膝の内側が痛い。階段を降りるとき、椅子から立ち上がるとき、走り出して数分してから——決まった場面でズキッとくる。

膝の内側が痛むと、多くの方が半月板かすり減り(変形性膝関節症)を心配します。ところが40〜50代でこの場所が痛むとき、もっと表層にある腱の炎症が原因のことがあります。鵞足炎(がそくえん)です。

そして、この2つは指1本で押す場所を変えるだけで、かなりの部分まで切り分けられます。

押して痛い場所は、関節の線より下ですか

まず、膝の関節の隙間(関節の線)を探します。

膝を90度に曲げて座り、膝の内側を指でなぞってください。お皿の下あたりから内側へ向かうと、骨と骨のあいだにわずかなくぼみがあります。そこが関節の線です。

そのうえで、2か所を順番に押してみてください。

A:関節の線より2〜5cm下B:関節の線そのもの
ここが痛いなら鵞足炎半月板や軟骨の問題
痛みの出方階段を降りる・立ち上がる・走り始めひねる・深く曲げる・体重をかける
引っかかりないあることがある(ロッキング)
腫れ・水ほとんどないたまることがある
きっかけ運動量が急に増えた・自転車・階段が増えたひねった・急な動作・年単位の経過
朝のこわばりない変形性膝関節症ではある

この「2〜5cm下」という距離が決め手です。鵞足炎の痛みは、関節の中ではなく、その少し下にある腱の付着部で起きています。だから押す場所を数センチ変えるだけで、痛みの強さがはっきり変わります。

探し方をもう少し具体的に。椅子に座って膝を曲げ、膝のお皿の下端から、内側に指をずらしていきます。骨のふくらみ(すねの内側の上のほう)に当たったら、その上あたりを指の腹で押してください。
ピンポイントで「ここだ」という痛みが出れば、鵞足炎の可能性が高くなります。範囲は500円玉くらいの狭さで、そこを外すと痛くありません。この「狭さ」も手がかりです。
次のどれかがあるなら、自己判断せず整形外科へ行ってください。
・膝が完全に伸びない、または曲がらない(引っかかって動かない)
・膝が腫れて熱を持っている
・体重をかけられないほど痛い
・ひねった、ぶつけたなど、はっきりしたけがのあとから
・発熱を伴う
1つめは半月板が挟まっている状態、2つめと5つめは感染や強い炎症の可能性があります。いずれも押す位置で判断する段階ではありません。

膝の内側で起きるものは、ほかに3つあります

関節の線より下が痛いからといって、すべてが鵞足炎とはかぎりません。この年代で膝の内側が痛むとき、候補は主に4つです。

疑うもの圧痛の位置手がかり
鵞足炎関節の線より2〜5cm下階段を降りる・立ち上がる・走り始め。腫れはない
内側側副靭帯の損傷関節の線のすぐ上、内側ひねった・外からぶつけた覚えがある。膝を外へ倒すと痛い
内側半月板関節の線そのもの引っかかり・深くしゃがむと痛い・水がたまる
変形性膝関節症関節の線の内側全体朝のこわばり・正座ができない・年単位で進む

4つとも、押して痛い位置が数センチずつ違います。だから「膝の内側が痛い」だけでは決まらず、指で場所を特定することに意味があります。

2行目の内側側副靭帯は、はっきりしたきっかけがあるのが特徴です。スキー、サッカー、転倒、膝の外側からぶつけた——そうした出来事のあとから痛みが始まったなら、こちらを考えます。鵞足炎は「いつの間にか痛くなっていた」という始まり方をします。

もう1つ、見落とされやすいものがあります。股関節が原因の膝の痛みです。
股関節の問題が、膝の内側の痛みとして現れることがあります。神経の走り方によるもので、膝を押しても痛くないのに膝が痛いという形になります。
手がかりは足の爪が切りにくい・靴下がはきにくい・あぐらがかきにくい。心当たりがあれば、受診時に「股関節も見てください」と伝えてください。膝だけを調べても答えが出ません。

そして複数が同時に起きていることもあります。変形性膝関節症がある方が運動を始めて鵞足炎も加わる——これは珍しくありません。「1つに決めなければ」と考えず、痛む場所を全部伝えてください。

