〜8時間程度とされることが多いのですが、大事なのは時間そのものより、日中に強い眠気がなく過ごせているかどうかです。そして年齢とともに必要な時間は少しずつ短くなります。若い頃と同じ時間眠れないことを問題視すると、かえって眠りが浅くなります。
Q 枕やマットレスを買い替えれば、質は上がりますか?
A.合わない寝具で首や腰が痛むなら替える価値はありますが、この記事の1位と2位(起床時刻の固定と、布団にいる時間の調整)より効くことは、まずありません。順番としては、お金のかからない1位と2位を2週間試してからにしてください。それでも痛みで目が覚めるなら、寝具の問題として考える段階です。
Q スマートウォッチの「深い睡眠」の数値は信じていいですか?
A.絶対値はあまり気にしなくて構いません。体の動きや脈拍から推定した値で、医療機関で行う検査とは別物です。使うなら、同じ機種で測り続けたときの推移を見てください。むしろ注意したいのは、数値が悪い日に「今日は眠れていない」と意識してしまうことです。それ自体が次の夜の眠りを妨げます。数値より、日中に眠気なく過ごせているかで判断してください。
Q 布団にいる時間を減らすなんて、余計に眠れなくなりませんか?
A.最初の数日は日中の眠気が強くなることがありますが、それが狙いでもあります。眠気がしっかりたまることで、布団に入ってから眠るまでが短くなり、眠りが詰まって深くなります。ただし布団にいる時間を5時間半より短くしないでください。また運転や危険をともなう作業をする方は、自己判断で始めず医師に相談してください。効果が出るまでには1〜2週間かかります。
Q 寝る前のストレッチやアロマは効きますか?
A.気持ちが落ち着いて入眠しやすくなるなら、続けて構いません。ただし、これらは「眠る前の合図」として働く面が大きく、この記事の1位・2位を置き換えるものではありません。順番として、まず起床時刻を固定し、布団にいる時間を調整する。そのうえで、自分に合う入眠前の習慣を足してください。逆にすると、効かないものに時間を使うことになります。
Q サプリメントで睡眠の質は上がりますか?
A.食品やサプリメントは医薬品ではないため、不眠を治すものとして扱うことはできません。この記事で挙げた方法も、生活と行動の組み立てを変えることを前提にしています。すでに薬を処方されている方は、自己判断でサプリメントを追加しないでください。飲み合わせが問題になることもあるため、試したい場合は主治医か薬剤師に相談してください。
まとめ:長く寝ようとするほど、質は下がります
「質」は主観でしか語れない言葉ですが、布団にいる時間と実際に眠っている時間の差なら測れます。そしてその差こそが、朝のすっきりしない感じの正体であることが少なくありません。
- まず自分の睡眠効率を出す:眠った時間 ÷ 布団にいた時間。85%が目安
- 「眠れない」なら別の記事へ:この記事は眠れているのに回復しない人向け
- 1位は起床時刻の固定と朝の光:寝る時刻ではなく起きる時刻。眠れなかった翌朝ほど固定する
- 2位は布団にいる時間を減らすこと:長く寝ようとするほど眠りは細切れになる
- 効率が85%以上なら別の原因:いびき・呼吸の乱れなど、眠っている間に起きていることを疑う
- 寝具より先に時刻:枕を買い替える前に、1位と2位を2週間
そして期間の目安も書いておきます。1位と2位を実行して、変化を感じるまでにはおおむね2週間かかります。最初の数日はむしろ眠気が強くなることもあり、そこでやめてしまう方が少なくありません。2週間続けて、それでも変わらなければ別の要因を疑う——この区切りを先に決めておいてください。
今夜ひとつだけやるなら、明日の起床時刻を決めて、目覚ましをかけてください。眠れても眠れなくても、その時刻に起きる。質を上げる作業は、夜ではなく朝から始まります。