鵞足とは何か——3本の腱が集まる場所

名前になじみがないと思うので、簡単に説明します。

すねの骨(脛骨)の内側、膝の少し下に、3本の腱が集まって付着している場所があります。太ももの前から回り込んでくる腱、内ももから来る腱、太ももの裏から来る腱——この3本です。

広がって付着する形がガチョウの足に似ているため、「鵞足」と呼ばれます。そしてこの腱と骨のあいだには、摩擦を減らすための小さな袋(滑液包)があります。

鵞足炎は、この腱と袋に炎症が起きた状態です。

ここから分かることが3つあります。
①関節の中の問題ではない——だから関節の線より下が痛みます
②3本とも「膝を曲げる」「脚を内側に閉じる」働きを持つ——だからその動作で痛みます
③使いすぎで起きる——だから運動量が急に増えた時期と重なります
逆に言えば、安静にしていれば落ち着きますが、原因の使い方を変えないと再発します。

なぜ40〜50代で起きるのか

鵞足炎はスポーツ障害として知られていますが、この年代では、必ずしも激しい運動が原因とは限りません。

きっかけこの年代での典型
①運動を再開した/量を急に増やした健診をきっかけにランニングを始めた。距離を一気に伸ばした
②自転車のサドルが低い膝が深く曲がったままこぎ続けると、腱に負担がかかる
③体重が増えた同じ動作でも腱への負荷が上がる
④脚の形(O脚)・扁平足内側に負担が集中する。加齢で進むことがある
⑤階段や坂が増えた引っ越し・転職で通勤経路が変わった
⑥水泳の平泳ぎキックの動作が鵞足に効く

①がいちばん多いパターンです。そして「若いころと同じつもりで始めた」のが引き金になります。腱は筋肉より血流が乏しく、年齢とともに回復に時間がかかるようになります。筋力より先に腱が音を上げる——これがこの年代の特徴です。

②は見落とされます。自転車通勤やエアロバイクを始めた方で、サドルが低いと膝が深く曲がったまま何千回も回すことになります。目安はペダルがいちばん下に来たとき、膝がわずかに曲がる程度。心当たりがあれば、まずサドルを上げてください(エアロバイクの効果)。

糖尿病がある方は、鵞足炎が起きやすく、長引きやすいことが知られています。血糖が高い状態が続くと腱の組織が変化し、炎症が治まりにくくなるためです。
健診で血糖を指摘されている方で、膝の内側の痛みがなかなか引かない——この組み合わせなら、膝だけでなく血糖のほうも見直す価値があります(HbA1cを下げる方法)。
公園の遊歩道を、ゆっくりしたペースで歩いている50代の男性

運動は「やめる」のではなく「減らして戻す」

膝が痛いと、多くの方が運動を完全にやめます。ところが鵞足炎では、完全に止めるより「量を落として続ける」ほうが、結果的に早く戻れます。

理由は2つあります。腱は動かすことで血流が保たれること、そして完全に休むと筋力が落ち、再開したときに同じことが起きることです。

時期やること
最初の1〜2週間痛みの出る動作の量を半分に落とす。走るなら距離も回数も半分
同時に運動後にアイシング(15分程度)。ストレッチを毎日
痛みが引いてきたら毎週10%ずつ戻す。一気に元に戻さない
代わりにやってよいこと水中ウォーキング・平坦な道のウォーキング・上半身の筋トレ
避けること坂・階段・平泳ぎ・深くしゃがむ動作

3行目の「毎週10%ずつ」が要点です。痛みが消えた翌週に元の距離へ戻すと、ほぼ確実にぶり返します。腱の回復は、痛みが消えるタイミングより遅れます。

膝の痛み全般で「安静にすればよい」とは限らない理由は、膝が痛いときに読む記事で扱っています。ここでは鵞足炎に特有の、戻し方の具体だけを書きました。

ストレッチは、内ももと裏ももに効かせる

鵞足に集まる3本の腱は、いずれも内ももか太ももの裏から来ています。だからそこが硬いと、付着部が引っ張られ続けます。

伸ばすべきはこの2つです。

  • 太ももの裏(ハムストリング):椅子に浅く座り、片脚をまっすぐ前へ伸ばしてかかとを床に。背すじを伸ばしたまま、股関節から上体を前に倒す。30秒×左右2回
  • 内もも(内転筋):床に座って足の裏を合わせ、膝を外に開く。背中を丸めずに上体を前へ。30秒×2回
  • ふくらはぎ:壁に手をつき、後ろ脚のかかとを床につけたまま体重を前へ。30秒×左右2回

コツは2つあります。

①痛いところまで伸ばさないこと。「気持ちよく突っ張る」程度で十分です。強く伸ばすと、炎症のある付着部をさらに引っ張ります。

②入浴後にやること。組織が温まっているときのほうが伸びやすく、安全です。

ストレッチは「痛みを取る」ためではなく「再発を防ぐ」ためのものです。やった直後に痛みが消えるわけではありません。効いてくるのは数週間後で、そこで初めて「引っ張られ続ける状態」から抜けます。
だから痛みが引いたあとも続けてください。ここでやめると、また同じ場所に戻ります。

今日からできる、負担を減らす6つ

薬やストレッチと並行して、日常の動作を少し変えるだけで負担が減ります。効く順に並べます。

やり方なぜ効くか
①階段は「降り方」を変える手すりを使い、一段ずつ、痛くない脚から降りる降りるときの負荷は上るときより大きい
②運動後にアイシング保冷剤をタオルで包んで15分。痛む一点に当てる炎症を抑える
③自転車のサドルを上げるペダルが下のとき、膝がわずかに曲がる高さに深い屈曲の繰り返しが腱を引っ張る
④靴を見直すすり減った靴を替える。クッションのあるものに着地の衝撃が膝へ届く
⑤体重を数kg落とす体重1kgの減で、歩行時の膝への負荷は数kg分減る負荷そのものが下がる
⑥床に座らないあぐら・正座・横座りを避け、椅子に深い屈曲と内側へのねじれを減らす

①は今日から変えられて、効果がすぐ出ます。階段を降りるとき、膝には体重の数倍の力がかかります。鵞足炎の痛みが「降りるとき」に強いのはこのためです。手すりを使って体重を分散するだけで、その場で違いが分かります。

③はこの年代で見落とされやすい原因です。エアロバイクや自転車通勤を始めた方で、サドルが低いまま何千回もペダルを回している——これが引き金になっていることがあります。上げるだけで痛みが軽くなる方がいます。

温めるか冷やすかは、時期で使い分けます。
運動した直後や、痛みが強い時期は冷やす。炎症が起きている段階です。
痛みが落ち着いてきて、動かし始める時期は温める。血流を上げて回復を助けます。
迷ったら「押すと強く痛む=冷やす」「押しても軽い痛み=温める」で判断してください。入浴は、急性期を過ぎていれば問題ありません。

注射をすすめられたとき

薬とストレッチで変わらない場合、痛む部位への注射が提案されることがあります。判断できるよう、事実を整理します。

内容
何をするか炎症を抑える薬を、痛む一点に少量入れる
効き方数日で楽になることが多い
回数繰り返しすぎない。間隔をあけるのが原則
注意点腱そのものへ繰り返し入れると、組織が弱くなることがある
その後痛みが取れた直後に運動量を戻さない。ここが最大の落とし穴

最終行が重要です。注射で痛みが取れると、治ったと感じて元の運動量に戻す方がいます。ところが腱の状態は、痛みが消えた時点ではまだ回復していません。痛みという歯止めがなくなったぶん、かえって負担をかけてしまいます。

注射は「回復のための時間を稼ぐ手段」であって、ゴールではありません。痛みが取れたあとこそ、量を落としたままストレッチを続けてください。

湿布と塗り薬は、どう使い分けるか

ドラッグストアで迷いやすい部分なので、整理します。鵞足は皮膚のすぐ下にある浅い部位なので、外用薬が届きやすいという利点があります。

向いている場面注意
冷感の湿布運動直後・痛みが強い時期冷やす感覚があるだけで、実際の冷却力は保冷剤に及ばない
温感の湿布痛みが落ち着き、動かし始める時期炎症が強いときに使うと悪化することがある
塗り薬・ゲルピンポイントに塗り込める。鵞足炎に向く1日の使用回数を守る
テープ剤(薄いタイプ)日中つけたまま動く場合かぶれることがある。同じ場所に貼り続けない
飲み薬痛みで眠れない・歩けないとき胃と腎臓に負担。長期連用は避ける

3行目が、この症状では実用的です。鵞足炎の痛みは500円玉ほどの狭い範囲に集中しているので、その一点に塗り込めるゲルタイプのほうが、広い湿布より理にかなっています。

1行目と2行目の使い分けも押さえてください。「冷感・温感」は貼ったときの感覚であって、実際の温度ではありません。それでも、炎症が強い時期に温感タイプを使うと痛みが増すことがあるので、時期で選んでください。

湿布と飲み薬で気をつけたいこと。
湿布も飲み薬も、多くは同じ系統の消炎鎮痛成分です。両方を長期間、たくさん使うと、成分の総量が増えます。
とくに腎臓の機能を指摘されている方、血圧の薬を飲んでいる方は注意が必要です。「湿布だから体に影響しない」ということはありません(クレアチニンが高いと言われたら)。
1〜2週間使っても変わらないなら、薬を増やすのではなく、量の落とし方とストレッチのほうを見直してください。

再発を防ぐ筋トレ——内ももと、お尻

ストレッチが「引っ張られる状態を減らす」対処だとすれば、筋トレは「腱にかかる力そのものを減らす」対処です。順番としては、痛みが落ち着いてから始めます。

鍛えるべきは2か所です。

部位やり方なぜここか
お尻の横(中殿筋)横向きに寝て、上の脚をゆっくり真上へ上げ下げ。15回×2セットここが弱いと着地で膝が内へ入り、内側に負担が集中する
内もも(内転筋)あお向けで膝を立て、膝の間にクッションを挟んで5秒締める。10回×2セット鵞足に付く腱の1本が内ももから来ている
太もも前(大腿四頭筋)座って片脚を伸ばし、5秒キープ。10回×2セット膝全体の安定に働く

1行目がこの症状では要点です。お尻の横の筋肉が弱いと、片脚立ちになったときに骨盤が傾き、膝が内側へ入ります。その姿勢では膝の内側に力が集中し続けます。走っているときは、片脚立ちの連続です。

自分で確かめる方法があります。鏡の前で片脚立ちを10秒してみてください。骨盤が反対側へ落ちる、膝が内へ入る——どちらかが起きるなら、お尻の横が弱い可能性があります。

始める時期と強さの目安。
・痛みが日常生活で気にならなくなってから始めます。痛みのある時期に始めると、かえって刺激になります
・やっている最中に鵞足の部分が痛むなら、その種目は中止してください
・週2〜3回で十分です。毎日やる必要はありません
効果が出るまでには数週間から2か月かかります。痛みを取るためではなく、次に同じことを起こさないための投資だと考えてください(自宅でできる自重トレーニング)。

整形外科では何をするか

整形外科です。膝の内側の痛みは、押す場所と動かし方の診察で、その日のうちに方向が決まることがほとんどです。

内容
診察圧痛の位置を確かめる。関節の線より下かどうかが決め手
レントゲン鵞足炎そのものは写らない。変形性膝関節症を外すために撮る
エコー腱や滑液包の腫れをその場で見られる。撮れる施設なら有用
MRI半月板が疑わしいときに。鵞足炎だけなら通常は不要
治療消炎鎮痛薬(飲み薬・貼り薬)、ストレッチ指導、効かないときは局所への注射
費用3割負担で初診+レントゲンで2,000〜3,500円程度

2行目は知っておくと納得できます。レントゲンには骨しか写らないので、鵞足炎そのものは「写らない」のが正常です。「異常なしと言われた」のは見落としではなく、骨と関節に問題がないことが分かったということです。

そのうえで、押した場所が関節の線より下だったなら、そこで診断がつきます。画像より診察が主役の疾患です。

受診時に伝えると診察が速くなる4つ:
①指で押して、いちばん痛い一点はどこか(その場で示せると最速です)/②いつから、何を始めた/増やした時期と重なるか/③どの動作で痛むか(階段を降りる・立ち上がる・走り始め)/④引っかかりや、膝が伸びない感じはあるか
①は自分にしか分かりません。受診前に押して場所を確かめておくと、それだけで話が早くなります。

どのくらいで戻るのか

見通しを持てないのがいちばんつらいので、目安を書きます。

状況目安
早期に運動量を落とした場合2〜4週間で日常生活の痛みは軽くなることが多い
痛みを我慢して続けた場合数か月に及ぶことがある
運動に完全復帰するまで1〜3か月。10%ずつ戻す前提で
再発しやすさ原因(サドル・距離・脚の形)を変えないと繰り返す

1行目と2行目の差が、この記事でお伝えしたい部分です。鵞足炎は早く量を落とせば短く済み、我慢して続けると長引きます。「走れないほどではないから」と続けた結果、数か月走れなくなる——これがいちばん避けたい経過です。

そして4行目。痛みが取れても、サドルの高さも走る距離も脚の形もそのままなら、また同じ場所に戻ります。治すことと、再発させないことは別の作業だと考えてください。

再発させないための、運動の始め方

痛みが引いたあとが本番です。この年代で運動を再開・強化するときの決まりごとをまとめます。

目安理由
①増やすのは週10%まで先週30分なら、今週は33分腱の適応は筋肉より遅い
②3週増やしたら1週落とす4週目は前週の7割に回復の時間を計画に入れる
③走る前に温める5〜10分の早歩きから入るいきなり走り出さない
④走ったあとにストレッチ内もも・裏もも・ふくらはぎ引っ張られ続ける状態を防ぐ
⑤連日走らない週3〜4回、間に休みを入れる腱の回復には時間がかかる
⑥硬い路面を避けるアスファルトより土や公園を着地の衝撃が減る

①と②は、守ると本当に違います。この年代でスポーツ障害が起きるのは、ほぼ「増やし方が速すぎた」ときです。やる気があるほど一気に増やしてしまい、筋肉はついてくるのに腱が追いつかない——鵞足炎はその代表例です。

目安として、腱が新しい負荷に適応するには数週間かかります。「先週できたから今週はもっと」ではなく、「先週の1割増しまで」と決めてください。物足りなく感じる程度が、ちょうどいいペースです。

再発のサインを1つ覚えておいてください。「運動したあとに痛みが増えているか」です。
運動中に少し違和感がある程度なら続けて構いません。ただし、終わったあとや翌朝に痛みが強くなっているなら、それは量が多すぎたということです。
この判断基準があれば、痛みが本格化する前に量を戻せます。鵞足炎で数か月を失う方は、ここを見逃して続けています。

そして脚の形や着地の癖が背景にある場合は、それだけでは足りません。O脚や扁平足があると、内側に負担が集中し続けます。繰り返すなら、インソールや、足の形に合った靴を検討する価値があります。整形外科や、足を計測してくれるスポーツ用品店で相談できます。

屋外で自転車のセッティングを確かめている40代後半の男性

よくある質問(FAQ)

Q レントゲンで「異常なし」と言われましたが、痛みは続いています。

A.矛盾していません。レントゲンには骨しか写らないからです。鵞足炎は腱と滑液包という軟らかい組織の炎症なので、写らないのが正常です。
「異常なし」は診断がつかなかったという意味ではなく、骨と関節の変形が否定できたということです。むしろ、そこが分かったうえで押した場所が関節の線より2〜5cm下だったなら、それで診断がつきます。
この病気は画像より診察が主役です。もし圧痛の位置を確かめてもらっていないなら、次の受診で「ここが痛みます」と指で示してください。それだけで話が進むことがあります。
エコーが撮れる施設なら、腱や滑液包の腫れをその場で確認できます。

Q 走るのをやめたほうがよいですか?

A.完全にやめるより、半分に落として続けるほうが早く戻れます。
理由は2つ。腱は動かすことで血流が保たれること、そして完全に休むと筋力が落ち、再開時に同じことが起きることです。
具体的には最初の1〜2週間は距離も回数も半分に。痛みが引いてきたら毎週10%ずつ戻す。痛みが消えた翌週に元の距離へ戻すと、ほぼ確実にぶり返します。腱の回復は、痛みが消えるタイミングより遅れます。
ただし走るたびに痛みが強くなる、翌日まで痛みが残るなら、その週はいったん止めてください。「走ったあとに痛みが増えていないか」が続けてよいかの判断基準です。
その間は水中ウォーキングや平坦な道のウォーキングで代替できます(40〜50代のランニング)。

Q 半月板や、すり減りとの違いをもう一度教えてください。

A.いちばん確実なのは、押して痛い場所です。関節の線そのものが痛いなら半月板や軟骨、その2〜5cm下なら鵞足炎です。
そのうえで、次の3点も手がかりになります。
①引っかかり——膝が途中で動かなくなる、カクッとする。鵞足炎では起こりません
②腫れ・水がたまる——鵞足炎ではほとんどありません
③朝のこわばり・正座ができない——変形性膝関節症で目立ちます
ただし、2つが同時に起きていることもあります。もともと膝に変形がある方が運動を始めて、鵞足炎も加わる——これは珍しくありません。
迷ったら整形外科で押してもらってください。数分で分かれます(膝が痛いときに読む記事)。

Q サポーターは効きますか?

A.痛みを一時的にやわらげる補助としては役に立ちますが、原因は変わりません。
期待できるのは膝周りの安定感が増して不安が減ること、保温されることです。仕事で歩かなければならない日などには使う価値があります。
ただし注意点が2つ。①きつく締めすぎない。鵞足は膝の内側の浅い場所にあるので、強い圧迫がかえって刺激になります。②つけっぱなしにしない。常時つけていると、膝周りの筋力が落ちます。
優先順位としては、サポーターより先にやることがあります——運動量を半分に落とす、自転車のサドルを上げる、内ももと裏もものストレッチ。これらは原因に届きますが、サポーターは届きません。

Q 両膝の内側が痛みます。鵞足炎が両側に出ることはありますか?

A.あります。左右の脚に同じ負担がかかっていれば、両側に起こります。ランニング・自転車・階段は、どちらの脚も同じように使うからです。
ただし両側の場合は、背景に共通の要因があることが多いので、そちらを見てください。
・脚の形(O脚)——内側に負担が集中します
・体重の増加——同じ動作でも負荷が上がります
・扁平足——着地のたびに膝が内へ入りやすくなります
・血糖——糖尿病があると腱の炎症が長引きやすいことが知られています
片側なら「使い方」、両側なら「体の条件」を疑う——この分け方が実務的です。両側で長引いているなら、膝だけでなく体重と血糖も一度確認する価値があります。

Q 痛みは軽いのですが、放っておくとどうなりますか?

A.命に関わるものではありませんが、放置には2つの不利があります。
①長引きます。早く量を落とせば2〜4週間で軽くなるものが、我慢して続けると数か月に及びます。腱は血流が乏しく、いったんこじれると回復に時間がかかります。
②かばうことで、別の場所を痛めます。膝の内側を避けて歩くと、体重のかかり方が変わり、反対の膝・股関節・腰に負担が回ります。「膝をかばっていたら腰が痛くなった」というのは実際によくあります。
そして、この年代でとくに不利なのが「運動をやめてしまうこと」です。痛みで運動を完全に中断すると、筋力も体重管理も後退します。
だから「軽いうちに、量を落として続ける」がいちばん得をする選択になります。軽い段階で対処するほど、失うものが少なくて済みます。

まとめ:関節の線より下か、線そのものか

膝の内側が痛むと、半月板やすり減りを心配します。けれど40〜50代でこの場所が痛むとき、もっと表層の腱が炎症を起こしていることがあります。

  • 押して痛い場所が関節の線より2〜5cm下=鵞足炎:範囲は500円玉ほどで、外すと痛くない
  • 関節の線そのもの=半月板や軟骨:引っかかり・腫れ・水がたまるを伴うことがある
  • レントゲンに写らないのが正常:腱と滑液包の炎症なので骨には写らない。「異常なし」は見落としではない
  • やめるのではなく半分に落とす:完全に休むと筋力が落ち、再開時に繰り返す。戻すのは毎週10%ずつ
  • 原因を変えないと再発する:自転車のサドルの高さ、走る距離の増やし方、内ももと裏もものストレッチ

この症状でいちばん避けたいのは、「走れないほどではないから」と我慢して続けることです。早く量を落とせば2〜4週間で軽くなるものが、我慢して続けると数か月に及びます。痛みの強さではなく、走ったあとに痛みが増えていないかで判断してください。

そして、痛みが取れてからが本番です。サドルの高さも、走る距離の増やし方も、ストレッチの習慣も変えなければ、また同じ場所に戻ります。治すことと、再発させないことは別の作業です。